「菱形」の面積を求める時間になりました。と言ってもこれだけでは物足りないと思い,「たこ形」も求めることを要求しました。たこ形は小学校で習う形ではありませんが,面積を求めることを考えた場合,菱形と共通点があるので同時に扱うことにしました。ちなみにたこ形の定義は「隣り合う辺が等しい四角形」であり,菱形との共通点は「対角線が直交する。」ことです。
 いきなり三つの形を提示して,「とにかくこの三つの図形の面積を求めよう。」とやりました。ここまでさんざん面積を求めることをやってきたのでできると思ったのです。しかしそう簡単に「自力解決」できるわけではありませんでした。
 与えた図形が「ドット図」の中に描かれた図形で,マス目が描かれていないことが影響したのでしょうか。これまでマス目の線に沿って切ることばかりやってきたのも問題だったかもしれません。10分ほどでいくつかの解は求められましたが,三つも形を与えたのは欲張りだったことを反省しました。
イメージ 1 まず一人の児童を意図的に指名しました。その児童は三つの形を全て「横半分」に区切り,合同な二つの三角形に分けて考えています。式も全く同じになります。このように三つの図形を関連づけてみることができる方法を最初に見せておきたかったからこれを選びました。
イメージ 2 次は等積変形です。菱形で説明してもらった後,「この方法ってたこ形でもできるかなあ。」と聞いてみました。しばらく考えて「できる。」と答えてくれました。このあたりは「念頭操作」になってしまいますが,先に三つの形に共通した解決方法をおさえてあったのでイメージがはかれたようです。

イメージ 3 次は菱形を斜めにずらして置き,平行四辺形と考える方法です。これは公式化には結びつきませんが,これまでの学習を生かそうとするすばらしい考えです。図形感覚も生きていると言えるでしょう。たこ形には使えませんが賞賛しておきます。
イメージ 4 最後は「倍積変形」です。教科書などはこの方法で一般化しています。三角形や台形の時に出てきた方法ですのでこれもすんなり理解できます。

イメージ 5 こうして公式を一般化しました。教科書と違うのは対角線にAとBの区別をつけているところです。数学では「同じ記号は同じ数を表す」という原則があります。これは公式の言葉に当てはめても同じことです。正方形の公式は「縦×横」でもいいはずですが「一辺」と置き換えるのは同じ言葉は同じ数字を表していて,一辺が決まれば面積が決まることを意識させるためです。それなのに「対角線」と同じ言葉でまとめてしまうのはおかしいと思うからです。
 こうして公式ができた後,「なぜ普通の長方形や台形にはこの公式が使えないのかな。」と聞いてみました。かなり難しい発問だったようで,短い残り時間では見つけられませんでしたが,一人の児童の
「今日は,真横と真縦にしか切っていないからじゃないかな。」と言い感想から,何となくその仕組み(対角線が直交する)に気づいている者もいたようです。