先週の木曜日に,某市の算数主任会の研究授業に呼ばれて参加してきました。授業は3年生の「かさしらべ」で,ml(ミリリットル)の導入場面でした。「10mlます」というのは初めてみたのですが,そのような教具も用意され,やや活動が足りなかった面もありましたが,まずまずの授業だと思いました。
 後の研究会で話題になったことの一つに,「なぜ生活の中で使わないデシリットルを教えなければいけないのか。」ということがありました。
 私の知る範囲でデシリットルを使うのは,血糖値などを200mg/dlとしたり,豆や穀物の小売りの取引の時(伝統的な取引単位である~合に近いからでしょうか)に使う程度だと思います。そんな特殊なものがなぜ指導要領に入っているのでしょう。
 先日うちの学校の特別支援担当の先生から次のようなことを言われました。
「先生,1cmが10mmなことが分からないんですがどうしたらいいんでしょうか。」
これに対する有効な答えはなかなか見つからないのですが,考えてみると1mmを10個並べて1cmを作る,といった活動はやっていないだろうと思われます。やったこともないことを「こういう風になってるんだよ。」と抽象的に教え,覚えなさい,と言っているのですから,分かる子にはすんなり入ってもそうでない子にはさっぱり分からないでしょう。その他の単位の関係についても全く同じ事が言えます。しかし唯一の例外が,リットルとデシリットルの関係です。この2つは,操作がしやすい大きさである上,相互関係が最も単純な「10」で繋がっています。操作の意味や単位換算の仕組みを実感を持ってできるのはこれだけなのです。
 つまり,デシリットルは測定の原理や単位の関係を知るためにある,といっても過言ではないでしょう。逆に言えば,デシリットルを学んでいるのに操作をさせなければ何の意味もない,ということになります。気をつけたいものです。
 教科書を見ていて思ったのは,「ミリリットルの学習にデシリットルが必要なのかなあ。」ということでした。指導要領には,1l = 1000ml に触れる程度とする,とあります。なのに教科書ではデシリットルとミリリットルの関係まで扱っています。おそらくリットルとミリリットルの関係を理解させるための手助けとして登場させているのだと思うのですが,逆効果になっているように感じました。
 すぱっと切ってリットルとミリリットルだけを扱うか,cl (センチリットル)まで扱って全てを「10」で繋いでやるかでしょう。私であれば後者をやりたいところです。
 一般的に,多くのことを教えると難しくなる,と言われていますが必ずしもそうではないと思います。逆にあまりにも少ししか教えないから分からない,ということの方が多いと感じています。