《良い新譜に出逢いたい》。

若い頃からずっと応援してるミュージシャンは今でも聴いていますが、年々と皆さん、新譜を出すスパンが長くなるし、あるいは出さなくなったり。そうなると、僕が好きになれる若い才能を見つけて、新譜をドキドキと待つあの興奮をもう一度、と思うのです。

正直、これは買いたいぞ、と思わせてくれる若者との出会いは近年稀なので、今さらの新人発掘は億劫なのですが、だからって、昔の歌は良かった今の音楽は云々、と聴かずにボヤいてるより聴いてみるが健全だと思う。

《この若者が新譜を出したら絶対に買わねば!》という僕のお気に入りは、ちょっと前ならライアン・アダムス、ブレンダン・ベンソン、ダミアン・ライスが3本柱でした。三人とも大人になったせいか寡作になり(ブレンダンとダミアンはずっと寡作か)、今ですとベタですが断然ビリー・アイリッシュ、そしてザ・レモン・ツィッグスが楽しみな才能です。

その二人が今年、あまりに良すぎる新譜を出してくれたので、ここしばらくそればかり聴いています。
『ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト』/ビリー・アイリッシュ

一曲目からもう美しい。ヤバい。気持ちいい。美メロディがこれでもかと次々に炸裂して、これまで出した三枚の中で僕は今作が一番好きかも。こんなにもとっつきやすいビリー・アイリッシュは大丈夫なのか。いいんでしょうか。

1stの頃って一見キワモノっぽかったですよね。PVでの動きがシノハラとかフワちゃんみたいで。話題になった「バッド・ガイ」では無機質な軽快さとドロっとした得体の知れなさがあって(緑の髪の時期)、2ndではポップさとヘヴィな情念オーラが大迫力で(金髪ビリーのジャケット)、今作3rdでは全て悟ってスコーンとド直球に抜けた感じ(髪は青かナチュラル?)。


↑「Lunch」まるでディランみたい。韻を踏みまくり。

2曲動画を貼りましたが、他のアルバム曲がまたメチャ良いです。

なんでしょう、すごく僕の勝手な思い込みですが、ポール・ウェラーやザ・フーを聴いてる時の興奮に近いものを、ビリーの歌を聴くと感じるのです。モッズではないけどモッズ精神?。もしくは3分間のポップスの美学、とでもいうのでしょうか。

今作の分かりやすさは、聴けば全てのポップスファンの耳を無双することでしょう。でも歌の底に流れるビリーの暗くて静かな業は一貫してある。ビリー初心者の入口として聴くのにもバッチリな作品だと思います。僕はこれを聴いたら2ndも聴き直したくなった。


ビリー・アイリッシュは今後も新譜が出たら即チェックしてしまいそうです。

あまりにも若くてマニアックな兄弟バンド、ザ・レモン・ツイッグスの新譜も相変わらず素敵です(ジャケットの芸のなさも相変わらず)。
『ア・ドリーム・イズ・オール・ウィ・ノウ』/ザ・レモン・ツイッグス

これは通算五枚目か。二人ともまだ26歳と24歳でしょ(デビュー時は19歳と17歳!)。それでやってる音楽がコレだから、どんだけ老成した兄弟なのかって思う。

今作もそうですが、ザ・レモン・ツイッグスを聴くと、これが2024年の新譜なのか?!と驚き、笑っちゃいます。ああブライアン・ウィルソン好きだよね、トッド・ラングレン好きだよね、ビートルズもキンクスも好きだよねって、分かる。聴いていて嬉しくなってニヤニヤしちゃう。要は、《普通じゃないポップス》、変拍子とか転調とかの変態ポップスですよ。

↑楽しいPV。そしてブライアンのギターの高さと膝の曲げ方!世界一有名なバンドのあの人のパロディしてます。

彼らの美点はこの強力なメロディメイクの才能と音楽センスで、それを良しとする同一価値観を兄弟で共有出来ているということ。弱点を言えば、音楽が多彩過ぎてやや焦点が絞れてない印象を与えることか。なんか未だにアマチュアっぽいっていうか、弱いな、って。なんでか分かんないけど思う。

兄ブライアンも弟マイケルも、歌はぜんぜん悪くないのだけど、恥ずかしながら僕は聴いてて兄弟の声の区別がつかない(1stアルバムでは一曲ごと交互にメインヴォーカルを取ってるのに気づかなかった)。例えるならリアム・ギャラガーの歌声ほどの強烈な記名性は二人にはないから、パッと聴いて印象が弱く思えるのかも。

しかし、二十代の若手バンドがこんなに堂々と、60年代70年代の匂いをプンプンさせた音楽をやってくれてる。まぁ、レニー・クラヴィッツやオアシスが出て来た時もそうだったけど、この姿勢は前向きなのか後ろ向きなのか。前向きに決まってます。《俺たちこういうの大好きなんだ!》って喜びが溢れてる。それはネガティブなレイドバックではなくて温故知新と呼ぶ。


兄弟バンドというと、パッと浮かぶのがキンクスとかオアシスとか、ビーチ・ボーイズやスパークスも。ザ・レモン・ツイッグスのやってることはスパークスの変拍子にも通じますね。ザ・レモン・ツイッグスの新譜は今後も出たら即チェックです。


忘れてましたが、邦楽ですと、今年の初めに出た小山田壮平のセカンドソロアルバムが最高に素敵で、未だにメロメロです。
『時をかけるメロディー』/小山田壮平

この前作品の1stソロ『TRAVELING LIFE』の時は、とても楽しめたけど僕は正直《andymoriのほうが好きだな》と思った。初ソロへの期待が大きかったせいもあるけど、どの曲も、ソロはバンドと違う自分を見せるぞ、って意気込みが(本当に勝手な思い込みですが)トゥーマッチに聴こえてしまった。でも、2ndとなる今作は大好き。僕の聴きたい小山田壮平がぜんぶ此処にある。

小山田壮平のソングライティングの特徴って、完成度と未完成度の絶妙な匙加減だと思ってるのですけど、このアルバム『時をかけるメロディー』って、小山田壮平の良いところばかりで作ったかの名曲揃い。これ作っちゃったら、この後は何をやるの?ってくらい、結構、究極の作品になっちゃったと思うのです。

この歌声の力よ。

バンドもソロも含めて、小山田壮平のアルバムをたった一枚を選ぶとしたら、僕はandymoriの1stや『革命』と散々迷いつつ、この『時をかけるメロディー』を最終的に選ぶかもしれません。小山田壮平でこれ以上の作品って今後も出ないんじゃないかって思うほどに《良すぎる》。

今後大変ですよ。おそらくはまた1stの時みたいな歌作りでやってくのかしら。いや、こんなの通過点ですよ、ってサラッと超えて来たりして。小山田壮平の新譜は今後も出たら即チェックすることでしょう。気になりますもの。


昨日、土曜日の朝は夜勤を終えたその足で、娘の高校の文化祭に行ってきました。眠気が吹っ飛ぶほどの若い熱気に当てられて、疲れつつも楽しかったです。娘も生徒有志のステージでピアノ弾き語りで歌ってました。有志は今年はダンスチームがやたら多かったです。みんな格好良かった。

今週が文化祭、という学校はわりと多かったみたいで、あちこちで《文化祭に行って来ました》のSNS報告を読みました。文化祭の時期って重なるのでしょうかね。
↑高校の図書委員の作ったブックカバーを頂きました。印刷されたオススメ本の紹介が微笑ましい。文化祭から帰宅してからは倒れるように寝ました。日曜日の今もまだ時差ボケでボーっとしてます。目が覚めても動きたくなくて転がっています。

それでも、これだけはコンビニで発券してきた↓
↑今月23日にZepp名古屋にて元春に会ってきます。やった。

この新解釈「Young Bloods」は、数年前にHKBと録音したアルバム『月と専制君主』に収録されたバージョンに通じるアレンジだと思いました。英語フレーズを日本語に置き換えるのも良いけど、そこは僕はオリジナルに思い入れがあるので、変えない方が好きだな。


そして今度の金曜日、これまた久しぶりに大好きな山田稔明さんのライブに行きます。山田稔明さんも新譜を出したら絶対に買うリストの一人。楽しみです。


マシス