前の日記の続きで、佐野元春の今、何処ツアー静岡公演の感想、ここから後半です。ツアー中は友人限定の公開とさせていただきます。ネタバレは見たくないって方は以下、ご注意ください。
(佐野元春の2023年のツアーが終了したので、限定公開にしていた日記のブロックを外します)


「純恋」で盛り上がった客席をゆっくり見渡す元春。フォークギター(おそらくマーチン)を肩からかけて、ステージ暗転。

モノクロの風景に鳥が飛び交う映像が映し出され、アッキーのアコギの音が優しくイントロを奏で、曲は「詩人の恋」。この夜の「詩人の恋」の元春のヴォーカルの素晴らしかったこと。「純恋」で熱唱した後なのに、こんな柔らかく優しい歌い方をするなんて反則です。

《残酷な運命/二人を分かつその日まで/私たちはずっと共にいる》

スクリーンに映されていく歌詞を噛みしめるように、観客は聴き入っていました。いやぁ染みた染みた。

荘厳なバラッドの余韻をかき消すようなベースの激しい音。「エデンの海」。《WHITE LIGHT》のコーラスと一緒に観客のこぶしが上がるか、と思ったけど、そうでもなかった静岡。前の曲からいきなり激しい曲に変わって戸惑ってたのかしら。アウトロでの元春渾身の《イェーイェー!》のシャウトには大いに歓声が上がりました。

元春、キーボードの前に座り、ゆっくりカウントを唱え「君の宙」。これまた激しくシャウトした直後とも思えない良い声。《けして忘れーなーいでー》の美しいメロディの高音も見事に歌い上げてくれてウットリ。

続けざま、シンセのループ音がサイレンの如く鳴り響き、曲は「水のように」。力強い歌と演奏に手拍子で盛り上がりました。「君の宙」「水のように」は歌詞の言い回し《どんな〇〇があっても》が共通していて、アルバムの並び同様、二曲続けて演奏されたことに意味があるのでしょう。

前の曲から間髪入れず、ご機嫌なビートのイントロが手拍子を煽ります。「大人のくせに」。この曲を演奏するコヨーテが一番楽しそうに見えました。言ってしまえば、オチのない独り言のような、実に他愛のないこの歌。なのに、なんでこんなにご機嫌な演奏が生まれてしまうのか。まったくバンドって不思議。音楽って不思議。

元春、もっとこの歌に格好良いフレーズを足してブラッシュアップすべきですよ。こんなに盛り上がるのだから。

そしてアルバムのクロージングナンバーでもある「明日の誓い」。間奏とアウトロのシンセブラスが良い音で高らかに鳴って、聴いていてとても気持ち良かった。

この歌、とても良い歌だとは思うのですけど、歌い出しの二行の歌詞、内容が矛盾してるのがどうも、繰り返し聴くほどにだんだん気になってきた。元春は作っていて絶対に気づいてたと思う。《明日ここを〜》を、例えば《二人ここを〜》に置き換えることだって、元春なら造作なく出来たでしょうに。けど、あえて直さなかったのは大物過ぎる?

本編ラストは「優しい闇」。元春が《どんな時も君を想っていた》と歌う時、手を観客にかざすアクション。それに応えるように客席からも手が上がって、それは美しい光景でした。僕はこの歌は前半部分《優しい闇が訪れる》からのAメロのフレーズが大好き。フックの《何もかも変わってしまった》から、ガラッと歌の内容が変わって、まるで違う歌が始まったような気になってしまうので、いつも不思議な歌だと思います。

立ちっぱなし、歌いっぱなしノンストップの本編90分。大盛り上がりでここで終了。


そして、およそ5分後にアンコール。

メンバーが手を上げて再登場。そしてスーツの上着を脱いだ白シャツの元春が登場。


MC《僕も、、ずいぶん長くキャリアを重ねてきた、80年代はハートランド、90年代はホーボーキング・バンド、そして00年代はコヨーテバンドと、素晴らしい仲間たちと一緒にやってこれたことを、とても誇りに思っています、、そして今夜、この会場に、とてもスペシャルなゲストが来ています(大歓声)》


ゲスト?!誰だ?!と思った瞬間、


元春《彼は、この街で生まれ、この街で育ったんだ!》


!!!!!。鳥肌が立った。過去の元春の静岡のコンサートで、このメンバー紹介を僕らは何度聞いたことでしょう!


元春《紹介します。スィートベイビー!阿部ちゃん!!》


うおおおおお。阿部ちゃんだ。静岡市民文化会館のステージに元春と阿部吉剛が一緒に立ってる。キーボードのシュンちゃんの隣に向かう阿部ちゃんを、元春は両手で指差し、観客を煽ります。拍手、拍手、拍手。阿部ちゃんコール。


《もし詞を知ってたら、一緒に歌ってください》


小松シゲルがあのドラムのフィルを叩き、エコーたっぷりに阿部ちゃんのピアノのイントロが鳴り、出た。ついに聴けた「サムデイ」。このツアーで初めて「サムデイ」が投下され、客席は歓喜の大爆発。ピアノが阿部ちゃんのサムデイですよ。破壊力はそれは桁違いですって。

《若すぎて、なんだかわからなかったことが〜》と歌ってる元春が、声を詰まらせ、横を向いてしまいました。ああ、泣いてる。かつての仲間と一緒に演奏して、感極まってしまった元春。観ているこっちまで胸が詰まった瞬間です。すかさず観客は一緒に歌ってフォロー。大合唱になりました。

目尻を何度も拭って、元春は歌いました。阿部ちゃんのピアノもところどころミスタッチがあったけど、この時の演奏はもう、上手い下手で語るものじゃないです。おそらくはハートランド解散以来、初めて、元春と阿部ちゃんが同じステージに立って演奏した「サムデイ」。ファンからしてみればご褒美でしかないです。この場この瞬間に居合わすことができてラッキーでした。


阿部ちゃんをステージから送り出し、ストラトキャスターをかけた元春。涙を払うように《ロックンロール!》と叫び、ギターを掻き鳴らせば、ラスト「アンジェリーナ」。言うことなし。盛り上がらないわけがない。飛んで跳ねて歌って拳を突き上げて、大団円です。


最後のメンバー紹介で、もう一度阿部ちゃん登場。でもすぐに引っ込んでしまいました。元春とハグすれば良かったのに、その控えめな姿も好感。

再アンコールを求める拍手が鳴り止まない中、客電が点いて、ここで終演。終わっちゃったー。


会場の外で、だあこえさんと、だあこえさんの先輩とそのお姉さんと歓談できました。


《良かった!》

《まさかのサプライズ!》

《ウルッときたねー》

《「サムデイ」であんなに泣いたことない!》

《「詩人の恋」も良かったよー》


などと、コンサートの感想で余韻に浸りました。やー楽しかった。


でも、サプライズがあったから、だけでなく、本当に素晴らしいコンサートでした。会場の音も良かったし、元春の声も出てました。元春は元気でスゴイです。負けてられませんね。


2023年7月8日(土)静岡市民文化会館中ホール
00 opening
01 さよならメランコリア
02 銀の月
03 クロエ
04 植民地の夜
05 斜陽
06 冬の雑踏
07 ENTERTAINMENT!
08 新天地
09 愛が分母
10 ポーラスタア
11 La Vita a Bella
12 純恋
13 詩人の恋
14 エデンの海
15 君の宙
16 水のように
17 大人のくせに
18 明日への誓い
19 優しい闇

encore

20 サムデイ(ゲスト阿部吉剛)
21 アンジェリーナ



長々と読んでいただきありがとうございました。



マシス


↑名古屋公演の感想です。