静岡で被害が甚大な今回の台風、僕もとんでもない目に合いました。不幸自慢はお目障りかと存じますが、稀な経験なので備忘録として残しておきたいと思い、公の場を失礼します。

ざっくり言えば、台風の日の深夜、準夜勤の帰り道に運転してた僕の車は、冠水に突っ込んで、そのまま車ごと水に流されました。あっ、と思った時には前輪が浮いてしまって、為す術もありませんでした。


いくら9月だからって、オフコースの「I Love You」がこのタイミングで流れたらギャグです(とても笑えない)。

流されてー流されてー、幸いにも数メートル先(後で温室の敷地と知りました)に乗り上げ、流されるのは停まりました。でも、ドアの外は見渡す一面、泥水の沼。遠くに街灯は見えども、周囲のどこに何があるか水で視界がきかない。

深夜一時、携帯は持っていたけど、助けを呼ぶのは無理。こんな危ないところへ家族も誰も呼べないし当てにならない。自力でどうにかするしかない。車を捨てて脱出を試みます。

エンジンを切る前に運転席の窓を開け、ドアが水圧で開かない時のための脱出口を確保。とりあえずの貴重品だけ肩バッグに詰め込んで、いざドアを押してみたら、やはり動かない。もう一度、力いっぱい押すと、ゆっくりと開いた、と同時にドアの隙間から水がドッと流れ込んできた。ドアの隙間に身体を押し込んで、なんとか車外へ脱出。水の深さは腰くらい。

車を放置するのに、このまんま乗り捨てていいのか、まだやっておくことはないか、と一瞬だけ考えたけど、一刻も早く安全なところへと、車を背に、元の道路を目指して泥水を踏み出しました。

数歩進んで、いきなり胸までズボッと水の深さが来た。両手の荷物は濡らすまいとバンザイ状態。前に行くのは危ないと後ずさり、一歩ずつ深さを足で確かめながら浅い方へ浅い方へと移動。そのうちにふいに高い場所に出て、ここだとばかり道路へ向かうと、それが農業側道で正解。いつもの通勤路のアスファルトを踏みしめました。

アスファルト路ですら、膝まで水がきていて、濡れたジーンズでそこを進むのは難儀でした。そんなこんなで冠水地帯を抜け、県道まで出てひと息。家まで残り1キロの道は特に何もなく帰り着きました。

家に着いて濡れた服を脱ぎ、目を覚ました連れ合いに事情を説明。風呂に入って110番をかけ、警察に自分にいま起こったことを説明しました。僕は110番って初めてだけど《事件ですか?事故ですか?》って聞いてくれるのですね。自力で脱出して車に取り残されてはいない、と告げるとオペレーターも《それは何よりでした》と言ってくれて、レッカー車の手配を僕に指示しました。

で、そのままJAFへ電話。事情を説明したところ、レッカー車はどんなに早くても昼以降だと仰る。何卒よろしくと電話を切り、この夜は3時半に就寝。


数時間後、土曜日の朝です。現場に行くと、昨夜の水は引いていて、自分の車発見。それと、僕の後に流されたであろう車があと二台、計三台が痛々しく停まってました。てっきり水田の真ん中に刺さってるかと思った僕の車は、ビニールハウスの前にキチンとバックで停車したかのようにそこに在りました。エンジンは残念ながらかからない。

ビニール袋にドロだらけになったCDを集め、その他の車中の備品も運べるだけ回収。朝10時にお世話になってる車屋の営業マンに電話。事情を言って保険会社の手配を頼みました。

はたして、昼を過ぎてもJAFから連絡が来ない。電話をしても全然つながらない。あとで聞けば、被害が多すぎて、静岡県内のレッカー車とレンタカーは軒並み出払ってしまって、手配の目処が全くつかない状態だったらしいです。

待ってても今日はレッカー車は来ないだろうと、気持ちを切り替え、家の車を借りて、マムゼルのフリーダムフォーク集会へ向かいました。

こんな時に音楽なんて、と思うよりも、もう、とにかく気分を変えてほしかった。自分が主催じゃなかったらさすがに欠席しただろうけど、結果として行って良かったです。《イヤーひどい目にあったよー》と人に話せたことで、ちょっと楽になった。なによりも、皆さんの歌を聴いてる間は車のことは忘れてました。

翌日の日曜日。車が停まってしまった敷地の持ち主のお宅にご挨拶。レッカー車が来なくていつまでも放置してることを菓子折り携えて謝罪。この日、ようやく保険会社と連絡が取れ、電話で話せました。レンタカーの手配は目処がつかず、県外の業者に手配しているとのこと。お金の説明をいろいろ聞きつつ、お昼前より、娘の部活のコンクールを観に行く。忙しくしてると怖い体験も忘れます。


月曜日、僕は職場まで家族に送ってもらって出勤。そしてようやく今日、レッカー移動されたそうです。僕の愛車はディーラーさんのところに運ばれました。ホッとしました。


今回泥に水没した僕のCDたち

今何処/佐野元春コヨーテバンド

Softly/山下達郎

Inherit The Life/角松敏生

ドリヴン/ギルバート・オサリバン

ランゲージ・オブ・ライフ/エブリシング・バット・ザ・ガール
ジーザス・オブ・クール/ニック・ロウ
ガラスの動物園/甲斐バンド


時間が経つほどに怖くなってきます。運が良かった。怪我もなく無事帰れて、良かった。


マシス

週末になるとやたら雨が降る、という僕の歌。