書店の新刊棚を見ていたら、たまの本(漫画)がありまして、パラパラ読んで棚に戻したのだけど、帰ってからやはり買っとけば良かったと思い直し、再度出掛けて購入しました。
『「たま」という船に乗っていた』。原作がメンバーの石川浩司(ランニング姿で太鼓叩いてる人です)。石川氏のバンド自叙伝を漫画化してWeb連載されたものとか。氏の学生時代から、たまがイカ天に出場するまで、アングラなアマチュア音楽集団が、一夜にして全国に名前を轟かせる瞬間までのエピソードが収録されています。

《さよなら人類編》と銘打ってありますが、この続きも連載してるんですかね。僕はWebの方はよくわからない。読んだことありません。
読んでわかる人はニヤリとするであろう、絵と構成が藤子不二雄Aの『まんが道』のパロディ。藤子不二雄だけでなく、所々で、つのだじろう、赤塚不二夫、つげ良春、水木しげる、梅津かずお等、いろいろな漫画家の絵柄が登場して楽しい。キャラが突然サラリーマン金太郎風になったり、金田一少年になったり、大友克洋や新海誠も飛び出して、そんなおふざけ感はたまの音楽にも通じる?気がします。

面白いので一気に読んでしまいました。で、読んでるとたまが聴きたくなって、手持ちのCDを棚から出して聴き返してみた。どれも中古で買ったもので、キャリア全部の音源は持ってません。
2nd『ひるね』と3rd『きゃべつ』はその昔、今はなきアビーロード掛川店の100円カゴの中より購入したと記憶してます。懐かしい。

『けらいのひとりもいない王様』は隠れた名盤。友部正人さんとの競作です。タイトル曲必聴。

たまは最初にイカ天に出た時、僕、リアルタイムでテレビを観ていました。曲は忘れもしない「らんちう」。知久寿焼の歌声がものすごく異物感あって、最初は生理的にザワザワと障るものがありました。うわー気持ち悪い、なんじゃこの歌、と思った。正直なところ。

余談ですが後年、原マスミの歌を聴いた時に、たまに似てる、と思ったものです。知久寿焼と原マスミの歌声って、似てますよね。原マスミのファンになったことで知久さんの歌もOKになったのかも。

イカ天、毎週は観てなかったので知らなかったけど、たまはこのあと見事五週勝ち抜いて、グランドチャンピオンになったとか。五週目のチャレンジャーはマルコシアス・ヴァンプだったらしい。マルコシアス・ヴァンプを降して勝ち上がったのはスゴいですね。

一週目「らんちう」
二週目「さよなら人類」
三週目「オゾンのダンス」
四週目「ロシヤのパン」
五週目「まちあわせ」

大事な五週目に「まちあわせ」という人を食った楽曲を出してきたのは、何ともふてぶてしい。あれでマルコシアス・ヴァンプに勝っちゃうのもスゴいけど、たまというバンドの芸の手数の多さ、底の知れなさが評価されたのかなと思います。

たまの演奏は現在YouTubeでも観ることができます。イカ天の審査員の戸惑いっぷり、吉田健が全くコメントを拒否してて、たま嫌ってるのかと思いきや、投票で迷わずたまに札を挙げる姿がすごく面白い。個人の好みはともかく、ちゃんと評価してんだなって思った。


世間と同じく僕も、「さよなら人類」のヒットでたまのアルバムを手に取ったクチです。たまはメンバー全員が曲を作って歌うシンガーソングライター集団なのですが、やはり知久寿焼と柳原幼一郎の作る歌が2トップで面白い。ベースの滝本晃司の曲が普通に良い曲なんだけど、他の三人のアクが強すぎて当時は地味に見えてました。今聴くと滝本晃司の歌、とても良いんですけどね。

そう、たまは昔聴いた時より今聴いた方が面白く感じます。当時は聴きながらもよくわかってなかったんだと思う。年を経て、たまの音楽を面白がれるようになってきました。どの歌も美しくて淋しくて、言葉の妙はとびきり楽しいです。

たまの影響をマシスが受けた、という自覚は特にないのですけど、たまの作る楽曲の世界にはとってもシンパシーを感じます。知久さんは友部チルドレンなので、余計にそう思うのかもしれません。もしイベントでたまのような楽曲を作る演者さんに会ったら、ぜったい好きになると思う。

ちなみに、たまの歌で僕が一番好きなのは「おるがん」です。僕もこんな歌が作りたかった。

動画は知久さんのソロステージ。

たまの登場からずいぶん年月は過ぎて、音楽もどんどん多様化されてきたけど、たまの音楽の異物感は令和の今聴いても、全く損なわれていません。変わらずに異物のまんま、これだけ多様化されてもどこにも属さない。80年代からこの音楽に着目し、これこそが面白いと尖ってきた若き音楽集団の、そのひねくれた感性にはただただ感心しますね。


マシス