ちょっと不思議な一週間でした。前の日記で黒板とキッチンでのライブのことを書いて、まだまだ書きたいことがあったのに、それどころじゃなくなってバタバタしてたのです。
ぶっちゃければ、ライブ翌日、僕の家族の一人が濃厚接触者になったとの連絡がありまして、この一週間は家の中でもマスク着用。家族の各々が部屋に極力閉じ籠もって過ごす毎日でした。今日でようやく隔離期間が終わります。何事もなさそうでホッとしてます。
僕は濃厚接触者の濃厚接触者、という立場ですので、気をつけつつも仕事は行ってました。職場の上司には報告しましたよ。もし家族が発症したら、たちまち自分は濃厚接触者に格上げとなってしまうので、突然休んで迷惑かけたらスミマセン、と。
肝心の当人はこの一週間、ずっと平熱、普通に元気してたみたいで、どうやら感染はなかったと思われます。無症状だった可能性もゼロとは言い切れないけど、とりあえず濃厚接触者としての隔離期間は無事に済みそうで良かった。ストイックに閉じ籠もった当人はよく頑張りました。
この一週間、家族も疲れたことと思う。《もしも万が一》に備えて同居人との接触を律してなきゃならないって、結構ストレスです。家の中でライン通話でやり取りしたり、部屋で一人なのにマスクしてたり、だんだん自分まで感染者扱いみたいな気がしてきて(あながち間違いじゃない)しんどかった。いざコロナ非常時の家庭対処としては、格好のシミュレーションになりましたけどね。
僕はテレビ部屋に布団を敷いておこもり。一人ならイヤホンなしでYouTubeとかテレビを見放題だとか思ったけど、実際はテレビなんて観たくならないし、おこもり用に積んだCDや本もぜんぜん手をつけなかった。こんな状況になると何しても楽しくない。唯一、録画したLOVELOVEあいしてる最終回だけ、繰り返し見て過ごしてました。
そんな時に届いた宅配便。ギルバート・オサリバンの7月24日発売の新譜『ドリヴン』が来た。これが砂漠にオアシスでした。

前作のセルフタイトルだった『ギルバート・オサリバン』より、四年ぶりの新作です。

気疲れして、音楽を聴く気分すら抜けてた時に、よっこらしょと腰を上げてこのCD聴いてみたら、沁みた。日曜日の昼間、しみじみと沁みて沁みて、固まった心が溶ける思いでした。ビターなラテンリズムの一曲目「ラブ・カジュアリティー」から「ブルー・アンカー・ベイ」の流れがもう!
いいわ、俺、やっぱりギルバート・オサリバン好きだわ。
おいおい、俺がどんなにオサリバン好きか知らないだろう、これだよ!
って、誰もいないのに独りで喋ってました。気疲れて変なテンションになるほど、この新譜にニヤついて癒されたのです。まぁ、隔離期間が終盤だったので、ようやく少し気が緩んだとも言えますが。
何度もこの日記に書いていますが、ギルバート・オサリバンは僕の心のミュージシャン。これは僕だけの音楽、と勘違いしているほどファンです。オサリバンを聴くとまるで懐かしい写真を見た時のような、誰もが覚えのあるセピア色の風景を感じてキュンとなるのです。
このKTタンストール(知らない人でした)とのデュエット曲「テイク・ラヴ」、動画が発売前より先行公開されてましたが、オサリバンの風貌や歌声は彼のイメージのまんま、髪の毛なんてフサフサで本当に変わらない。楽曲もノリノリでアルバムの期待値が上がりました。
デュエットというと、シンプリー・レッドのミック・ハックネルとのデュエット曲「レット・バイゴーンズ・ビー・バイゴーンズ」も目玉の一曲。ミックの声を活かすのにキーが低すぎるんじゃないかとも思ったけど、とても良い曲。タイトルは《過去は水に長そう》的な慣用句みたい。
『ドリヴン』は前作よりも僕は好きです。前作はアレンジがちょっと単調だったけど、今作は生楽器に生のコーラスがふくよかで、あったかい音に耳が喜んでいます。
どの時代の録音でも、オサリバンの楽曲は短くコンパクトにまとまっていて、曲自体の愛らしさは決して失われることがない。それが素晴らしい。
例えば、ミスチルはキャリアを重ねる毎にどんどんスゴい曲を作って発表してきましたが、そうなるともう「君がいた夏」の作風には戻れない。「エソラ」「HANABI」「HERO」といった壮大な楽曲は素晴らしいんだけど、僕は「君がいた夏」の初期の魅力をどこかで懐かしんでいます。
オサリバンはその点、ずーっと四分間のポップスというスタイルを守り続け、みんなが大好きなオサリバン印の愛らしい曲を作り続けている。それって奇跡みたいに凄いことだと思うのです。イメチェンしないで50年以上もの長きに渡って新鮮でいられるなんて、普通は絶対無理ですよ。
オサリバン印、とは、あの妙ちくりんなコード進行ですね。どの曲も必ずといっていいほど転調して、子供がいたずらするように変なコードをソッと置いていく。あまりに自然にやられるため、いたずらされてたことに気付かない時もある(メロディが美しすぎて)。僕らはオサリバンのいたずらコードを見つける度に《やったなァ》ってニヤニヤしちまう。
御大、と呼ぶにはぜんぜん偉ぶらないオサリバン74歳。この人はこの歳になっても歌を創ることが楽しくて仕方ないのだなって、新しいアルバムを聴く度に伝わってくる。40年以上前に「アローン・アゲイン」を出した時と、気持ちは何も変わってないんじゃないかしら。
コロナがなければ、2020年に東京で来日公演を観ているはずでした。行けなかったのは残念だけど、こんな新譜を聴けたら気持ちも晴れるというものです。
個性的なヴォーカル、美しいメロディ、ひねりの効いた歌詞は、僕の好きな音楽三ヶ条ですが、ギルバート・オサリバンはまさにそれ。いつまでもこの青年のような音楽への情熱を持ち続けて欲しいです。できればまた来日して公演をやってほしい。元気なうちにまた来てください!
6月には達郎と拓郎、そして7月に元春と今回のオサリバンで、僕がこの初夏に楽しみにしていた《ベテラン新譜4連発》は完結。四組とも無事に手元に来ました。そのどれもが素敵なアルバムだったことが驚きと喜び。やってくれると信じてたよベテラン勢。
マシス