昨日12月8日はジョン・レノンの命日でした。とはいっても、命日ということは今年はすっかり忘れていました。情の薄いファンです。近いうちにビートルズかジョンのソロをしっぽり聴きたい。

でも、今は折坂悠太のアルバムがプレイヤーから出せません。新しいアルバム『心理』が気に入ってしまって、ここのところずっとエンドレスでリピート中なのです。
前作のアルバム『平成』が音楽雑誌の年間ベストアルバムのランキングに入るなどと話題になり、近年ではドラマ主題歌「朝顔」で注目を浴びた折坂悠太の、待望の新譜です。

前作の『平成』はとても楽しませてもらったので、さて新作は、と期待したけど、軽く越えてきましたね。僕の好みでは『心理』は『平成』より好きです。おそらくは2021年度に出たアルバムの中で、個人的にナンバーワンになりそう。そもそも新譜って(昔に比べて)ぜんぜん買わなくなったったけど、こんなにシビレた新譜は七尾旅人の『ストレイ・ドッグス』以来かも。

(こんなにハマるんなら特典映像付きの初回盤を買えば良かったと後悔中)


『心理』折坂悠太
1. 爆発
2. 心
3. トーチ
4. 悪魔
5. nyunen
6. 春
7. 鯱
8. 荼毘
9. 炎 feat. Sam Gendel
10. 星屑
11. kohei
12. 윤슬(ユンスル) feat. イ・ラン
13. 鯨

一曲目の「爆発」から「心」へ、そして「トーチ」への並びが堪りません。「悪魔」「鯱」の不穏な躍動感と歪んだギター、「春」「荼毘」「炎」のねっとりした歌いっぷりも堪らん。どの歌も、ちょっとしたフレーズが耳に残って離れません。

윤슬(ユンスル)」の韓国語の朗読詞《もしもし、聞こえますか / 私はよく悲しくなる人ですが / 悲しくない人が好きです / 私は悲しくない人になりたいです》この寂寥感がまた堪らない。ちなみにユンスルとは水面に光がキラキラ反射してる様子のことだそうです。

どこか懐かしくて、でも、何にも似ていない。

別に不思議なことをしてるでもないのに、この得体の知れなさはなんだろう。聴くほどに、僕には折坂悠太がある種の化け物に見えてしまう。若者だけど化け物。

ドラマでヒットした「朝顔」だけを取り上げれば、なーんかちょっといい感じなバラードを歌う人、って思えなくもない。「朝顔」の《ここにー、ねがうー、ねがうー》のキャッチーさは、折坂悠太の化け物感を薄めて一般人に浸透させる戦略だったのでは、とさえ思えてきます。

「朝顔」で興味を持った一般の音楽ファンが、アルバム出たじゃーんって『心理』を聴くと、あれ、なんか思ってたのと違うぞ、こんな音楽聴いたことない、と戸惑いつつも折坂ワールドにハマっていく図式が想像できます。


折坂悠太はとにかく《歌声》の人。削ぎ落としてスカスカな音のアレンジでも、意味不可思議な歌詞も、あの声あってこそ成立してるってところがある。本人もそれをよく判ってて、確信犯で自分の音楽をやってると思います。

《目がイッチャッてる》という表現を借りれば、彼はまさに歌声がイッチャッてる。うかつにちょっかいかけたら危なそう。うわ、コイツやばいぞ、何やらかすかわからんぞって、歌を聴けばすぐそれと伝わってくる。

例えば、「朝顔」を誰かが弾き語りでカバーしようとしても、《良い歌だから歌ってみました》って上澄み解釈でしか演れないでしょうね。いくら歌が上手い人が歌おうが、あの歌の味(狂気)は本人じゃなきゃ微塵もにじみ出てこないと思います。


僕は『平成』をジャケット買いして折坂悠太を知ったクチですが、その時は《なんだこれは》と訳も分からず聴いてました。当時の日記で確か、《久しぶりに一緒に大声で歌いたくなる音楽を見つけた》と感想を書いたような覚えがあります。
この面構えを見て、ジャケット買いしました。不敵な目付きしてますね。

なんか折坂悠太って、若いのにチャラチャラせず、不思議な風格があります。音楽なら私、誰にも負けませんよと言わんばかりに、横綱相撲の貫禄というか、最初っから老成してる印象です。若いのに不思議ですね。


折坂悠太の音楽はジャンル分けすると何でしょう。まぁポップスでしょうけど、いわゆる普通のJポップとか、洋楽を土台に発展進化した邦楽に馴染んでしまってる人には、折坂悠太はものすごくキワモノに聴こえるんじゃないかしら。

僕の第一印象では、日本語なのに異国感があるところとか、沖縄音楽を聴いた時の異質感にちょっと通じるかなーとも思ったのですけどね。『平成』を聴いた時は、もしかして戦後のレトロな昭和歌謡がルーツかしら、とも思ったけど、『心理』を聴いてると、もう、ジャンルとかどうでもいいやって気になってきます。

それと、打ち込みの音が一切入っていない音楽って、最近は珍しい。人が身体を使って鳴らした音100%で作られた音楽って、聴いてて身体が音に自然と反応しますね。耳が喜んでるのが判りますよ。


ボスのノーニュークス・コンサートも折坂悠太と一緒に買えました。躍動感というなら、ステージの上を疲れ知らずに弾け飛んで叫ぶボスは躍動感そのもの。あまりに痛快で見てるだけでこっちもエネルギーがチャージされそうです。



マシス