職場のドアを開けて外に出ると、まるでスケートリンクにいるかのような寒さ。スケートリンクだなんてヤワな比喩を使いやがるな、と雪国の人に笑われそうですが、本当にそう思うんだから仕方ない。静岡(僕の住む地域)は雪が滅多に積もらないので、寒さの基準となる記憶がスケートリンク程度なのです。
そして今日も家に帰るなり、家族に《外はスケートリンクみたいに寒いぜ》と報告してしまった。雪こそ積もってないけど、静岡もここんとこ毎日寒いです。寒いのはイヤですね。
外に出るのは寒いですが、家で本を読むのにははかどります。
10月に閉店した戸田書店掛川西郷店のサヨナラ記念に買った四冊のうちの一冊、最後の一冊をようやく今日読了しました。

図書館の殺人 / 青崎有吾(創元推理文庫)
エラリー・クイーンISM継承者、青崎有吾の新刊(「体育館の殺人」「水族館の殺人」)に続く文庫版》はとっても面白かった。個人的にはシリーズの中で一番楽しめました。久しぶりに面白い本格を読んだーって満足感でいっぱいです。
本格、ってことは、文章にアンフェアが一切ない、ということです。こんなことあり得ねぇよって状況での殺人事件をミステリーとしてグイグイ読ませる手腕は、青崎有吾はやはり上手い。
まして本作のテーマはダイイングメッセージ、こんなこと実際にあり得ねぇよの代表みたいなものでしょう。
《被害者が死ぬ間際に、自分を殺した犯人の名前を書き残してくれるなんて、自分はいまだかつてそんな親切な殺人現場に遭遇したことはない》、と。これは別の小説の登場人物のセリフですが。でも本当にそう。
昔の小説でならよく見かけたダイイングメッセージも、密室殺人とかも、昨今なかなか見かけないのは、やはり現代では犯人や被害者がわざわざそんなことをするリアリティーがないのでしょうね。下手に書けば失笑ものですもの。
青崎有吾は謎解きのロジックに定評がありますが、一番感心するのは、《あり得ねぇ》って状況を《あり得る》とした物語を紡げることです。これこれこんな理由があったから、このご時世にこんなあり得ねぇ状況が生まれちゃったんですね、という理由付け、設定がなかなかに説得力あって上手い。
そして、ただの高校生の主人公が、毎度毎度殺人事件に巻き込まれるか、という不自然さも、《あり得る》んです。巻き込まれる状況が自然に思えるよう設定してある。まだ著作数は少ないのでアレですが、どこかの尋常じゃなく事件に巻き込まれる小学生探偵と比べるでなく、そこら辺りはよーく心得てらっしゃる。
僕はこのシリーズ長編三作目にして、エキセントリックな性格の主人公、裏染天馬のキャラクターがやっと馴染んできた。本作を読んで、ようやく裏染天馬を好きになれた気がします。
前作までは、話はともかくこの主人公が最もあり得ねぇ、いけすかなくてヤダなって思ってた(裏染天馬ってネーミングも奇抜すぎてイヤだった)。しかし、登場人物に感情移入できればその読書は成功したも同然。今作ではっきりファンになったので、早くも次回作が楽しみです。体育館、水族館、図書館ときて、次は何?
この「図書館の殺人」、ネタバレこそ避けますが、前作、前々作と違って、謎がひとつ解かれずに終わってます。これ、作者はわざとやってます。犯人も犯行の方法も解かれて、いつもの理詰めてんこ盛りな謎解きは今作も絶好調で、ハー納得です参りましたと楽しませてもらえた。けど、え、ここで終わっちゃうの?!と思わず声を出してしまいました。
巻末解説を読むと、しっかり考えれば真相は解る、と書いてある。いやいや、わかんないから。この謎こそ肝じゃん。これをハッキリさせないで終わるなんてヒドイ。誰か読んだ方いらっしゃったら、もし謎が解けてたら僕にこっそり教えてくださいよ。
《なぜ犯人は○○を持ち去ったか?》
一応、表向きな解決としては説明してくれてます。しかし、本当の理由は?これが解けないと、肝心のダイイングメッセージの必然性、これが可もなく不可もなく、という感じになっちゃう。
ああ、モヤモヤする。これも作者の手にまんまと嵌まってしまったのだろうな。悔しいぞ。
読書のBGMはジャニス・イアン

僕はジャニス・イアンのオリジナルアルバムは聴いたことはありません。このベストCDこそ全て。一曲目の「STARS」が出会いで、その出会いからCD全ての曲が特別で、全てが耳に腹に細胞に染み入る。何も言うことない。
連れ合いからの情報。NEWSの加藤シゲアキさんの著書「オルタネート」が直木賞の候補にノミネートされたそうです。連れ合いは加藤さんの書く本のファンで、とても喜んでいます。
アイドルやって本も書く、ってのはなかなかの荒業で、物語を紡ぐってのは相当に気合いのいる作業だと思うのです。二足のわらじで本を書く人は昔からいて、そしてそれを攻撃する声も昔からある。お笑い芸人で小説家、ロックミュージシャンで小説家、そんな片手間に書いた小説で小説家なんて言語道断、と、さもそれらしく非難する。
結局は、書かれた本が面白いかそうでないか、に尽きると思うのです。本さえ傑作なら、読みもせずに野次る輩の言葉になんの説得力もなくなる。BSタイプライターズで加藤さんだけ無冠だから、賞が取れたらいいですね。
マシス