友部正人さんの新譜『あの橋を渡る』が今日、手元に来ました。お休みの土曜日に、早速エンドレスで聴いていました。



傑作です。いきなり購入初日からそんな決めつけて、何をフカシてやがる、と呆れられそうですが、傑作は傑作。素敵なものは素敵さと無邪気に笑える心で傑作と言いたい。
たどたどしく、よれよれの、ゴツゴツとしてざらついた、頑固で優しい、まぎれもなく等身大の友部正人の歌たち。黙って万人に聴いてもらいたい、しかし誰にも教えたくない至宝。

と、書きながら、一回目、歌詞カードを見ながら聴いた時は、途中で寝ました(スミマセン)。まぁまぁいいじゃない、ってくらいの印象で、友部さんっぽいし、悪くはないけど、と思いながら途中で居眠りしてしまい、目覚めてから、おおどこまで聴いたっけ、と、もう一回聴いた。そしたら、ん?ちょっと待て、さっきと違う。ひょっとして、すごくいい?って思い始めました。三回目を聴く頃には一言一言に発見発見で鳥肌が立った。
実は、二回目以降は歌詞カードを見ずに聴いてたのです。そしたら、耳に飛び込んで来る言葉から立ち上るイメージ、情景が、歌詞カードとにらめっこの時とぜんっぜん違う。
友部さんが東北に行った時に作った歌を、その土地で録音したい、という思いから制作が始まり、東北各地の友部さん縁のお店にて、どの歌もほぼ一発録りで録音されたというこのアルバム。床の軋み、歌い終えた時の小さな笑い声など、演奏の音も含めて、目をつむって聴けば、友部さんがそこで演奏してるかのごとく臨場感です。
01 あの声を聴いて振り返る
アルバムタイトルのフレーズを含むこの歌からアルバムはスタート。南三陸を訪れた時に友部さんが感じ取った心象風景の世界。聴くだけでなく、一度この歌詞を口に出して朗読して欲しい。こんなストレートな思いまで歌になるのか、と驚かされます。幽玄に鳴り響くバックのギターが《あの声》を演出しているかのようです。
02 一月一日午後一時(高橋さん)
なんの解説も必要ないほど、歌詞がすべてを語ってる。挽歌を歌う友部さんの筆は冴えてます。ひとつとして言葉を無駄にすることなく、すべての行が切ない。エスケリータ68で昨年初めて聴いた時も泣けました。
03 モスラ
モスラだなんて、友部さんらしくない歌だな、ふざけて作ったのかしら、とライブで聴いた時は思ったけど、これはアルバムの歌詞カードを読んでみて正解。東北がモスラのように繭に包まれ、いままさに生まれようとしてる、と歌ってるなんて、知ってビックリ改めて感動。
04 ただそれだけのこと
アルバムで一番キャッチーな曲で、最もヘビーなストーリーを持つこの歌。トランプが大統領になった頃に書かれた歌のようだけど、黒人が白人警官に撃たれる事件はいまだに起こっていて、歌の生々しさが風化してないのがやるせない。以前も書きましたが、ブルース・スプリングスティーンの「アメリカン・スキン(41shot)」に通じる重たいテーマです。
05 ニューヨークの憂鬱
チャーミングな一曲。靴を頭に乗っけたように人が生きてるだなんて、なんて比喩か。コミカルにシニカルにイメージがニューヨークから天国まで転がってゆく。歌い終えた後の笑い声が微笑ましい。
06 ブルース
元気が出ます。暗い歌は元気がないと歌えない、ってのは本当にその通りで。ライブで初めて聴いた時から好き。その時はタイトルが分からなかったから、書きとめたセットリストに「ブルースは元気がないと歌えない」とメモしたっけ。
07 バレンタインデー
少し長尺の美しいラブソング。友部節の名フレーズの嵐。これピアノも入ってたらもっと素敵だったかも。歳をとって、側にいる相手に向かってこんな風に歌うことができたら、どんなに素敵でしょう。
08 電車の中では何もしない
短めの佳曲ですが、飄々としてて実にいい。ライブで聴いた時に僕が《タイトルは何ですか?》って聴いたら、ああ、電車の中では何もしないって歌です、と答えてくださって、そのまんまじゃんと笑ったのを覚えてます。
09 船長坂
これは実在の地名でしょうか。と言うことはポンポン船って民宿も実在するのかな。小樽?旅をテーマにした友部さんの歌は多いけど、これもまたいい。出だしのメロディーは友部さんの某曲にちょっと似てます。
10 空の鰯
ここまでアルバムを聴いてきて、最後にこの歌が来る。モスラの次はイワシかよ、と侮るなかれ。この歌がラストにあることで、このアルバムの傑作度数は跳ね上がっています。命が青い空を泳いでいく、空の鰯、とは鰯雲を見てのことかもしれません。
いつも言ってることですが、友部正人の作品に触れると、自分の感性の刃があたかも磨がれるような気分になれます。変な例えですが、映画「仁義なき戦い」を観た観客の喋りが菅原文太になってしまうように、「燃えよドラゴン」を観たあとの客はみんなブルース・リーになるように、友部正人の創造に感化されてしまうのです。
興味を持たれたら、とりあえず、ピンと来なくても二回以上、アルバム最後の「空の鰯」まで通して聴いて欲しい。できれば二回目からは歌詞カードを見ずに、耳で言葉のイメージを頭に思い浮かべて欲しいです。ぜひお楽しみくださいませ。
余談::
Amazonには友部正人の近年の作品を片っ端からレビューで貶して回る懐古怪人のファンが住んでますが、そいつはどうせこのアルバムを、ハイ駄作またまた駄作こんなの絶対に聴かないでとっとと引退しろ、とノタマウのでしょう。それはハラワタの煮え繰り返ることですが、そいつの病的なヘイトレビューも、きっと一般の音楽ファンを振り向かせることにちょっとは役に立ってると信じます。聴く価値なんてないって言いたいためだけに音楽を聴くなよ。
ヘイトレビュー命な自称友部ファンの懐古怪人の書くことより、マシスを信じてください。友部さんのアルバムはとても素敵なんですよ。
注意:懐古怪人とは、ああ昔は良かったーそれに比べて今はーとボヤく自称ファンのことだそうです。
注意2
先ほど確認したら、一連のヘイトレビューはすべて削除されてました。Amazonが消してくれたのか。良かったというべきか。結局あれは何だったのか。
マシス