今は亡き音楽評論家の中山康樹さんが、もしこのアルバムを聴いたらなんて言ったことでしょう(近年のアルバムと同様にケチョンケチョンにゆったかな、とか、それは聞きたいような聞きたくないような、複雑な気持ちもある)。
ボブ・ディランの新譜が出たら、菅野ヘッケルさんの感想(ご意見)をまず知りたくなるように、僕は7月8日に出たボブ・ディランの新譜『ラフ&ロウディ・ウェイズ』を聴きながら、中山康樹さんのご意見を聞いてみたい、と、つい思ってしまいました。
2.偽預言者(False Prophet)
格好良いブルースナンバー。このメロディは先人の作品を下敷きにしてると解説に書いてあった。けど、例えこのブルースフレーズは借り物だとしても、ディランの歌と合わせて格好良い。「偽預言者」ってタイトルがすんごくいい。
3.マイ・オウン・ヴァージョン・オブ・ユー(My Own Version of You)
4.あなたに我が身を(I've Made Up My Mind to Give Myself to You)
ムードたっぷりのバラード。いつもブツブツ歌っててメロディが平坦に感じるディラン、たまにこんなメリハリあるメロディを歌うと、ものすごく美曲に思えるのがディランの得(?)。《初雪を見たよ》ってフレーズのあと、一息余韻を持たせるところも(偶然だろうけど)オッて思うし、バンドメンバーの《ウー》のコーラスが堪らない。ここまでの四曲、曲順の並びが最高。
5.ブラック・ライダー(Black Rider)
黒い騎士(ブラックライダー)に呼び掛ける体裁の歌詞は寓話的で面白い。コードも何気に凝ってて、暗いけど好きな歌。ブラックライダーはイメージ的に「黒いコートの男」(『オー・マーシー』収録)みたい。(追記8月3日の時点でお気に入りに昇格)
6.グッバイ・ジミー・リード(Goodbye Jimmy Reed)
ディランお馴染み、僕の苦手なタイプのブルースですが、ディランのボーカルの力強さはアルバムで一番のもの。リフが格好良いけど、このアレンジも先人の下敷きがあるのかしら。歌がいいんだからもっとアレンジひねって欲しい。
7.マザー・オブ・ミューズ(Mother of Muses)
このアルバムの前に三作、スタンダードナンバーを歌うアルバムを出してたけど、この美しいバラード曲はまるでスタンダードナンバーのような風格があります。綺麗なメロディだから中山センセもこれは好きでしょ。それとも《メロディが○○のパクり》と言わんでいいこと言ってたかな。
8.クロッシング・ザ・ルビコン(Crossing the Rubicon)
結局このアルバムのアップテンポ曲は全てブルース。僕はブルースは苦手と言ってますけど、アレンジをディランのオリジナルにしてくれたら文句ないんです。歌い出しの頭のジャジャジャジャジャジャってギターが確かに格好良いですけど、過去のどこかの作品のアレンジのまんま頂きじゃあるまいかと疑いたくなる中山イズム。ディランはこういう音で歌を歌うのがとても楽しそうです。
9.キーウェスト(フィロソファー・パイレート)(Key West (Philosopher Pirate))
長尺なこの曲はまたゆったりとしていて、ロードムービーのエンディングがスローモーションで流れてくるよう。サビっぽいとこで《キーウェーーッ》って軽く歌い上げるフレーズがオオッて思う。静かに立ち上がって静かに幕を閉じるアルバムです。
10.最も卑劣な殺人「Murder Most Foul」

ヘッケルさんの解説は基本、ディラン全面肯定良心派。ディランの魅力を日本に広めることに人生を注いでて、なかなか取っつき難いディラン作品の魅力を伝えるため、良いとこを最大限にピックアップして誉める。ユルい作品ですら淀川長治センセの映画評論ばりに、これはここが素晴らしい!と悪口を絶対言わない。好きなものをこれでもかと誉める姿って、清々しく気持ち良いからヘッケルさんの文章大好き。
かたや中山康樹センセは、ディランを神格化し過ぎてディランのやることを何でもかんでも有難がるのは間違ってると、世界のディラン信者に喧嘩を売るような文をいくつも書かれていて、辛口だけどそれはそれで痛快で面白い。好きなモノは激誉めして気に入らないモノはつまんないとハッキリ言う。僕はどちらも正しいディラン評だと思うのです。
ただ、厄介なのは中山センセ、僕の好きなディラン作品もクサしてくれるので、読んでるとたまにムカつくのですね。ディランは最高だレジェンドだと騒ぐファンをバカ扱いしてるようにも感じて、それでも読み物として文章は面白いので、テメーこの野郎ふざけんなと思いながらも読まされてしまう。ディランのポップでメロディの美しい曲が好き、ってところは、僕と中山センセと意見が合うのですけどね。
悔しいことに、中山康樹センセの評論を知ってしまったら、もう中山康樹的な視点を無視してディランを聴くことはできなくなってしまった。もともと、僕も音楽を聴きながら面倒くさいことをブツブツ考えてしまう質なので、中山センセのことを悪く言えないのです(無心で楽しめ、と自分に言い聞かせてる)。
7月8日の発売日にタワレコで購入して、ようやく三回通り聴けました。ボブ・ディランの最新アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』。ここ三日間、こればかり聴いてます。
先行シングルとなった「最も卑劣な殺人」がビルボードチャート一位を取って(一位はディラン史上初めてとか)、続いて「アイ・コンテイン・マルチチュード」も「偽預言者」も公開されて、いよいよ出るとなったアルバム前評判があまりに良すぎたので(『オー・マーシー』以来の傑作だとか)、おいおいそんなに持ち上げて本当か大丈夫かよって、最初は正直思ってた。
けど、聴いてみて、最初はフーン、ヘェーって感じだったけど、繰り返し聴くほどに良くなってくる。これ、相当に聴き応えあるアルバムなんじゃ?と思い始めてるのです。まだ三回聴いただけじゃ迂闊なこと言えないけど、2000年代ディランの最高到達点じゃないかしら。
ディラン御大79歳で、これまで600曲以上も作品を作ってきて、いまだに新しい歌を作って発表して、それがこんな作品だなんて、聴いて、訳詞を読んで、マジかよディラン、って驚きました。
まぁ、60年代からずっとポピュラーミュージック最前線で歌ってるボブ・ディラン、2020年の今、新譜を聴けることだけでも奇跡です。どんなに聴きたくてもビートルズの新譜はもう出ない。ジミヘンもデヴィッド・ボウイも新譜はもう二度と聴けない。でも、ディランはこうして聴けるのです。聴かなくてどうする。
本当に、中山センセだったら今作のディランに何て言っただろ。90年代以降ディランの才能は枯渇してきている、と臆面もなく言ってたセンセだけど、このアルバムを聴いたら《奇跡のまぐれ当たりが出た》なんて言ったかしら。そう言って欲しかった。
1. アイ・コンテイン・マルチチュード(I Contain Multitudes)
これ、文句なしに好き。アルバムの一曲目とすると派手さはないけど、コードがちょっと凝っていて、音の響きと歌の絡みが美しい。ディランお得意の散文炸裂な歌詞が冴えてます。
これ、文句なしに好き。アルバムの一曲目とすると派手さはないけど、コードがちょっと凝っていて、音の響きと歌の絡みが美しい。ディランお得意の散文炸裂な歌詞が冴えてます。
2.偽預言者(False Prophet)
格好良いブルースナンバー。このメロディは先人の作品を下敷きにしてると解説に書いてあった。けど、例えこのブルースフレーズは借り物だとしても、ディランの歌と合わせて格好良い。「偽預言者」ってタイトルがすんごくいい。
3.マイ・オウン・ヴァージョン・オブ・ユー(My Own Version of You)
僕の好きな「エイント・トーキン」「スカーレット・タウン」を思わせるマイナーコードのシリアスな雰囲気のナンバーで、淡々と迫ってくる力があって、これもお気に入。
4.あなたに我が身を(I've Made Up My Mind to Give Myself to You)
ムードたっぷりのバラード。いつもブツブツ歌っててメロディが平坦に感じるディラン、たまにこんなメリハリあるメロディを歌うと、ものすごく美曲に思えるのがディランの得(?)。《初雪を見たよ》ってフレーズのあと、一息余韻を持たせるところも(偶然だろうけど)オッて思うし、バンドメンバーの《ウー》のコーラスが堪らない。ここまでの四曲、曲順の並びが最高。
5.ブラック・ライダー(Black Rider)
黒い騎士(ブラックライダー)に呼び掛ける体裁の歌詞は寓話的で面白い。コードも何気に凝ってて、暗いけど好きな歌。ブラックライダーはイメージ的に「黒いコートの男」(『オー・マーシー』収録)みたい。(追記8月3日の時点でお気に入りに昇格)
6.グッバイ・ジミー・リード(Goodbye Jimmy Reed)
ディランお馴染み、僕の苦手なタイプのブルースですが、ディランのボーカルの力強さはアルバムで一番のもの。リフが格好良いけど、このアレンジも先人の下敷きがあるのかしら。歌がいいんだからもっとアレンジひねって欲しい。
7.マザー・オブ・ミューズ(Mother of Muses)
このアルバムの前に三作、スタンダードナンバーを歌うアルバムを出してたけど、この美しいバラード曲はまるでスタンダードナンバーのような風格があります。綺麗なメロディだから中山センセもこれは好きでしょ。それとも《メロディが○○のパクり》と言わんでいいこと言ってたかな。
8.クロッシング・ザ・ルビコン(Crossing the Rubicon)
結局このアルバムのアップテンポ曲は全てブルース。僕はブルースは苦手と言ってますけど、アレンジをディランのオリジナルにしてくれたら文句ないんです。歌い出しの頭のジャジャジャジャジャジャってギターが確かに格好良いですけど、過去のどこかの作品のアレンジのまんま頂きじゃあるまいかと疑いたくなる中山イズム。ディランはこういう音で歌を歌うのがとても楽しそうです。
9.キーウェスト(フィロソファー・パイレート)(Key West (Philosopher Pirate))
長尺なこの曲はまたゆったりとしていて、ロードムービーのエンディングがスローモーションで流れてくるよう。サビっぽいとこで《キーウェーーッ》って軽く歌い上げるフレーズがオオッて思う。静かに立ち上がって静かに幕を閉じるアルバムです。
10.最も卑劣な殺人「Murder Most Foul」
17分もあるディラン史上最高に長いこの歌。メロディなんてろくすっぽないのに、これは不思議と飽きずに聴けちゃう。歌詞の目眩く展開に合わせて、バックはストリングスとピアノとドラムだけでドラマチックに見事な緊張感を作ってます。前作『テンペスト』にも長い歌はたくさんあったけど、それらのどれよりこの「最も卑劣な殺人」は良いと思う。ディランの長い歌ってつまんないのもあるけど、僕はこの歌は好き。この曲だけdisk2に分けて収録したのは大正解だと思う。一枚に入れようと思えば出来ただろうに、ナイス判断です。
本音を言えば、このアルバムの数曲を前作に入ってた「デューケイン・ホイッスル」や「ペイ・イット・ブラッド」と差し替えたらさらに最高なのに、と思うけど、それは野暮。
ノーベル賞取ったってディランに興味持って初めて聴いたけど、なんだよどの曲もおんなじじゃん、って思う人もいるでしょう。そりゃそうだ、そう聴こえて仕方ないよなと僕も思います。けど、これを知ってるか知らないでいるか、それは違いますよ。ディランを身体にくぐらせているかいないかで、これから自分のすること作るもの、いろいろな物差しがまるで違ってたろうなって思います(そこにディランの影響が見えなくとも)。
ぼちぼちと、近隣にて音楽イベントが再開されつつありますが、いよいよ来週です。フリーダムフォーク集会、再開します。出演者の皆さんよろしくお願いいたします。
今回、フリーダムの瓦版はアンケートをお休みしようと思ってたのですが、やはり皆さんの近況報告を聞いてみたいと思いまして、水曜日まで募集したいと思います。お題目『自粛中に何かやってみた?』です。よろしくお願いいたします。

第170回フリーダムフォーク集会
【日時】2020年7月18日(土)19時半開演
【場所】ライブカフェ mamselle
袋井市堀越1802-1 TEL 0538-42-6440
http://mamselle.sakura.ne.jp/
【料金】music charge 500円
【出演】
一次会(本編)演奏時間一組20分(転換時間抜き)
・菅原真代
・弾夢弦気
・小栗祐司朗(初)
・砂風金
・てぃあーず
・ぷらっとほーむ(初)
二次会の飛び入りコーナーは当面なしとさせていただきます。
フラッと来て歌ってくのを楽しみにしてくださった皆さんご免なさい。
今回の出演者は主催側で選ばせていただきましたが、次回の9月以降は出演希望を募りたいと思います。演奏したいぞって方は希望月を連絡くださいね。二次会に出そびれた方もぜひ。先着順で6組を予定してます。
