詳しいことは割愛しますが、先日、待ち時間をつぶしていたのです。それはそれは長い、いつ終わるともわからない待ち時間。いや、実際はそれほどでもなかったのですけど、べらぼうに長く感じた時間でした。
で、まぁ待つだろうと思っていたので、時間つぶしに本を何冊か携帯していきました。はたして、本なんて読む気になれるか、とも思ったけど、何もせずに待つよりは気が逸れていい。
待機場所となった一室にて、パッと掴んだ「王とサーカス」(米澤穂信著)を三時間で読了。これは一昨年より何度も読もうと思って、そのつど途中で止まってしまってた一冊で、ようやく読み終えました。本当に、何回目のトライだったのだろう。リタイアせず完走出来て嬉しいです。

フリージャーナリストの大刀洗万智が取材で訪れたネパールで巻き込まれた事件。《王族殺害事件の取材を開始した大刀洗万智を嘲笑うかのように、彼女の前に転がったひとつの死体。。。》という帯の文句が、話の骨格をほぼ伝えてます。
舞台が日本でなく異国の事件ということで、雰囲気に馴染むのに少し手こずりました。国王殺害というスケールの大きな話になって、政治絡みの面倒くさい展開になるのかと思いきや、謎は至ってシンプル。登場人物も決して多くないのに、どんでん返しには見事に引っ掛かって、しっかり驚かされました。そこは米澤穂信さすがの筆致。面白かった。
個人的にいえば、自分のその時の気分に正にピッタリの小説だった。シリーズの前作「さよなら妖精」と同様、重たく切ない余韻たっぷりのラストに、本を閉じた後もしみじみひたってしまいました。
そして、内容ももちろんですが、主人公の大刀洗万智の言葉や行動が、ひとつひとつ心地良く感じて、なんというか、読んでいて気持ちが持ち上がってゆくのを感じました。決して多くを話さず表情も変えない、静かなる意思。強く冷静で公正な視点。内心の怯えを認めつつも前に進む姿勢。待ち時間に読みながら、ああ、この娘で良かった、この長い時間を同伴してくれたのが大刀洗万智で良かった、と思いました。大刀洗万智の芯の強さに、僕も心を支えてもらった感じです。