CDはAmazonでも買いますが、店頭で棚を見て実際に商品を手にとって選ぶのが断然好きです。棚を見てる時間が楽しいってくらいに、買わなくても楽しい。

でも、店頭ではまずお目にかかれないアルバムとかは、ネットで検索をかけてみたりもします。中古CDで探すのがほとんどですけど、本っ当に欲しいアルバムだったら、諦めてネットで買っちゃうこともある。

ネットは危険ですね。もう、見てると舞い上がってしまって、これは最終手段だと思わなきゃいけない。こんなのきりがない。片っ端から欲しくなってしまいますから。ルールとしては、いくらレアでも定価より値が高くついてるのは手を出さないよう気をつけてます。
(ホントに、手に入らないCDほどビックリするような高値がついてて、ビックリします)


しかし、先日、中古CDのサイトを見ていて、頭の血が一気に沸騰した作品がありました。浅川マキの『灯ともし頃』です。

ええ、買っちゃいました。これはホントにずっと探していて、高値がついてるのは買わないぜーとか言ってられない。だって、ずーーっと、商品自体がぜんぜん出て来なくて、半ば諦めていたアルバムなのです。値段、3400円ですよ。許容範囲ですよ。速攻でカートに入れました。取られてたまるかってドキドキしました。


実際に配達されたCDを手に取った時は、ささやかな感慨がありましたねぇ。ずっと探していたジャケットが自分の手の中にあるのですから。

浅川マキという人は、僕は不勉強でこれまでちゃんと聴いて来なかったのですが、ロックな音でもジャニスみたいに叫ぶわけでなく、とてもクールに歌われる。ジャズシンガーっぽくもあるしシャンソンの雰囲気もある。日本的な歌謡曲の空気もなくはない、なんともジャンルレスな印象を受けます。

このCDのライナーには、とあるお店の一室にバンドのミュージシャンを集めて、何日もひたすらセッションしながら生まれた演奏を記録していった(ジャズのレコーディングのような録り方ですね)みたいに書いてあります。そのせいか、ある種の密室感もあるし、一発録り特有の躍動感がライブ感につながる作品だと思いました。

「あなたなしで」の《川を下って行く~》の歌い出しが、何ともいなたくて、耳に残ります。つのだひろのドラムもいい。「それはスポットライトではない」で見事なヴォーカルを聴かせてるのも多分、つのだひろ。知った名前ではサックス近藤等則も吹いています。バンドのメンバーはこの当時みんな20代半ばだったとか。一番若かったのがピアノの坂本龍一で23歳だったそうです(現代音楽を志す、と紹介されてます)。

イースタンユースの吉野寿が《このアルバム一枚あれば他のレコードはいらない》と言った『灯ともし頃』。これをじっくり聴くためだけにドライブしてきました。おつかいに行きがてら遠回りしたってだけですけど、最高の気分転換ができたな。

余談ですが、ここ二週間ほど毎日車で聴いていたのはビリー・アイリッシュでしたが、浅川マキによってようやくカーステ王座から降ろされました。

グラミー賞の騒ぎで珍しく気になって買ったビリー・アイリッシュですが、個人的にこれは久しぶりの大当たり。良いです。捨て曲が一切ない。聴いて聴いて聴いて、いまだに聴き飽きません。


『灯ともし頃』を密室感というなら、ビリー・アイリッシュの密室感は浅川マキのそれに全く負けてない。こちらは自宅、全てベッドルーム・レコーディングで録ったという楽曲は、どれもシンプルで無機質な音が冷たくシリアスに響き、ビリーが目の前で囁きかけてくるような感覚に包まれます。


気だるいボーカルも魅力的で、決して朗々と歌いあげて上手さを主張したりしないけど、歌、とても上手いです。


 一般に「バッド・ガイ」のような不思議な曲がウケたのかと思いきや、アルバムをじっくり聴くと楽曲のメロディの美しさに驚かされます。この子は大したメロディメイカーですよ。そして、どの曲も3分程度で、有りがちにダラダラ長くないのが好みです。


僕はとにかくビリー・アイリッシュは《良い歌を作る》という一点で気に入りました。まだ19歳でしたっけ。すげー才能です。さすが最年少グラミー。

(訂正:18歳でした。てことはこのアルバムは17歳で発表したのか。マジか)

 

 いまのお気に入りは 「Ilomilo」良い曲だなー。

 

「Bad Guy」も、最初はただ呟いてるだけじゃんって聴いてたけど、静かなリフとか、リズムとか、本当に格好いい。《ダー》ってつい一緒に言っちゃう。詞の韻の踏み方もよくわかってるし、こういう曲をさらっと無理なく作れちゃう感覚が感心します。

 ビリー・アイリッシュは実のお兄ちゃんのフィネアス・オコネルが作曲から録音のパートナーで。となると《ビリー・アイリッシュ》って個人名であれど、チームプロジェクトといった形に近いのかしら、と想像します。それでも二人組のユニットとして活動しなかったのは、純粋に妹の才能のサポートに徹するためか、ビリー単体で推した方が世にウケるだろうという冷静なプロデュース判断か、その両方か。


お兄ちゃんもハンサムな顔立ちだから、バックにいてもさぞモテてるだろうな。

(調べたら、お兄ちゃんフィネアス・オコネルもシンガーソングライターとしてソロ活動してるようです。)




マシス