ジョン・レノンの誕生日でもある本日10月9日、佐野元春の新譜を入手しました。今の時期にピッタリのタイトルです。完全受注生産『或る秋の日』/佐野元春。やぁめでたい嬉しい。

トータルで30分弱の8曲入りアルバム。8曲のうち、4曲が配信のみで発売されていたシングルで、配信で音楽を買わない僕としたら、まさにコレを待ってました、ってアルバムです(すでにシングルを手にしていた人にしたら、新曲が少なくて物足りないかもしれませんが)。

夜勤明けの朝に手に入れて、帰ってから布団の中で聴きました(何回か寝落ちしながら)。29分と短いので、目が覚めてからも3回、4回と繰り返し聴きました。まだまだ聴ける。もっと聴きたい。
タイトル通り、しっとりと秋らしい雰囲気にアルバム全体が包まれています。一曲一曲が短く可愛らしい小品、でも内省的とでもいうか、とても身近でプライベートな匂いのするラブソングが詰まった作品群です。
既出のシングルは、当然良かった。アルバムタイトル曲「或る秋の日」はセンスの良い歌詞に美しいメロディの歌。クリスマスソングの「みんなの願いかなう日まで」は本当に良く出来てる、ちょっと出来すぎなくらいの名曲です。
ウォールオブサウンドのイントロが胸踊る「私の人生」や、元春が16歳の時に書いた歌のリテイク「君がいなくちゃ」も良い感じ。
そして待望の新曲(ラブソング)は、元春っぽくないストレートな言い回しがあったりして、オッと思いました。「最後の手紙」と「いつもの空」ではとても小さな視点で描写していて、昔の元春だったら、そこをもうひとひねり練って拡げたんじゃないかしら、って気がします。
なんとなく、今回の元春はどの歌も肩に力を入れず、自宅にて作り貯めてあったデモテープをまんま発表したかのような、そんな印象を受けました(こういう小振りな歌は元春いくらでも作れそう)。
このアルバムはコヨーテバンドが全曲演奏してますが、アーティスト表記は佐野元春のみ。つまり、《佐野元春のソロアルバム》にコヨーテ達が協力した、というニュアンスなのでしょうかね。聴くと確かに、ロックンローラーというよりも、シンガーソングライターの側面が強く出てる。
元春だってもしもロックンロールしなくなってたら、『或る秋の日』みたいなアルバムばかり作っていたかも知れないな、と、ふと思ったりしました。年齢的にもね。で、弾き語りで地方のライブハウスとか回ってたりして。
でも、こういうアルバムを作っても、《元春も歳をとって落ち着いちゃってー》と決めつけられないのは、佐野元春はコヨーテバンドと傑作(怪作)『マニジュ』を作れる人だから。ああ、元春はまだまだ得体が知れないぞ、と、この人はやっぱり変だよ、と思わせてもらえる。それって、ずっと応援してきたファンとすればとても嬉しいことです。
ちなみに、このアルバムでも一曲、得体が知れないヤツがいます。「永遠の迷宮」を聴いた時、最初こそ、これはよくわからん(つまらん)、って思ったけど、繰り返し聴くほどに、サビの《永遠の迷宮ー》でジワッと高揚するようになってきた。摩可不思議。
11月2日の窓枠で元春に会うまで、この『或る秋の日』を繰り返し聴こうと思います。『マニジュ』や『自由の岸辺』に増して、取っつきやすい作品ですし、前の二作も思わず聞き返したくなります。良いアルバムですよ。
余談。元春のクリスマスソングで締めるアルバムで、シングルがいっぱい入ってて、といえば、『カフェ・ボヘミア』をついつい思い出してしまいます。あれもちょっと特殊な雰囲気のアルバムでしたね。
余談2。以前、先だって配信のみで発売された「愛が分母」も、このアルバムに入れてくれたら良かったのにな、と日記に書きましたが、聴いてよーくわかりました。「愛が分母」は『或る秋の日』には入るところがないですね。毛色が違い過ぎます。納得です。
買って日がちょっと経ちますが、最近は浜田省吾のライブ映像も観ていました。これがとても良かった。

ファンクラブ限定のチャリティーコンサートで、省吾の70年代の作品のみを歌うといったステージです。近年なかなかステージで演奏されなかったレア曲がいっぱいで、思わず買ってしまいました。

前半が弾き語り、後半がバンドと一緒。省吾の声が凄くいい。得意?の《サビは客に歌わせる》という省エネ(手抜き)唱方も控えて、高い声を頑張って出していて嬉しかった。元キーの歌が多くて、それも嬉しい驚き。
70年代の浜田省吾のアルバムは、僕はそれほど聴き込んでないのですが、なんてポップで楽しいメロディを作ってたのかと感心しました。メッセージ性の強い現在のイメージもさながら、大したメロディメイカーなのです。
このディスクで、個人的なベストトラックは「いつわりの日々」。あと「恋に気づいて」のハツラツとした動きは、本当に買って良かったと思わせてもらえるシーンでした。ああ省吾なんてカッコいい、と一人で悶えてました。
今年は省吾、80年代オンリーのライブもやってるんですね。ぜひぜひそちらも映像作品化してほしいです。
70年代の吉田拓郎がファンにとって特別なように、80年代が10代だった僕にとって、佐野元春と浜田省吾は2大ヒーローでした。こと85年、86年の頃、邦楽で最もヒップで格好良かったのは佐野元春で、元春を聴くことが若者のステイタスな時代でした。そして浜田省吾も然り、誰もが浜省のコンサートチケットを取りたくてやっきになっていたのです。
10代だった僕が40代も終わろうとする年に、二人とも現役でまだ頑張ってくれていて、こうして新しい作品を手に取れる。元気な先達に感謝しかない。