稀代のヴォーカリストでハモンドオルガンの名手、スティーヴ・ウィンウッドを僕が聴いたのは、確かベストアルバムをレンタルで借りて聴いたのが最初でした。

その時は正直、あまり面白いと思えなかった。「青空のヴァレリー」って曲だけはカッコイイと思ったけど、ヒット曲の「ハイアー・ラヴ」とかぜんぜんピンと来なくて、洒落てるけど好みじゃないなぁって。


数年後、次はトラフィックのファーストに手を着けてみた。でも、こちらも当時はよく解らなかったです。サイケ色の強いポップスで、これはマァそれなりに楽しめるけれども、聴いててあまり痛快な音楽じゃないぞ、って印象。

その辺りでもう僕は、スティーヴ・ウィンウッドはどうでもいいかなーって思い始めてたのですけど、ある時、伊藤銀次のコラムで、

《スペンサー・ディヴィス・グループでのスティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルを最初に聴いた時は引っくり返った。16才なのにレイ・チャールズにも負けない表現が出来るとは!》

なーんて書いてるのを読んじゃったものだから、銀次がそこまでゆうなら、とスペンサー・ディヴィス・グループのCDを買っちゃうのです。

そして、僕も引っくり返った。「ギミ・サム・ラヴィン」「アイム・ア・マン」とご機嫌な良い歌ばかり。どの曲でも唸るようなハモンドを16才のスティーヴが弾きまくってます。

そして何よりヴォーカルですよ。弾けて弾けて、どこかへ飛んでいってしまうかにフラッシングするヴォーカルの痛快なこと!その上に作曲の才能も凄いときては、こりゃとんでもない16才だ、と。

そうなると、今までピンと来なかったトラフィックやソロ作品も改めて好きになってきたのです。早熟の天才は大人になってからもやはり凄かった。特にソロアルバム『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』は好きな曲ばかり。音は土の香る如くアーシー、ヴォーカルはもちろんご機嫌でハマってしまったのです。


2003年に発表した『アバウト・タイム』ってアルバムがまた、その当時の僕の気分にもハマって、本当によく聴いたものです。今でもこれが一番好きかもしれない。スティーヴのソウルフルな歌声と大地の脈動のような温かい音を繰り返し聴いていると、音と声に包まれて、身心の疲れが消える思いがしたものです。

そうやって聴いていくうちに、スティーヴはオルガンの名手のみならず、ギターもかなり上手なのを知って驚きました。最初は、ギター弾けんだ?って程度の認識だったけど、これがなかなかのモノなのです。早弾きこそやらないけど、ツボを押さえた小気味良い演奏をされてて、すごく好感が持てる。『ナイン・ライヴス』ってアルバムではスティーヴのあったかいギターが沢山聴けます。

それでも、ブラインド・フェイスの再結成コンサートで、エリック・クラプトンの横でギターを弾いている映像を観た時は、いくら盟友とはいえ、ギターの神様の横でねェ、よく弾けるな、大した心臓だ、と思ったものです。クラプトンも認める腕前ってことで良いのですかね。

昨年発売されたスティーヴ・ウィンウッドの二枚組ライブアルバムを聴いています。選曲はスペンサー・ディヴィス・グループからはもちろん、トラフィック、ブラインド・フェイス、ソロアルバムからのヒット曲と、これぞベスト中のベスト。

オープニングにて、スティーヴの踊るようなオルガンフレーズとリズム隊の絡む瞬間、そこから1曲目「アイム・ア・マン」に流れ込む瞬間の恍惚感、クーッ堪らんって気分になります。たった五人の編成でこのふくよかな音はどうでしょう。

『アバウト・タイム』や『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』からのナンバーを取り上げてくれてるのも、僕としたら嬉しいところです。二枚組全23曲、ウィンウッドたっぷりって感じですが、演奏がとても洒落ていて耳にモタれないので、後味爽快。何杯でもお代わりできそう。

少し風邪気味の身体に、ソウルフルな歌声とファンキーなオルガンの音が染み渡ります。癒されるナァ。今日明日としっかり休んで、体調を戻します



マシス