
イラストレーター&コラムニストの牧野良幸さんの、10代の頃からの音楽体験を自分の青春期と絡めて綴ったシリーズ本を購入しました。本作が三冊目にあたります。
これ、シリーズ一作目からずっと好きで買ってまして、本屋で見つけて衝動的にレジへ向かってしまいました(本当は「ブルージャイアント」の新刊を買いにきたのに)。
牧野良幸さんのイラストが好みか、と聞かれたら、正直そうでもない。あまり上手くないなぁ、と素人感想ながら思ってしまう。でも、この本に書かれた内容はイラストも含めてメチャメチャ胸に伝わってくるのです。
それは、牧野良幸さんが描く青春記には、おそらく誰にも心当たりがあろう恥ずかしいことが照れず隠さず、全て描かれているからだと思う。情けないこと、だらしないこと、バカみたいなこと下らないこと、僕も確かにこんな10代の心境を持って過ごしていた、とニヤリとしてしまう。
そして、毎回選ばれる思い出の音楽は、ジャンルが本当に幅広い。邦楽ポップス、洋楽、クラシック、ジャズと、そんなに好きになれるものかと感心してしまう。でも聴き方はあくまでも評論家風のソレでなく、偉そうな所が何もないのが良い。
どの感想を読んでも、《そうそう、わかる!そうなんだよね》って思わず膝を打ちたくなる文章が溢れているのです。【一日一針】とか、僕もつい試してみたくなる。
例えばクラシック等の高校生にはちょっと難解(?)な音楽に出会った時、牧野少年の聴き方は、【一日一針】。つまり、わからなくてもとにかく一日一回は針を落として聴く。どんなに退屈でも最後まで聴く。すると、ある日、ある楽章に好きなフレーズが出来て、次に聴く時には別のフレーズが好きになって、と、次第に楽しめるようになる、のだそうです。なるほどねぇ。
シリーズ一作目が中学、高校生の頃の思い出話で、二作目は卒業後から二十歳前後まで(アルバイトをやりながら絵の勉強)。そして今作は少しずつイラストの仕事をもらうようになった。なんか読んでいて感慨深いモノがあります。
音楽コラムとしたなら、内容は一作目が一番充実してる。やはり10代、学生時代の時がもっとも音楽を吸収できるモノだからでしょう。聴く音楽の量が年代を経て減っていくのは仕方ないことです。
三作目の今作でオッ!と思ったのは、佐野元春との仕事がついに描かれていることです。そう、牧野さんは元春の『エレクトリックガーデン』の挿し絵、そして「クリスマス・タイム・イン・ブルー」のジャケットを手がけてるのです

今、あらためて「クリスマス~」のジャケットを見直して、やはり変な絵だなぁと思います。元春はエレクトリック・ガーデンで牧野さんの絵を気に入ったとかで、何か感じるモノがあったんでしょうね。
コラムではサラッと書かれているけど、当時、四畳半のアパートに住んでいた牧野さんの部屋に元春がやってきて、「クリスマス・タイム・イン・ブルー」の仮ミックスのテープを聴かせたと言うシーンが印象深いです。
《佐野さんが俺のカセットデッキに触ってる!》って牧野さんが心でつぶやくとこ、いいですよね。羨ましい!
マシス