僕が矢野絢子さんの名を知ったのは、例によって友部正人さんの著書『ジュークボックスに住む詩人』から。ずいぶんこの本から知らない歌い手さんを教えてもらってます。THE ENDや双葉双一を知ったのも同書から。影響、受けています。
 
まるで息を吸って吐くように自然にピアノを弾くなぁ、って思ったのが僕の矢野さんの印象。飾らない歌声はあけすけで、ザラリと人の心を撫でます。独特の歌世界も同じく、軽いBGMとして聴き流されることを決して許さない、ズシンとした重たさがあります。これほどに切々と訴えかける熱量の多い音楽は、こういうのが好きな人には堪らないだろうな。
 
友部さんの本ではデビュー曲「てろてろ」を紹介していましたが、1stアルバム『ナイルの一滴』で僕が真っ先に反応したのは、12分を越える大作「ニーナ」でした。
 
実は僕、いつか椅子の歌が作ってみたいと長いこと切実に思っていたのですが(どうでもいいことですが)、「ニーナ」に軽く先を越されてました。そう、「ニーナ」は椅子をめぐる様々な人たちを歌った長編物語なのです。
 
12分とたいへん長い楽曲ですが、どうぞ一度、この歌絵巻をストーリーを追って、ジックリと聴いてみてほしいです。
 
「ニーナ」

 
12分も聴く時間がないわ、って方は、まず「てろてろ」の方をオススメします。「てろてろ」を聴いて、矢野絢子、只者じゃないって思ったら、時間のある時に「ニーナ」へ向かってみてほしい。
 
「てろてろ」

 
「てろてろ」の完成度に比べて、「ニーナ」の歌の構築はどこかたどたどしい印象を受けます。例えば、2時間映画くらいの大きな物語が最初に考えてあって、その物語のダイジェストを12分にまとめたような感じ。歌詞の言い回しはやたらゴツゴツしているのですけど、そんな不器用さ、無骨さを含んだ上で、「ニーナ」は素晴らしいです。言い回しが無骨だだからこそ、あの箇所が抜群に活きるとすら思う。ああー来る!来る!とわかっていても落涙してしまう。
 
来週、エスケリータ68にて、矢野絢子さんの生の歌を聴いてきます。「ニーナ」聴きたいけど、長いからやらないかな。やったら嬉しいな
 
 
何か彫ってあるよ、母さん
ねえ、素敵だわ
きっとこの椅子の名前だわ
私と同じ名前なのね!
 
(「ニーナ」/矢野絢子)
 
 
知らないとこに行きたいな
嘘だよ 本当はね
ここにいたい
ここにいたいんだ
僕はまぬけな顔をしてるだろ
泣き虫 弱虫で
おまけにへっぴり腰で
てろてろ おかしいね
 
(「てろてろ」/矢野絢子)
 
 
 
マシス