
先日のエスケリータ68の夜のことを、もう少し書かせて下さい。
終演後、すぐには帰らずに僕は、だあこえさんと喋ったり、ボーッとしながら一人減り二人減りと、エスケリータの店内が静かになっていくのを眺めていました。
置きっぱなしになっていた友部さんの歌詞カードを指差して、“手書きかワープロか気になる”と言って、確認しに行くだあこえさん。
(僕)"どうでした?”
(だあこえ)“ワープロ!横になんか変な譜面があった”
てな会話をしてた。
その間、友部さんは店の外で、CDを買ったお客さんにサインをしていました。
で、そろそろ帰ろうかな、と思って立ち上がると、友部さんが店内に戻ってきた。物販のお客さんが落ち着いたのでしょう。
お疲れ様でした楽しかったです、と声をかけて、そのまま店を出ようとしたのですが、ふと、思いついて、
“スミマセン質問があるんですけど、良いですか?”
と話しかけてしまいました。
(僕) “何年か前にライブで聴いた歌で、タイトルがわからない歌があるんです”
(友部) “はい”
(僕) “《おかまいなしの音楽は~》って歌なんですけど”
(友部) “ああ、「地下鉄の音楽」ですね”
(僕) “「地下鉄の音楽」!ああ、ずっと気になっていて、どのアルバムに入ってる曲なのか探してたのですけど、タイトルがわからなくて。ありがとうございます”
(友部) “(微笑みながら)探してみてください”
短い会話でしたが、積年のプチ疑問が解けてホッとしました。
(「地下鉄の音楽」はアルバム『休みの日』に収録されてます。僕、持ってるくせに気づいてなかった)
それでも、フレーズを聞いて友部さん、タイトル即答でした。全く迷う様子がなかった。さすがの記憶力ですね。
店の外に出ると、プロモーターの中村さんが、“宝物にサイン貰っちゃった”と、「もう春だね」のEPを自慢してきました。負けじと僕も先ほどの、“おかまいなしの音楽は~”のエピソードを話しました。すると、
“その歌は友部も気に入ってるのよ、よく歌ってるもの”
と、ユミさん(友部さんの奥様)が話しかけてきてくださったのです。
ユミさんは友部オフィスの代表で、友部さんの音楽プロデューサーでもあります(写真家としても著名な才人です)。お二人はいつも一緒に行動されていて、友部さんのライブでは毎回お見掛けするのです。
しばらくユミさんと中村さんがお話をするのを、僕とだあこえさんは横で聞いてて、そのうちに、ユミさんから
“一緒にカレーを食べましょうよ”
とのお誘いを頂いてしまった。聞けば、友部さんと今からエスケリータの特製カレーを食べるとか。
イヤイヤ恐れ多い。もう帰りますから、ぼく家が遠いもので、と遠慮したのですが、“家なら私の方が遠いわよー”とおっしゃられて(そりゃそうだ)、だあこえさんと、“どうするよ?”と小声で話した結果、こんな機会はめったにない、ということになり、再びエスケリータ店内に戻ったのです。
同じ部屋の、隣のテーブルに、さっきまで歌っていた友部さんがいる。
喋れませんって。
確かに、めったにない機会ではあるのですよ。大好きなシンガーソングライターがすぐ隣でカレー食べてて、そんなところへ僕がファンのミーハー丸出しで喋ったら、場違いでしょう?
仮にこれが、もし佐野元春と食事のテーブルを挟むことになったら?何を話せる?無理です無理。その場にいるだけでラッキーって思っちゃう。
ステージを降りた友部さんはたいへん物静かで、自分から会話を振るような様子は見せません。テーブルではユミさんと後藤夫妻(エスケリータ店長&奥様)が主に喋って、友部さんはそれを聞いて相槌をうっている。僕は珈琲を、だあこえさんは缶ビールを飲みつつその様子を伺う、って図です。
どんな話をしてたか。他愛のないことでしたけど、印象的な言葉の断片を抜粋しますと、ユミさんの一言
“この世界でやっていくにはね、音楽の才能なんていらないの。そんなことより、心が強いこと。この人(友部さん)なんて、怒らないし、嫌なことも次に日には忘れちゃう”
“ポジティヴなフォレスト・ガンプ”とユミさんは友部さんを称してたのが可笑しかった。
中村さんが友部さんに、“(高田)渡さんが亡くなって、もう10年くらいになりますか?”と聞いた時、“そのくらいかな”と友部さんが答えて、そのままボ・ガンボスのどんとの話になり、おもむろに友部さん、
“死んじゃえば、みんな先輩だよね”
と言ったのです。
コレを聞いて、確かに、と思いました。“人生という課程”を先に終業した、という意味で、死者は亡くなった年齢に関係なく、僕らの先輩という、こういう発想をするのって、いかにも友部さんらしいですよね。聞けてよかったな。
エスケリータ68には、来月にまた訪れます。矢野絢子さんを観に来ます
オープニングアクトが我らの、だあこえ&たかぼう!楽しみです。だあこえさん頑張ってくださいね
マシス
