前日記に書きました『氷菓』は“日常の何気ない謎”を解くミステリーですが、“日常の謎”と言ったら、なんといっても北村薫でしょう。
多くのファンの方々と同様、僕も北村薫は大好き。デビュー作の『空飛ぶ馬』を読んでハマってしまい、“円紫さんと私”の連作短編シリーズは欠かさず読んでいます。
《水を飲む如く本を読む》読書好き大学生の“私”が、とにかく可愛い。こんなコ実際にいないよってくらい良いコです。その彼女を父の如く見守り、彼女の疑問に鮮やかに答える落語家“春桜亭円紫”さんが素敵すぎる。“私”とその仲間達に会いたくて、新作を心待ちにしたものです。
美しい文章、魅力的な登場人物、謎解きの面白さ。何より、血なまぐさい事件が起こらない本格推理小説ってのが、小気味良いです。優れたミステリーなのはもちろんのこと、どの話も心から“良い話を読んだー”って思えわせてもらえるのです。
北村薫の登場後、日常の謎を扱った“北村薫っぽい”ミステリーを次々と見かけましたし、影響力が大きかったのでしょうね。
ちなみに、僕が詩人の西脇順三郎を知ったのも北村薫の著書のおかげです。諸尼九の俳句を知ったのも、落語に興味を持つようになったのもそう。
で、先月、なんと20年ぶりに“円紫さんと私”シリーズの新作が出ました!
『太宰治の辞書』/北村薫
なんと作中設定も、前作『朝霧』から20年経過してる!びっくりですよ。
僕は太宰の短編「女生徒」は未読ですが、面白そうです。太宰を始めたくさんの本からの引用が多くて、いままでのシリーズと比べるとちょっと読みにくい?でも、久しぶりに私と円紫さんに会えて嬉しかった。シリーズ読み返したくなりましたね。
『空飛ぶ馬』
デビュー作にして傑作。円紫さんと私登場!「織部の霊」「砂糖合戦」「赤ずきん」他、名短編揃い。未読の方は是非読んでみて。この本をまっさらな気持ちで今から楽しめる人は幸せですよ。ホントに
『夜の蝉』
前作に勝るとも劣らぬ素晴らしい名短編集。この作品で日本推理作家協会賞を受賞。大好きな短編「六月の花嫁」収録。表題作「夜の蝉」も良いです。必読!
『秋の花』
初の長編。そして、初の殺人事件?切なくも綺麗な物語。本当にいい話なのです。ラストの一行がもう、泣ける。熱い涙がこみ上げます。超必読!
『六の宮の姫君』
芥川の作品を巡る謎を解く。個人的にこれが一番読み返したくなる本です
『朝霧』
“私”もついに大学卒業。この本が出た時点ではシリーズ最終章と思ってました
『太宰治の辞書』
「花火」は20年ぶりの近況報告って感じでしょうか。続く「女生徒」からエンジンがかかってきます。連作短編なのに円紫さんが一話しか出て来ないのはちと淋しい。けど、歳を重ねれば、昔のように気軽に会えないってのもリアルです。二度と読めないと思っていたシリーズ、私や円紫さん、正ちゃんに再会できて嬉しい。
こうして表紙を比べると、挿絵の女の子がちゃんと成長してますね。描いたのは漫画家、高野文子さんです。
マシス
