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WOWOWにて、尾崎豊の特番を二本観ました。

一つは尾崎のヒストリードキュメント。一つはBIRTHツアーの初日の蔵出しライブ映像。

観る前はライブ映像の方が楽しみでしたが、意外に内容にグッとこない。過去に最終日の映像を何回も観ていたせいか、比べると最終日の方が遥かに出来が良く思えてしまう。

それぞれの曲の演出が初日はとてもシンプルで、ああ、最終日までにいろいろ工夫して足していったんだな、ってのが分かりました。


尾崎の声も叫べど出切ってない感じ。でも中盤の「きっと忘れない」みたいな歌は最高に良い声です。叫ばずにずっとこの声で歌ってほしいとか考えちゃう。落ち着いた曲だけを歌うツアーとか、観てみたかった。生きていたら可能性あったかな



ドキュメントは今更新鮮味もなかろうと思っていたけど、これがなかなか面白かった。須藤彰はもちろん、藤井フミヤ、町又寛二、小山卓司と珍しい方からのコメントは興味深いものでした。


尾崎が亡くなったのは僕が21歳の時


僕はよく言われる《尾崎教》の信者ではないです。が、あのカリスマ性も含めて、尾崎豊の音楽を愛聴してました。

尾崎豊はスマートじゃない、という意見には僕も賛成。でも、格好悪いところをみても、それをダサいとは別に思わない(格好悪い部分は確かに、と僕も思うけど)。



稚拙で陳腐なところ、逆に飛び抜けて優れた表現、何よりあの風貌と歌声に憧れました。僕もあんな声になりたかった。


僕の中では常に佐野元春がトップでしたが、元春は最高、達郎最高、浜省もいい、そして尾崎もいいのです。学校帰りの自転車の上で「はじまりさえ歌えない」を歌いながら河原の堤防を走った、なーんて思い出も、あったりするのです。


高3の時にニューヨーク帰国後のツアーを観て、一応生の尾崎を体験することができた。あまり評価の良くないツアーだったようですが、十分に楽しかった。観ておいて良かったと今は心から思います。


橘いずみの「失格」は尾崎の女性版と呼ばれたように、《尾崎っぽい》って言い方が通じちゃうのがすごい。すでに一つの音楽ジャンルです。尾崎なくして本田美奈子の「One Way Generation」もないし、その後のミスチルやバンプのジャンル基盤の礎になりました。

そう、ミスチル桜井くんだって絶対に尾崎を聴いていたと思う。浜田省吾、佐野元春、ECHOESのファンだと公言しておいて尾崎を聴いてないはずないのです(好みの順列はあるとしても)。



正直、尾崎は全作品を通しての名作率は意外に低いと思う。そのかわり当たりの破壊力がデカイ。


尾崎の名作、を思いつくまま挙げると、


「SEVENTEEN'S MAP」


「15の夜」


「I LOVE YOU」


「僕が僕であるために」


「卒業」


「SCRAMBLIN' ROCK'N' ROLL」


「シェリー」


「DRIVING ALL NIGHT」


「FREEZE MOON」



もう一つ知名度の下がったところの名曲では



「はじまりさえ歌えない」


「OH MY LITTLE GIRL」


「愛の消えた街」


「BOW!」


「存在」


「路上のルール」


「失くした1/2」


「FORGET-ME-NOT」


「太陽の破片」


「街路樹」


「永遠の胸」


「誕生」


「闇の告白」



この辺りでしょう。



僕の個人の好みで好きな歌ベスト3を挙げると、



「誰かのクラクション」


「黄昏ゆく街で」


「群衆の中の猫」



この後に「街路樹」が来るかしら



再三言ってますが、僕の一番好きな歌は「誰かのクラクション」です



“ピアノの指先のような街の灯りの中”とか“一緒に探してたものならあった気がする”とか、もう、美し過ぎて震えます

万が一、尾崎に文句をつける輩が現れるても、僕はこの歌と「黄昏ゆく街で」の素晴らしさを武器に反論できます。メロディと散文詩の美しさ、危うさ、すべてが先鋭的で、永久不変のものです。


アルバム『十七歳の地図』『回帰線』は世間的に《THE・尾崎豊》な作品集で、歌詞も明確で整合性があり、声も良く出ています。

でも、1st、2ndに比べてどこか散漫な印象の3rd「壊れた扉から」に好きな曲が多い。尾崎の最高傑作は「Freeze Moon」だと思います。


“夜はいつでも凍り付いていて~”のフレーズ、あそこが最高です。


やはり散文詩が好きなんすね。散文ったってデタラメで良いわけなくて、「誰かのクラクション」「路上のルール」「Freeze Moon」「太陽の破片」あたりのさじ加減が最高なのです。


散文詩でギリギリ“良い曲”の範疇に踏みとどまっているのが「FORGET-ME-NOT」「街路樹」とかで、「彼」や「核」、「COLD WIND」辺りはデタラメに振れちゃってる。そんなトホホさも良いのですけど



でも、声でいうならアルバム『街路樹』で聴けるヴォーカルが、透明感と太い強さのバランスが良くて好き。『誕生』まで行くと力みすぎ。



ドキュメントでは、10代が終わり、20代になって何を歌うべきか?というテーマに尾崎は終始苦悶していたと語られますが、


アルバム『壊れた扉から』と『街路樹』がその模索の過程で、『誕生』が一応の回答みたいに聴こえます。


特に「永遠の胸」と「誕生」の二曲は、正直これを聴いた時、僕は“ここまで言い切っちゃってしまったらもう、この後何も言うことないじゃん”と、心配になりました。


案の定、その後は再び“苦悶する尾崎”になってしまって、なんて不器用なアーティストなんだろう、と気をもませてくれたのです



昨夜は何の気なしに鼻歌を歌っていて、はて、何の歌だったか?と一瞬わからなかったのですが、すぐ「街角の風の中」とわかりました。これは稚拙な方の尾崎ソングですが、好きな歌なのです





マシス