霧の中のハリネズミ  | En Hommage à Claude François

En Hommage à Claude François

内向的なのに野心家で、神経質で完璧主義者なのに生き方が下手。優しさに満ちているのに激情を秘めて孤独。嘘つきなのに愛らしい。「芸人」と「詩人」の二面性の中で揺れながら進むあなたに、わたしの心臓は共振し、初めて見たときからもうずっと震えが止まらない。

 

ハリネズミ(声:マリヤ・ヴィノグラドヴァ)と、その友人の小グマ(声:ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ)の物語である。2人は毎晩会い、ビャクシンの小枝を炊いて温め、子グマのサモワールで淹れた茶を飲んでいた。2人は茶を飲みながら語り合い、星を数えていた。ある日ハリネズミは、子グマにラズベリーのジャムを持って行こうと決めた。その道中、森を抜けたところで、美しい白い馬が霧の中に立っているのを見つけた。霧はとても濃く立ち込め、ハリネズミ自身の足元すら良く見えないほどであった。この濃い霧の中で馬が眠りにつけば、溺れてしまうのではないかと思われた。ハリネズミは、しばし霧の中を探検することにした。
ハリネズミが探検して回る、霧に包まれた世界は、恐ろしい姿をした物や生き物たち(ワシミミズク、ガ、コウモリ)に遭遇することもあり、しかしまた親切で善意あふれる生き物たち(カタツムリやイヌ、そして川の中の未知の「何か」カモノハシ、映画では魚)も住む、静寂とかすかな音、暗闇、そして背の高い草に覆われた、幻想的な世界であった。
フクロウはハリネズミの後を追って唐突に近くに姿を現し、一度鳴き声をあげて再び姿を消す。ハリネズミはこのフクロウを異常者(псих)と呼んだ。ハリネズミはこの出来事に怯えたが、なおもその好奇心は彼に探検を続けさせた。大きなイヌが姿を表したときもとても驚いたが、イヌは彼のジャムを取って来てくれたのであった。ハリネズミはその後、川に落ち、下流に流されながらこのまま溺れていくのだろうかと思ったとき、水中から未知の「何か」(大きな魚)が彼を助けてくれた。彼はハリネズミに静かに語りかけた。
ハリネズミや子グマは人懐こく友好的な性格であり、それに対してフクロウは荒っぽく、ハリネズミがこの世界に対して感じた美しさを分かっていない。

 

 ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」予告編  

 

Hedgehog in the Fog [Yuriy Norshteyn, 1975] HQ  

 

Ёжик в тумане  

 

あらゆる時代、民族にとって最良のアニメーションと讃えられる「霧の中のハリネズミ」は今から40年前、「ソ連アニメ同盟」のスタジオで生まれた。 

ソ連アニメ同盟」が「霧の中のハリネズミ」を発表したのは1975年。アニメのモチーフとなったのは作家セルゲイ・コズロフの作品。独特の雰囲気と特殊効果を出すため、ユーリー・ノルシュテイン監督とカメラマンのアレクサンドル・ジュコフスキーが使った手法はコンピューター・アニメ時代にはあまりにもナイーブととられかねないものだった。 

 

ところが作品は傑作に仕上がり、2003年、あらゆる時代、民族にとって最良のアニメーションとしての賞を受賞する。 

 

ハリネズミを描いたのは、この映画で全部の絵を担当し、ノルシュテイン夫人でもあるフランチェスカ・ヤルブソヴァ。曲はノルシュテイン監督のスケッチにあわせてミハイル・メエロヴィチによってほぼ1コマずつ書き上げられた。作曲と6分間の録音に2ヶ月が要された。 

 

アニメーションの吹き替えは名俳優らが担当。アレクセイ・バターノフ(ナレーション)、マリヤ・ヴィノグラードヴァ(ハリネズミ)、ヴャチェスラフ・ネヴィンヌィ(こぐま)。

 

 アニメーション映画「霧の中のハリネズミ」はどうやってできたか、インフォグラフィック、MIA「ロシア・セヴォードニャ」制作。