ガスが足りないらしいです。ガスと一口に言っても料理やお湯を沸かす時に使用する都市ガスやLPガスではなくて、工業用ガスと言われるものが足りない様子なのです。工業用ガス?何それ?と思うかもしれませんが、酸素や水素、窒素やアルゴンなどなど、燃料効率を改善させたり、あるいは過度な燃焼反応を制御したりと、鉄鋼や化学、あるいは半導体の製造には絶対に必要なガスなのです。だから、ガスが足りなかったり高騰したりすると、半導体が作れない、自動車生産もまたまた抑制??な事態に陥るわけです。
工業ガスの原料って基本的には空気です。空気を圧縮して酸素・窒素・水素、アルゴンなどに分離するので、原料コストはただ。圧縮するために莫大な電力を消費するので、コストの大半が電気代と輸送費(ローリーとかシリンダー)という、かなり尖ったコスト構造なのです。よって、最近の電力料金上昇は工業ガスのコストをかなり圧迫しています。この空気を分離して作られるセパレートガスと言われるものの中心は酸素であって、これを大量に消費しているのが鉄鋼業。そう、鉄を溶かすには酸素を吹き込まないといけません。ところが、鉄鋼生産がどんどん減っているので、酸素の消費量も落ちてしまい、結果として同時に分離されるアルゴンなどの希ガス生産も減少。足りなくなるわけです。
空気から抽出できないガスもあります。炭酸ガス(ドライアイスの原料)などは、石油精製などのついでに出てきます。これもガソリン消費の減少とともに、石油会社がどんどん工場を閉鎖。足りなくなっています。最近では毎年夏になると「ドライアイスが足りねえ、どうすっべ?」な議論が起きます。グレタさんはアイスを食べないで下さいね、と毎年夏になると思ったりします。
そして、工業的に生産することが難しいのがヘリウムやネオン。えっ、変声になれなくても、歌舞伎町の照明が減ってもいいやん?いやいや、半導体の生産に必要なのですよ。ヘリウムというのは天然ガスが出る一部の井戸に含まれていて、これがUSとカタール、ロシアに偏っているのですが、ロシアは工場が爆発してしまった上に経済制裁、カタールのプラントも止まっていて、USの工場もトラブルだらけ。全然足りないのです。ネオンに至っては世界生産の8割がウクライナに集中。これは大変だ。
温暖化対策って崇高で大切な理念ではありますが、経済の仕組みを大きく変えるわけなので、一面だけを見て狂信的に推進してはダメだよなあとしみじみ思います。複雑な連立方程式なわけですから。ESG十字軍の人々に対しては、どうか工業ガスのことも勉強して下さいと思います。今日もぼちぼち頑張ります。