朝、ホテルの窓から雪景色を見た。
「マジかよ」だれもがそう思っただろう。
春盛りの4月21日のこと。
サクラと菜の花が同時に見られるのがウリの長野マラソン。
ことしはなんと雪の開催だった。
雪の舞う中、スタート。
みんな勇敢に走った。
ぬかるみや水溜りでは急ブレーキだったり、進んだり。
シューズを濡らしたくないので右へ左へのフットワークもきょうはOK。
だけど、ときどきシャーベット状の雪を蹴散らして突破していく人もいて、結局シューズはびしょぬれ。
気づけばいつしか雪はやみ青空が。
イソップ物語「北風と太陽」ではないが、多くの人がビニール袋を脱ぎ捨てた。
するとどうだろう。
30キロ過ぎからは強烈な北風。
それもスキー場に吹くような冷たい風。
桜も積雪(写真は22日の信濃毎日新聞)
これが遮蔽物がない堤防上のランナーを襲うのです。
ランシャツを波打たせる強さで。
最初は追い風でした。
しかし、コースが反転してからはどっちに曲がっても向かい風。
これって神様のいたずら? と思った。
「リタイアしよか」
多くの人の脳裏に浮かんだことだろう。
しかし「雪に負けた」というのは口惜しい。
みんな意地になっていた、と思う。
「神は乗り越えられない試練は、決してお与えにならない」
という言葉もある。
ここまで来たら負けたくない。
そしてゴールにたどり着いた。
タイムは昨年より1時間近く悪い。
悪天候のせいだけじゃない。衰えもある。
「これを”最後の長野”にしよう」レース後半、心に決めたから完走できた。
着替えを終え更衣室を出るとき、ボランティアのご婦人の言葉が胸に突き刺さった。
「来年もまた来てね」
制限時間ぎりぎりでゴールした、どうしようもないランナーに。
思いがけない一言。
「これで最後」の決心が一瞬にして揺らいでしまった。
