30キロ地点のスペシャルドリンクを楽しみに走った。
「缶コーヒー」と「アミノゼリー」をスタート前に預けておいた。
そろそろ水やスポーツドリンクに飽きて、のどが違った味じゃないと受けつけなくなっていた。
国道を直角に曲がったところがスペシャルドリンクコーナーだった。
係員が親切に手渡しでくれた。
「ありがたい」と思った瞬間。
すぐ隣が、豪華なエイドステーションであることに気づいた。
りんごジュース、オレンジジュース、一口おにぎりなど充実した品ぞろえだ。
「なんてこった」
どっちか一つでいいよ、もったいない。
だれもがそう思うはずだ。
おにぎり、オレンジジュースをもらい、自分のドリンクは温存した。
再び走り出したが、両手のマイドリンクが邪魔。
すでにワッカ原生花園に入っていた。
国定公園に捨てるわけにもいかない。
なんとか次のエイドまで持ち運び、氷で冷やしてぐいぐい飲み干した(ゼリーは捨てた)。
初めて来た原生花園。
原色の花々が異様に美しかった。
それとは裏腹に疲労はピークに達していた。
スタート前に聞いたように、一番きつい。
「地獄とは、このような美しいところではないか」などと妄想した。
歩いたり、走ったり、咳き込んだり。
前へ、前へ。
で、何とか「ワッカ折り返し」を走りきり、ゴールが見える「花道」にたどり着いた。
トランペットの響きが聞こえた。
「お疲れさま」の声援が聞こえた。
思わず、顔がぐしゃぐしゃになった。
泣きたいけど、水分がないのか、涙は出てこなかった。
ゴール。
6時間16分。
意地だけで走り抜いた50キロ。
からだも胃腸も限界だ。
メダルをかけてもらった直後、そこにへたり込んだ。
(完)