クリスティ イエローリバー | またしちのブログ

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幕末史などつれづれに…

『イエロー・リバー』は、イギリスのバンド・クリスティのデビュー曲として1970年4月にリリースされ、本国イギリスで1位になったほか、日本をはじめ世界中で大ヒットしました。・・・まあ、僕がこの曲を知ったのはだいぶあとになってからなのですが。

 

 

 

 

この『イエローリバー』が発売された経緯は少し変わっていて、もともとこの曲は、伝説のデッカ・オーデションでビートルズを負かしたことで知られるベテラングループ・トレメローズの新しいシングル候補曲としてジェフ・クリスティが作曲したもので、70年初頭にトレメローズによってレコーディングされました。

 

 

しかし当時のトレメローズは、メンバー自身の作曲による最新シングル『コール・ミー・ナンバー・ワン』がヒットしており、次のシングルもオリジナル曲にしたいと考えていたため、『イエローリバー』をシングルとして発表することは見合わせることになりました。しかし、この曲をこのまま埋もれさせてしまうのは惜しいと考え、トレメローズがレコーディングした演奏トラックに、ジェフ・クリスティ自身の歌をオーバーダビングして彼自身のデビュー曲とすることにしました。

 

 

またデビューに際してジェフ・クリスティのソロではなくバンドとしてデビューさせようということになり、ジェフはベースを担当し、他にトレメローズのメンバー・アラン・ブラックリーの弟であるマイク・ブラックリーがドラムスを担当、マイクの古いバンド仲間であったヴィック・エルメスがギター担当となり、バンド名はジェフの名前をそのままとってクリスティとしました。

 

 

・・・とはいえ、前述のとおりシングルとして発売された『イエローリバー』はジェフのボーカル以外はコーラスも含めすべてトレメローズによるレコーディングだったのですが。

 

 

※.クリスティ版『イエローリバー』

 


 

 

 

 

 

※.トレメローズ版『イエローリバー』

 

 

 

 

Yellow River

 

So long boy, you can take my place

Got my papers, I got my pay

So pack my bags, and i'll be on my way

To Yellow River

 

Put my gun down, the war is won

Fill my grass high, the time has come

I'm goin' back to the place that I love

Yellow River

 

Yellow River, Yellow River

Is in my mind and in my eyes

Yellow River, Yellow River

Is in my blood, it's the place I love

Got no time to explanation

Got no time to lose

Tomorrow night, you'll find me sleepin' underneath the moon

At Yellow River

Cannon fire lingers in my mind

I'm so glad that I'm still alive

And i've been gone for such a long time

From Yellow River

 

I remember the night were cool

I can still see the water pool

And I remember the girl that I knew

From Yellow River

 

Yellow River, Yellow River

Is in my mind and in my eyes

Yellow River, Yellow River

Is in my blood, it's the place I love

Got no time for explanation

Got no time to lose

Tomorrow nights you'll find me sleepin' underneath the moon

At Yellow River

 

Yellow River, Yellow River

Is in my mind and in my eyes

Yellow River, Yellow River

Is in my blood, it's the place I love

 

 

【意訳】

 

あばよ相棒、僕の場所を使ってくれ

書類を手にし 給料ももらい

荷物をまとめて僕は行くんだ

イエローリバーへ

 

銃はもういらない 戦争に勝ったんだ

祝杯を上げよう その時が来たんだ

僕は帰れるんだ 愛する町イエローリバーへ

 

イエローリバー イエローリバー

僕の心の中に 僕の瞳の奥に

イエローリバー イエローリバー

僕そのもの 僕の愛する場所

説明を聞いてる時間はない

グズグズしていられないんだ

明日の夜にはイエローリバーの月明かりの下で眠るんだ

 

砲火が脳裏に焼き付いている

でもありがたいことに僕は生きている

もう長いこと帰っていないんだ

イエローリバーに

 

夜の寒さを思い出すよ

遊泳池が目に浮かぶよ

そして女の子たちを思い出すよ

イエローリバーの

 

イエローリバー イエローリバー

僕の心の中に 僕の瞳の奥に

イエローリバー イエローリバー

僕そのもの 僕の愛する場所

説明を聞いてる時間はない

グズグズしていられないんだ

明日の夜にはイエローリバーの月明かりの下で眠るんだ

 

イエローリバー イエローリバー 

僕の心の中に 僕の瞳の奥に

イエローリバー イエローリバー

それは僕そのもの 僕の愛する場所

 

 

 

作者のジェフ・クリスティによると、この曲は南北戦争の帰還兵をイメージして作ったそうです(そういえばレコードジャケットのコスチュームは南北戦争の兵隊っぽい)が、発売当時はベトナム戦争の真っ只中であったこともあり、多くの若者の共感を生んだそうです。ちなみに「イエローリバー」という町は実在しないようですが、ジョージア州に南北戦争に関連する歴史建造物「イエローリバー郵便局」が現存しているのだそうで、あるいはそのあたりからインスピレーションを得たのでしょうか。

 

 

さて、この『イエローリバー』は戦争を無事生き延びて故郷に帰るうれしさを歌ったもの・・・とずっと思っていたのですが、最近歌詞を読み返してみて、果たして本当にそうだろうかと疑問に思えてきました。

 

 

故郷に帰るというのに、この歌の歌詞は故郷のイエローリバーで待っているであろう家族や友達や恋人のことにはひと言も触れられていません。どうしてなのでしょう。それに長らく戦地にいたのだろうから、普通は故郷に帰ったらまず実家に帰って自分のベッドでゆっくり寝たいと思うはずです。「月の下で眠る(sleepin' underneath the moon)」は野外で寝ることを意味するので、ちょっと不思議な話です。

 

 

しかも「you see me」や「you meet me」ではなく「you find me」なのです。つまり「会う」のではなく「君は僕が月明かりの下で眠るのを見つけるだろう」というのです。さらに言えば、この『イエローリバー』が南北戦争をテーマにしているのなら、あの時代「今日」前線の野営地か、あるいは野戦病院にいるのであろう人が、明日の夜までに故郷に帰るというのは現実的にはまったく不可能な話だと思われます。

 

 

つまりここでいう「sleepin'」は単に「眠る」の意味ではなく「永眠」を意味しているのではないでしょうか。つまり、この歌の主人公は今はかろうじて生きているけれども、もうすぐ永遠の眠りにつく。「sleepin' underneath the moon」は墓地に埋葬されることを暗示し、残念ながら生きて故郷を見ることはない。それを自覚しているから故郷の家族や友人や恋人にはもう会えないこともわかっている。だから触れない。だから除隊手続きの「explanation(説明)」も聞いてる時間はない。早くイエローリバーに帰してくれ・・・

 

 

 

 

実はそういう意味の歌だったんじゃないか、と考えるのは深読みしすぎでしょうか。