大村益次郎の暗殺(8) 斬撃 | またしちのブログ

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「賊だ!賊だ!」
安達幸之助は、そう叫びながら二階の窓から飛び降りました。あるいは刺客を大村から引き離そうとしたのかも知れません。

しかし、飛び降りた鴨川の河原には、他の刺客たちが待ち構えていて、安達はメッタ斬りにされて倒れました。

静間彦太郎も続いて飛び降りましたが、やはり斬り倒されてしまいました。刺客の一人、金輪五郎は静間を追って飛び降りましたが、河原にいた仲間を敵と思い込んで斬りつけたので、関島金一郎があわてて止めたといいます。

安達幸之助は、顔立ちが大村によく似ていたと言われ、大村と面識のあった団伸次郎と神代直人は、倒れている安達の顔を見て「大村を討ち取った」と叫びました。

そして、河原にいた団、神代、金輪、関島の4人は即座に逃走しました。

一方、室内にいた伊藤源助と五十嵐伊織は、重傷を負った宮和田進を助けて逃げましたが、二条通り東川端まで来たところで宮和田が「もう無理だ」というので、五十嵐が宮和田の首を斬りました。

伊藤と五十嵐は、はじめ宮和田の首を持って逃げたようですが、逃げ切れないと思ったのか、途中で首を捨てたたようで、後日首と胴体が別々の場所で発見されています。

残る一人、太田光太郎は後詰め役として玄関を見張っていたようで、裏で「大村を討ち取った」という声がしたのを聞くと、室内には入らないまま逃げ去りました。



刺客たちが室内からいなくなったのを見届けた大村は、階段を降りて1階の浴室に身を潜め、助けの来るのを待ちました。

全身傷だらけでしたが、意識はしっかりしていて、この時点では命の危険があるとは、おそらく医者でもあった大村自身も思ってもみなかったのではないでしょうか。

河原に飛び降りて斬られた安達幸之助と静間彦太郎は即死。その一方、山田善次郎はまだ息がありましたが、翌日の明け方に息を引き取りました。吉富作之助については重傷を負った事は分かっていますが、生死について残念ながら不明です。

事件後ただちに各所に使者が走り、河田景与(鳥取藩。京都府大参事)や槇村正直(長州藩。京都府権大参事)らが現場となった宿舎に駆けつけました。

大村は自分で浴室から出てきて、吉富と共に八畳間に寝かされ、医師の到着を待ちました。