(32)【Episode.3それぞれの旅】6 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

 

【Episode.3それぞれの旅】

 

 

6

 

 

 

 

アプサラの寝息と温かい肌が

マコマには心地良かった。

アプサラの肌はきめが細かく、柔らかい。

そして時折、その肌から

本能をくすぐる良い匂いがしてきて

つい甘えたくなる衝動に駆られた…

 

添い寝されているマコマは

「どうしてこんなことになったのだろう」

と思った…

一緒に寝るとは言ったが

裸同然で添い寝とは…

 

 

 

 

 

 

食事の後片付けを終えたあと

マコマはアプサラの天幕に招かれた。

クリシュナ隊長も使っているのと同じ

小さな一人用の天幕

とても二人寝る空間はなく

当然、一組の毛布と敷物しかない。

 

「さあ、おいでマコちゃん〜

いっしょに寝ましょう」

 

マコマは少し怖かった。

 

「上着脱いで下着になりなさいな

私が温めてあげる

寒くないわ、さあ」

と毛布を拡げて寝床へ誘う。

 

「……」

(確かに、今の私には

こんな贅沢な寝床はない)

 

これを断ってしまえば

食事をした焚き火の近くで

ボロ布にくるまって野宿しかない。

実際、天幕を持たない者や

マチルダや他の傭兵たちは

皆、そうしている。

 

躊躇するマコマの手を強引に引っ張り

寝床に引きずり込んだアプサラ。

マコマはアプサラの胸を顔に押しつけられた。

女の香りにむせそうになる。

そんなマコマをアプサラは満面の笑みで

さらに抱きしめた。

 

マコマを優しく抱きしめたまま

しばらく沈黙していたアプサラは

静かに口を開く。

「…マコのご両親は?」

 

「…私がまだ幼い

…4,5才くらいの時に

亡くなったそうです

その時の記憶がなくて…」

 

「……」

 

「…姉妹は?」

 

「昔、お姉ちゃんがいたような

気がするんですけど…

よく覚えてません…」

 

「……そう、ごめんね

色々訊いちゃって」

 

「…いえ、代わりに優しい

おじいちゃんがいますから

おばあちゃんは

7年前に亡くなりましたけど

私にとても優しくしてくれました」

 

「…そうなのね

ほんとごめんね

つい職業柄、クセでね

こうやって、抱き合ってその人の

心も身体も裸にしたくなるの…」

 

 

実際、アプサラには何でも話したくなる。

そういう雰囲気というか

魅力があるとマコマは思った。

 

 

アプサラの抱きしめる力が

強くなった気がした。

温かく柔らかい肌と、どこか懐かしい匂い…

そして身体を包んでいる暖かな霧のような光…

 

 

昔、祖母のガティアに抱かれて

眠りについた想い出が甦る。

陽だまりの中の

心地良い幼い頃の想い出…

その後起こった悲しい想い出も…

涙が頬を伝って敷物に落ちた。