(21)【Episode.2 そして少女は旅に出る】 5 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

 

【Episode.2 そして少女は旅に出る】

 

5

 

「…へーパイトスに着くまで

お前さんには

雑用をやってもらう

…それでいいか?」

 

「え?…ええ、わかりました」

 

「…移動時はもちろん

食事や寝るときも

皆と共に行動しろ

言われたことには従え

身勝手な単独行動はゆるさん

それが、この隊でのルールだ…

…いいな?」

 

「はい、わかりました…」

 

クリシュナは天幕の前を通り掛かった

少年に声をかけた。

 

「……マチルダをここに」

 

少年は手に抱えた荷物を

落としそうになりながら

元気よく応えた。

 

「はいっ!隊長!」

 

 

 

しばらくすると

牛皮をなめして作った

胸当てを身につけ

腰には短めの剣を差している

軽武装の中年女性がやって来た。

 

分厚い唇と大きな眼が情熱的に映る。

胸の辺りには

大きな傷跡が覗いていた。

 

 

 

傷だらけの腕を組み仁王立ちになる

戦士風の女性。

 

「なんか用、隊長?

こっちも忙しいんだけど…」

 

明らかに機嫌が悪い。

 

「今日から雑用係をする…

……お前さん、名はなんだったか?」

 

「マコマ・レインフォールといいます

よろしくおねがいします!」

 

「……だそうだ

……色々教えてやってくれ」

 

 

 

腕組みをした女性は

「ふうっ」と

面倒くさそうに溜め息をつくと

マコマに視線を移した。

 

「この隊商の護衛を務めている、

傭兵のマチルダだ

よろしくな」

 

「よろしくおねがいします!

マチルダさん!」

 

 

 

 

「じゃあ、荷物持ってこっちおいで

早速片付けを手伝って貰う

忙しくて猫の手も借りたいんだ」

 

「はい!」

 

「犬の手でもいいでヤンスか?」

 

「…なんだい、この変な木人形は?

あんたが腹話術でも使ってんのかい?」

 

「私が使ってる木人形で

プッペっていいます

あの…勝手に喋ってるんです」

 

「ぷっぺでヤンス

よろしくお願いするでヤンスよ」

 

「はあっ」

マチルダは額に手を当て

気の抜けた溜め息をつく。

 

「どっちにしろ、気味が悪いね…」

 

急ぎ足でマチルダについて行く

マコマの後ろ姿を見つめながら

 

「わしに別れの言葉もないとはのぅ

少し寂しいわい…」

 

キリコは切なく思う。

 

「……」

クリシュナは黙ったまま

キリコに水タバコを勧めた。

 

 

 

 

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