(19 )【Episode.2 そして少女は旅に出る】3 | 人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

【Episode.2 そして少女は旅に出る】

 

3

 

 ナパの町に

約三十人編成の隊商が到着して

二週間が過ぎた。

 

 

ナパの町に大規模な

隊商が立ち寄ることは

ここ数年ぶりの出来事で

異例の事態となって町は大騒ぎだった。

 

 

林業で成り立っている

この町は帝国街道から

少し外れているので

これまで大きな隊商はわざわざ

街道から外れてまで

ナパには立ち寄ることはなかった。

 

 

ナパに立ち寄った隊商はバルティカ帝国

帝都ローヌに向かう途中だったという。

道中、この隊商の中で

熱病が蔓延したため

近くで療養を兼ねた

休息と補給を行うことにした。

ナパに立ち寄ったのは

そういう理由だった。

 

 

 

 

「おばあちゃんに挨拶してくる」

 

マコマは食事に使った

食器を洗い終えて

キリコに話しかけた。

 

「ああ、それがええ

ばばあに挨拶しとけ」

小さな巻きたばこを

ちびちびと吸いながら

キリコは応えた。

 

マコマが裏庭に続く扉を開くと

若草の香りが風と共に

炊事場の中に流れ込んだ。

そこからは歪な形をした大きな木が見えた。

 

 

 

 

昔、雷が落ちて

途中から折れて

今では枯れてしまった庭の楠の木。

昔、マコマはその根元でプッペ相手に

よくママゴトをしていた。

 

今ではガティアとプークが

そこに眠る。

 

 

「おばあちゃん…

おばあちゃんの家行ってくるね

お父さんとお母さんの

お墓参りもしてくるよ

ちゃんとたどり着けるよう

天国から見守っててね…

行って来ます…」

 

マコマはガティアの形見である

首飾りを手のひらの中で軽く握り締め

振り返らず

ガティアの墓をあとにした。

 

 

 

 

 

 

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