人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

【Episode.2 そして少女は旅に出る】  

 

6

 

「まあ、ともあれ

隊長さんたちが

ナパを訪れてくれて

助かったわい

なんせ、あの歳の娘ひとりで

旅させる訳にはいかんですけえのう

わしが同行するには

歳を取り過ぎて

長旅はとても無理じゃし…

どうしたもんかと困っとったんですわ」

 

「……こちらも

おかげで熱病の

治療に専念することが出来て

皆回復に向かっております

お互い助け合うことが出来て良かった

…旅は助け合いが必要不可欠だ

オアシスを渡り歩いて旅をしていた

我々、アラムのご先祖様は

そのことをよくご存知だった

 

我々は今でもその教えを

愚直に守っている」

 

キリコと歳が近いせいで

話しやすいのか

さっきとは、まるで別人のように

饒舌になるクリシュナ。

 

クリシュナは水タバコのパイプを

咥え直して2回パイプを吸い込むと

空を見上げて白い煙を吐き出した。

そして、キリコに訊ねた。

 

「…ところで、あの娘は

なぜヘーパイトスに?」

 

「…あの子の両親は

既に死んでもうてなぁ

あの歳で天涯孤独の身じゃ

育ての親のばばあも

数年前に逝き、残されたのは

この老いぼれ爺のみ」

 

「……」

クリシュナは黙って

水タバコのパイプの口を手で拭いて

キリコに手渡す。

 

パイプを受け取ったキリコは

大きく1回吸い込むと

むせて咳をしながら続ける。

 

「おほっ…へ、ヘーパイトスには

そのばばあの家があってのう

そこにあの子の親の墓があると

ばばあが生前言うとった

それをあの子に教えたら

どうしてもそこへ

行きたいと言い出して

きかんかったんですわ

じゃが、

外の世界を経験するには

丁度良いかと思うた次第です」

 

「……あの娘を無事

ヘーパイトスに送り届けますよ

それだけの金は頂いた」

 

「足りてよかったですわい」

 

「…まあ、足りない分は

こき使って働かせますが、

よろしいかな?」

 

抜け目のない眼で

卑しい笑みを浮かべる

その顔は女衒(ぜげん)のそれだった。

 

 

「ええ、存分に使うちゃってくださいや

マコも、そのほうが

良い勉強になるじゃろうから」

 

キリコも上機嫌で

水タバコをくゆらす。

 

 

しばらく沈黙したのち

二人は、ごく短い言葉を交わす。

 

「あの子をよろしく頼みます、隊長さん」

「…承知した」

「……」

「……」

「良き旅を…」

「良き人生を…」

 

しばらくしてクリシュナの率いる

隊商はナパを出発した。

 

 

 

 

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