人形使いが旅に出る

人形使いが旅に出る

ダークファンタジーライトノベル

 

 

【Episode.2 そして少女は旅に出る】

 

8

 

 

友人達はマコマを囲み

別れを惜しんでいた。

 

「元気でね、マコォ」

 

「ヘーパイトスで流行ってる服とか

美味しい食べ物とか

帰って来たら教えてよ?」

 

「旅の途中イケメンと

恋に落ちちゃったりしてっ

きゃーっ!」

 

友人達とじゃれ合うマコマを

ユーリエは黙ったまま見つめていた。

そして重く口を開く。

 

「…わたしもね、もう少ししたら

旅に出るのよ?」

 

彼女の言葉はなぜか

周りにいた友人達の顔を暗くした。

その違和感に気付きながら

平静を装いマコマは返した。

 

「素敵!どこ行くの?」

 

「あんたより遠い所…

帝都よ

帝都の学校に留学するの、

羨ましいでしょう?」

 

「さすがはナパ領主様のご息女

敵いませんよ」

と、わざと軽口を言ってみせた。

 

「…ふん」

ユーリエは不機嫌な視線をマコマに向ける。

周りの友人達の曇った笑顔を見て

ユーリエの言っていることは

嘘だと思った。

 

この世界には

「魔女病」という不治の病がある。

「魔女病」とは、

ごく希に女の子だけ魔女の因子を持って

生まれることがある。

その子供は生まれながらにして

大量の精神力を保有しているが

その精神力を己の身体の中で

生成する過程で

自身の生命力をも大幅に削っていく病。

生まれてすぐ死ぬ子もいるが

二十歳になるまでに老衰でなくなる子が

ほとんどである。

今までに二十歳を超えて

生きた例は少ない。

 

 

 

ユーリエは

この病を患っていた。

 

 

この周辺の医者では

手の施しようがなく、最後の頼みの綱

帝都の高名な医者に

診てもらいに行くのだろう

と、マコマは推測した。

 

 

「…なら、途中ヘーパイトスに

立ち寄ることがあったら

私が町を案内してあげる

美味しいスイーツのお店とか

可愛い服を売ってるお店とか

案内したげるっ!」

 

「…まだ、行ったこともないくせに」

 

「…だよね」

 

「じゃ、あんたが帝都に来ることがあれば

私が案内してあげるわよ」

 

「行ったことないくせに…」

 

二人は少し寂しそうに笑う。

 

「それじゃ、マコ…

良い旅を…」

 

「うん、ユリも…元気でね」

 

目の錯覚か、マコマには

ユーリエがいつも以上に光輝いて見えた。

 

 

隊商の最後尾が近付いた時

マコマとプッペは友人達に別れを告げ、

砂埃と共に育った町を旅立った。

 

 

 

 

 

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