あまりにパカパカしすぎて面白いので、この「黄金の夜明け団」の内紛について調べたことがあるのだけれど、要するに、正統なオカルティズムの歴史と伝統を重んじてその文化の継承を試みていた主流派と、わざわざ自分の売名のためにそこに入り込んで、正統でない知識をあれこれ持ち込み盛り込んでさも自分が真実を知るただ一人の特別で超越的な存在なのだと言いたかった薬中イカレ野郎とのいさかいであったといっていい。

 

クロウリーというのは今のオカルト世界でもまるで古来の叡智を継承する本物の魔術師であったかのように思われているふしがあるが、それはあくまで彼の演出であって、彼がやっていたことは今の日本の新興宗教の一部に見られる、まったく脈絡のない世界中のオカルティズムを寄せ集めたいわばチャンポンオカルティズムでしかなかった。その証拠に彼が悪魔を召還すると豪語していたいくつかの魔法円のうちのひとつは、フランスの錬金術の古書にあったもののパクリであり、その内容たるや鋼の焼き入れには精通前の少年の小便を使え、というお粗末なものであった(俗に魔法円と呼ばれるものは魔術師ではなく錬金術師の世界で用いられたものであり、本来は悪魔を召還したり魔法を使う儀式のためのものではなく今でいうところの化学式に相当するものでしかない)。これではあまりのパカさ加減に悪魔もうんざりだろう。他にも彼の思想とされるものには彼がよそから持ち込んで自分流に捻じ曲げて解釈して我が物にしてしまった部分というのがものすごく多い。熾天使ミカエルと堕天使ルシファーが兄弟だったという後のスピリチュアル世界ではよく語られる嘘っぱちはこの男の創作である。(何度か書いているが同じ神を奉ずるユダヤ教キリスト教イスラム教においてルシファーの前身とされるルシフェルという天使はどこにもいない。なんとなればその天使の名がラテン語に由来するものでありローマ神学以降のものだからである)

 

自分では特別な存在であるかのようにふるまいつつ、何も学ばず何も知らず、そういう堂々としたお粗末で恥ずかしいウソをつくのがクロウリーという詐欺師であり、それを見抜く人たちが当時からいたからこそ、彼は孤立したのである。孤立して持ち前のプライドの高さから逆ギレしたのである。

 

今でも彼の信奉者というのは有名人や知識人にもけっこういたりするが、派手な偽物は本物(現実的な文化としてのオカルティズム)よりも強い訴求力を持つというのは今も昔も変わらない。

 

だが同時に、彼らまがいものの正体は、今も昔も笑い者でしかない。