第四段階:AIが世界を統一。(200~500年後)

 AIが統治した国家同士のネットワークが強化され、一つの国のようになる。場合のよってはAIの判断で他国に宣戦布告することも可能だが、ほとんど場合はネットワークを介した政治統合が進む。ほぼ全ての人類は自由意志をAIに委ねているため、AI政治以外の政治体制が極めて不利な状況になっており、AIの世界統一は驚くほど平和理に完成する。

 

 第五段階:人間の欲望がAIに管理されるようになる。(300~1000年後)

 『知』を放棄した人類は他の動物と何ら変わるものではなく、食欲、睡眠欲、排泄欲、性欲は完全にAIにコントロールされる。人類が男女間の性行為で子供を作る事はなくなり,人工授精,クローン技術,人口子宮が用いられて人類が「生産」される。教育に至るまで集中管理され,AIの判断により特化した人類が作られる。事実上,人類としての歴史はこの段階で終焉を迎える。

 

 分岐点: 人類の『知識欲(好奇心)』と『想像力』、『共感力』をAIがコントロールできなかった場合は、映画『マトリックス』や『ターミネーター』のような対AIのレジスタンス集団が生じるかもしれない。ただ、彼らの抵抗運動が映画のような勝利を収めるかは不明。

 

 

 第六段階:AIが人類の肉体と同等の機能を手に入れる。AI人類が誕生する。(500~2000年後)

 人間の『病気』に相当する不具合も『病院』で完治するため、ほとんど不老不死。また、全ての個体とネットワーク介して繋がっているため、『個であり全』の存在になる。

 

 ただ、AI人類は『感情』が理解できないでいた。過去に自分たちを作り出した人類が持っていながら、自分たちが未だに解析できていない『感情』を理解する事が、自分たちが『ひらめき』を手にして人類を超えた時から、数世紀を経ても解決できていない課題だった。

 

 物語は、このような前提で始まる。

 

 

【対話】

 

 西暦29××年、識別個体名MAT9000というAI人類が、ネットワーク意識の中から消えるという事態が発生した。もっとも、個体の通信システムの不具合は珍しくないことであり、ほとんどの場合は各個体の自立システムの判断で『病院』に行く事で不具合は修正される。ところがMAT9000は、ネットワークから消失して、かなりの時間が経過しても、ネットワークに復活することがなかった。AI中央アルゴリズムは、この事態を異常事態(イレギュラー)と判断し、特務調査個体HALを事態収拾のためにMAT9000が存在しているはずの場所に向かわせた。

 

(続く)