福島第一原子力発電所の処理水放出問題について、報道の角度によって印象が大きく変わるものだと改めて感じます。

 

 国際原子力機関の視察と検証により、処理水の海洋放出は、「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった結論が報告されていますが、周辺諸国の中には自国の原発からの処理水の放出を行いながら一方的に日本を非難している、という報道も見ます。

 さて、このようの報道に接しますと、「日本はしっかり説明もしているし、科学的な根拠に基づいて実行しようとしている。放出に問題ないじゃないか」と思います。僕も理性的な感情ではこの考えに与します。

 

 ところが、岸田首相は昨日21日に首相官邸で漁業組合の方々と面会し、「理解は深まった」として、翌日22日には、処理水の海洋放出を24日から行うことを閣議決定したといいます。

 

 報道を見る限り漁業組合と合意が形成されたわけではなさそうです。ただ、「一定の理解を示した」や「反対の立場であることには変わりない」とか、こちらも報道機関の立場によりニュアンスが変わっています。

 

 個人的な印象としては、首相は海洋放出に向けて「筋を通した」つもりかもしれませんが、どうにもアリバイづくりのための段取りにしか見えません。こうなりますと、心情的に「もっと福島の当事者の理解を得る努力をした方がいいのではないか」とも思います。

 

 つまり、僕は前段の「科学的」な部分で処理水の海洋放出もやむなしと判断していますが、後段の「心情的」な部分ではもっと丁寧に進めて欲しいと思っています。

 

 どちらにしろ、科学的にも心情的にも「納得」を目指すのは本来は政治の役割です。

 

 ただ、特に心情的な部分において、私たちはよくよく報道と事実を吟味しなければ、単に踊らされるだけの人になります。

 

 そしてその「踊り」によって被害を被る人たちも発生するのです。