転勤した元同僚から電話がかかってきた。
彼の職場で職場旅行が企画され、僕の居る地方(つまり、元の彼の職場のあった地方)に来る計画だという。
 それでなんでも、「あまりお金がかからなくて楽しめそうな企画」として、町のクリーンセンターで行っている廃ガラスを利用したガラス工芸体験なるものを見つけ出し(僕も初耳だった!)、問い合わせを行ったという。
 「そうしたら、町外の人間は一人500円取られるそうなんですよ。ところが、受付のおばちゃんが、『代表者が町内の人間ならみんな無料になるよ』と教えてくれたんです。」
 「で、僕に白羽の矢が立ったのかい?まあ、いいよ。その日は暇だし、面白そうな体験ができそうだからね。」
 「ありがとうございます。じゃあ、松川さんの方で、申し込みをしていただけますか?」
 「はあ?俺が申し込むのか!?」
 「ええ、代表者になるわけだし、それが自然かと.......。」

 僕はどうにも釈然としないものがあったが、まあ、『代表者が申し込む』というのも、なんとなく説得力があったので、しぶしぶ引き受けた。

 それで、クリーンセンターに電話をかけて、申し込む事にした。
 ところがなんと、帰ってきた返事は、「その日は別の視察が入っており、受け付けられません」とのことだった。
 僕は慌てて、元同僚に電話をかけた。
 「おい、ちゃんと日時は伝えてあったのか?」
 「あっ、そういえば、日時を言っちゃうと申し込みしたことになっちゃいそうだったので、言ってませんでした!」
 「.....。」 

 まったく、あれでも一応、一児の父らしいのだが、大丈夫なんだろうか。