六祖さまは、風に動く寺の旗を、二人の坊主が議論し、一人は旗が動く、一人は風が動くと、おたがいにケリが付かないので、いうには「風も動かず、旗も動かず、人の心が動く!」
 二人はヒヤッとした。
 【無門の解説】

 風が動かず、旗も動かず、心も動かねば、六祖さまはどうなるか?
 もしこの点をシッカリ見抜けば、ふたりの坊主は掘り出し物をし、六祖さまはこらえきれなくて、とんだソソウをしたとわかる。

  風・旗・心
  一度にごめん
  くちをたたけば
  うっかり失言

 
 【松川亜人の雑感】

 六祖さまとは、慧能禅師という方で、この方はもともと、禅寺でまかない人夫をしていた、たいへん貧しい人でした。

 そのためか、大変に気を遣いなさるようです。

 面白い事に作者である無門慧開は、このようにズバリと本質をついた言葉には、変に茶化した解説をつけています。

 「そんなこと言っちゃって、あ~あ、もったいないね」といった感じです。


 「動く」という現象と、「ある」という事実は、こころと存在に関わります。

 因果はこころ、存在は永遠。 
  
 おっと、こりゃ僕もとんだそそうをしたようだ。
 もっとも、僕の場合は、本当は知らないくせに、いかにも分かったかのような言葉を発してしまう意味での「そそう」ですけれど。