僕の住んでいる住宅の近くにあるコンビニに、防犯を呼びかけるポスターが貼ってあった。そのキャッチコピーはこうである。
 「目指そう、カギかけ日本一。」

 このコピーを見て、僕は子供の頃を思い出した。

 僕が小学生ぐらいの頃、両親が共働きだったので、学校から戻っても家に誰もいないことが多かった。
 いわゆる「鍵っ子」だった僕だが、家の鍵を持たされたことはなかった。なぜなら、我が家は、『常に』鍵をかけていなかったから。

 今から思うと、なんとも不用心なことをしていたものだが、それでも、我が家に泥棒が入ったことは未だかつて一度もない。もっとも、時代の流れか、いつしか、我が家も鍵をかけるようになった。それでも、勝手口だけは今でも常時開いている。

 僕自身は、実家から独立した後は、アパートや職員住宅に住んでいて、カギはしっかりかけている。もちろん今ではそれが普通であり、常識なのだが、実家に帰るたびに、常に開いている勝手口に、僅かに残る古き良き時代の名残を感じるのである。