ある方と話していたとき、いわゆる「ウサギと亀」の話が話題となり、この逸話についてその方独特の解釈を話して頂きました。
 「このお話は、普通、『コツコツ努力する事の大切さ』を説くものとされているだろう?そして『亀のように努力する人間になりなさい』というのが一般的な教訓として語られるわけだ。でも、僕は、『亀じゃなくてウサギになれ』と言いたいね。
 だって、普通に競争したら、絶対にウサギが勝だろう?だから、この話は『勝てるはずのウサギが負けたのは何故か』という事を教訓にすべきだと思うんだ。勝てる戦いに負けるのは必ず原因がある。その原因をちゃんと考えて、『勝てるウサギ』になれ、と、僕は言いたいね。」
 
 なるほど、と思いました。実に僕好みの解釈です。
 けれど、僕はこれだけでは満足できませんでした。なぜなら、現実問題として『勝てるウサギ』になれる人というのは、ごく一部で、大多数の人たちは、やはり亀でいるしかないと思うからです。

 そういう、大多数の亀たちがウサギに勝てる方策がないだろうか、と考えてみました。 
 一つの方法として、スタートの合図が鳴ったときに、既にゴールのすぐ近くまで亀が来ているという事が考えられます。つまり、自分自身がコツコツがんばる亀であるなら、ウサギが走り出す前に、すなわち競争が始まってしまう前に歩き出しておく、現実には「準備」しておく、という事が、ウサギに勝つ一つの方法だと思います。

 二つめは、ゴールを自分自身の近くに設定することです。これができたら亀は歩く事すらしなくていいのです。しかし、このやり方では設定した「ゴール」が、ウサギにとっても「ゴール」であるとは限らないので、「いかに自分の土俵に相手を乗せるか」という競争とは全く別次元の問題が生じます。

 しかし、まずは自分自身がウサギであるのか、亀であるのか、そして、競争しようとする相手がウサギであるのか、亀であるのかを理解すること、古くから言われる「敵を知り、己を知る」事は、まずは肝要でしょう。