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〜「市は…、こういう男なんです…」〜
やくざの世界に心底疲れ果てた座頭市は、故郷である笠間へと足を向けていた。
だがやはり、その市を付け狙うやくざ者たちが居た。
市を下総にて斬られた兄・勘兵衛の仇だとする安彦の島吉一味だ。
そんな中で、市はかつての剣の師・伴野弥十郎とその妹の弥生と再会する。
そして、悪名高き天狗党の時代において、市も弥生も誰も彼もが否応なしにそれに関わることとなるのだった。
というわけで今回は、相変わらず伊福部昭の重厚な音楽が心に響く座頭市シリーズ、その第三作である『新・座頭市物語』です。
して、本作も第一作からの連作の体でして、ここから入ると前作と同じくワケワカランと思います。
ということで感想をば。
斬りたくない人を斬り、恨み辛みを買い、人々に追われ続ける――切った張ったのやくざの世界に心底疲れ果てた市の足は、自然と故郷の笠間へと向かっていた。
道中、やくざ者に襲われるも、幼なじみや、居合斬りを仕込んだ剣の師匠・伴野とその美しき妹の弥生との懐かしい再会が市を癒やし、その心に一輪の花を咲かす。
が、困窮極まる伴野は天狗党のメンバーになって悪行三昧、市を見世物にするような欲の塊というオチ。
そんな中で、弥生と市の乳母だけは市に優しかった。
そして、まさかの弥生からの求婚。
市の心は大揺れに揺れる。
自分はもう汚れに汚れた身、しかも障がい者だ。
だが、弥生の決心は固い。
市は、遂に堅気になることを決めた。
…うん、おたねさん可愛そうじゃんかよー!!と思わんでもない(笑)
市はモテる。とにかくモテる(笑)
多分、いざとなった時のよりかは普段の根本的な人柄の良さとかなんだろうな、と思う。
市は一緒に居たら凄く居心地が良いんだろう。現に観てたってそう感じるんだから、映画の中のキャラなんかはきっとそんなんなんだろうね。
あと、本作で市の本名が判明。
笠間の“イチタ”さんってのね。
だけどコレ、『座頭市地獄旅』だと、生まれてからずっと“市”って呼ばれてたって言ってるのよな(笑)
まぁ、実兄の与四郎も“市”と呼んでるからね。これは、市はずっと人からは“イチ”って愛称で呼ばれてきたのかも。なんて。
で今回はラスボスとなる伴野がものすんげー小物すぎて弱すぎて、なんだかねぇ…。
でも、クライマックスの侍たちとの戦いは良かった。
大勢に対する市の戦い方はやはり程よく隙があって、そこがリアルっぽいから良いですね。
で、本作のMVPは間違いなく安彦の島吉役の須賀不二男。
須賀不二男は時代劇では鉄板級な悪役ばっかなイメージなんだけど、本作はやくざ者でありながら非常に粋なチンピラを好演。
弥生のプロポーズを受け入れて堅気になるという市の決心を認めて、自分のやくざとしてのプライドを捻じ曲げて見逃してくれるのよね。
不器用だけど、きっと根は良い人なんだろうなぁ。
結局、やけ酒が祟って伴野に斬り殺されてしまう。
で、この須賀不二男の死が今回の市の怒りに火を点ける、という具合。
そんで、大乱闘を経て伴野を斬った市は、弥生に言うのよな。
「市は、こういう男なんです…」と。
この台詞は、『座頭市地獄旅』での「俺って男は泥だ〜」と並んで市のことを象徴している台詞なのよね。
結局、やくざ者・“座頭市”でしかなかった笠間のイチタは、今回も寂しく何処かへと流れていくのでした――。
シリーズ初のカラー作品となった本作は、突貫工事的だった前作とは対象的にちゃんと余裕ある作りに感じました。
だけど、敵が微妙というのがなんとも言えず残念ではあります。
しかし、須賀不二男で全てが吹っ飛びます。
そして、市自身のドラマが大いに盛り上がりを見せてました。
伊福部昭の重厚な音楽なんですが、座頭市シリーズは何本か観てきましたが、本作の音楽が今のところ一番好きです。