〜超絶イキりクズ野郎の改心劇!異国情緒はクソ野郎を変える!!〜
1939年、ナチス占領下にてオーストリア人の登山家・ハインリヒ・ハラーは身重の妻の反対を押し切りヒマラヤ山脈へと向かった。
しかし時世が時世であり、ハインリヒはインドにてイギリス軍の捕虜となってしまう。
ハインリヒらは脱走に成功。
そして、ハインリヒと登山仲間のペーターはチベットへと至るのだった――。
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』。
名前は知ってましたし、あの『薔薇の名前』のジャン=ジャック・アノー監督が撮った映画なので期待して観ました。でもまぁ、個人的にツッコミ所満載であまり好きではない映画『スターリングラード』とかありますけどもね…。
本作はハインリヒ・ハラーの自伝を基にした映画ということですが、原作は例によって例のごとく未読!
ということで、以下感想をば。
今回のブラピは、超絶イキりクズ野郎。
平たく言うと本作は、そんなクソ野郎の登山家がチベットでの生活を経て真人間値ちょいプラスに至るという話です。
ハインリヒは最初は正真正銘のクソ野郎で、身重の妻を見下すしぞんざいに扱うわ、登山仲間を見下すわ、登山仲間のペーターを質屋の生贄にするわ、妻から三くだり半を突き付けられた後にチベットで出逢った姉ちゃんに下心満載でイキりまくるわで、やることなすこと心底超絶どーしよーもないというオッサン。
対象的に登山仲間のペーターは、すんげージェントルマン。
チベット人のその姉ちゃんも自己中極まりないハインリヒには目もくれずに、「あなたは自己中すぎる(要約)」とハインリヒにグサリと釘を刺してペーターと結婚します。
フラれて意気消沈のハインリヒに待っていたのは、若き日のダライ・ラマ14世の家庭教師という職。
この出逢いが、ハインリヒの運命を大きく変えるのであった。
そして、とりあえず家庭教師職をえんやこらと頑張っていたら、いつしか第二次世界大戦は終わって中国では毛沢東がアップをし始めた感じ。
対するチベットはトップの内通者も居たりして毛沢東率いる人民解放軍に完敗し、侵略されて蹂躙されてしまう…。
息子のことが忘れられないハインリヒはオーストリアに帰ることを決め、ダライ・ラマ14世やペーター夫妻と涙の別れ。
帰り際に、内通者にメンチを切る程度のことしかできないハインリヒ。
己の無力さを嘆きながらの涙の帰郷なのであった。
超絶分かりやすいですけど、ハインリヒの改心っぷりが爽やかさではあります。
でも、チベットが最終的にあんなことになるわけで、幕引きのブラピの暗い表情とも相まって実に不穏なスッキリしない終わり方。
ハインリヒは丁度、言っちゃあ悪いですが、去り際は良かったのかもしれません。
下手したら、というかしなくてもきっと命無いよ…。
個人的にはペーター夫妻がその後どうなったかが滅茶苦茶気になりますね。
画面いっぱいに映る器いっぱいのバター茶が物凄い悲しい…。
ハインリヒの心情を鋭く突いて「私はあなたの息子ではないよ。特別な存在ではあるけども」とやんわりと彼の帰郷を促す、(こう呼んで正しいのか分かりませんが)ダライ・ラマ猊下とのやりとりが心に突き刺さりましたよ…。
劇中、ダライ・ラマ猊下は涙を一滴も流さなかったけれど心中では苦悶している風な様子がとても悲しかったです…。
…う〜む、悲しすぎるこの映画は…。
そして、ジョン・ウィリアムズとヨーヨー・マが奏でる楽曲も重厚で悲しすぎました…。
機会があったら、スコセッシ監督の方のダライ・ラマ猊下を描いたやつも観てみたいです。