日本抗加齢医学会認定指導士M.M.のアクティブ・アンチエイジング

日本抗加齢医学会認定指導士M.M.のアクティブ・アンチエイジング

薬剤師、日本抗加齢医学会認定指導士、栄養情報担当者(NR)。
専門家としてのアンチエイジング情報と、わたし自身のアクティブな生活
についてご紹介します。

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デナリ登頂記 下山編 

 

62613:30  

登山は下山時に事故が多いと言われます。ザイルに4人が繋がり下山開始。足元からやや上を目指した登頂目線と下山の目線が全く違うことに気付きます。景色も全く違います。下山時は足元から下が見えます。

ナイフの刃の上を歩いているように感じられます。両サイドは険しい絶壁です。なんと谷の深いことか?今まであまり見えなかった谷底まで、晴天ほど鮮明に良く見えます。高所恐怖症ではないものの落ちたことを考えると背筋に冷たいものが走ります。

     

                    

      下山開始です。

 『もし、落ちたらピッケルを素早く打ち込み、止める!』・・これを強くイメージしながら歩を進めます。次はデナリパス、右側の急斜面がどこまでも深く落ち込みます。この急な下りは安全ビレイを取り、慎重に下ります。しかし、下山開始から3時間以上(今朝の登頂開始からは12  時間近く)経過し疲労もピークに達しています。その時です。厚手のダウンジャケットにアイゼンが引っ掛かって足が縺れ滑落。イメージ通り素早くピッケルを打ち込み止まります。しかし、その後の動作が出てきません。後続の貫田さんから、早くアイゼンで足場を固め、元の場所に上がるように言われ、ようやく戻ります。23mは落ちていました。初めての経験です。以前、立山の雪渓で受けた滑落防止訓練が生かされた場面でした。

 

それから暫くして、またもやダウンジャケットにアイゼンが引っ掛かり滑落、今度はピッケルを打ち込み、素早く足場も固めて復帰です。そして、疲労困憊の中、ようやく1930C5に帰着です。出発から14 時間30分後のことです。しかし、天候には恵まれた1日でした。

                 

  もうすぐC5です。正面の点、点が C5

26日のわが隊のみのアタックの選択は正しかったようです。また、下山時に事故が多いのは、疲労が大きな要因となることを体験した一日でもありました。ダウンジャケットはアイゼンで穴が開きしかも解れが目立ちます。安全のため次回は使わない方が良さそうです。 C5泊。

 

6月27日:今日はC5(5200m)からC3(3350m)まで下山予定です。午前1045アイゼンを付け徒歩で出発、C 14:15 到着。

     

           スキーを背負い進みます

C4で日本の倉岡隊に合う。ここからは、C4にデポしてあった荷物とスキーをそりに積み、急坂が多いため、そりを引き徒歩での下山です。C 16:45 出発。途中、晴天から吹雪になる。更にホワイトアウト、12m先が見えない。登山者が歩いたトレイスから少し外れただけで3040cmズボッズボッと足がもぐり、中々進めません。スタミナも奪われます。また、引くそりは何回も裏返しになり、それを直し直しでのC3への下山です。苦労の末、2130C3に到着。 C3泊。

 

628日:今日の予定はC3(3350m)から一気にBC2200m)まで下山予定です。

     

     ペアを組む。この後ガスが出て、ホワイトアウト

1400、貫田さんは豪太さんと、飯田さんと私がペアを組み、ガスでトレイスが見えない中、アイゼンを付け徒歩でC3を出発。道標となる小旗を探しながら進みます。そして、ガスが取れ晴れてきたC2からはスキーに履き替え下山開始。しかし、トレイスのあるところは足跡のあるガタガタ道で上手く滑れず、転倒を何度か繰り返します。そうかといって誰も通っていない真っ新なルートはクレパスがどこに潜んでいるかわからないため危険で通れません。

豪太さんがそりを並列で2連にした方が安定すると言って私のザックとともにそりを引いてくれることになりました。さすがは元オリンピックのスキー選手です。馬力も凄いものがあります。

 

身軽になった私は、転倒することなく、飯田さんにピッタリついてC1に向け順調に滑ります。しかし、この日は気温が上がり氷河や雪質が緩みクレパス転落の危険性を考え予定を変更してC1に泊まり、明朝の気温の低い時間帯にBCに出発することにします。 C1泊。

 

629日:C1からBCへ。

早朝515出発。今日もBCへの下り部分は豪太さんに私のそりとザックは引いて貰います。スキーで飯田さんのすぐ後ろを滑ります。しばらく進むとデナリ三山の一つハンター方向の山の斜面で轟音とともに莫大な雪崩です。雪煙が高く舞い上がっています。同行する飯田さんもこんな大規模な雪崩は初めてと言います。その山肌の上部に早朝にもかかわらず既に朝日が当たり気温が上がったことが原因のようです。

 

わが隊の進む谷の氷河道は、太陽はまだ当たらず気温もまだ低い状態です。しかし、突然、前を進む飯田さんのスキーの片足がスッポリ沈み込みます。次の瞬間、ドサッと大きなクレパスが口を開け、自然が牙を剥いた瞬間です。怪獣が大きな口を目いっぱい開けた恐怖の状態と同じです。後ろの私にできることは飯田さんが吸い込まれないよう連結しているそりを必死で抑え込み、力いっぱい後ろに引くことです。飯田さんも転倒しながらも冷静にクレパスと反対方向にスキーを反転させ事なきを得ました。

 

そのクレパスを過ぎたところから一転今度は登り坂です。そこまで豪太さんに引いて貰ったそりとザックを受け取りBCまで最後の引き上げです。BC900到着。タルキートナからの迎えのエアータクシー(飛行機)はすぐ飛んでくるようです。

ようやく、厳しかったデナリ登山の終りです。登頂したという達成感そして山の生活からの解放感で皆の笑顔が目いっぱい弾けます。

 

  達成感と解放感がイッパイ(BCのランディングポイント)

 

 デナリとも今日でお別れ、これからシャワーにも入れます

午前945飛行機に荷物を積み込み、1025、タルキートナの飛行場に到着です。午後、レンジャーステーションにトイレの持ち帰りと下山の報告にいきます。

デナリの登頂率はシーズン後半時点の628日現在、ボードでの発表は36 %です。登頂出来るのは、約3人に1人ということになります。デナリは、世界的にも難易度の高い山だとあらためて実感しました。その中で経験の浅い私が無事登れたということは、優れたチームメイトに恵まれ、その強力なサポートがあったこと、気象条件に恵まれたこと、食料計画、運搬計画、移動計画など貫田さん、豪太さん、飯田さんのその都度の判断が正しかったことを強く感じます。

     

            2017.6.28 現在 デナリの登頂率は 36% 

 

トイレの持ち帰り運動への参加ではその協力に対し、フラッグとワッペンを頂きました。これも嬉しく思います。

     

           トイレ持ち帰り運動参加者へのフラッグとワッペン

 

デナリ登山を終え、今、思うことは地球の温暖化は確実に進んでいること(過去の登った山では、キリマンジャロは頂上の氷河が急減し、エルブルースは氷河上の大岩が氷河の緩みで今にも崩れそう、そして、このデナリも26回登頂の大蔵さんのお話で確実に温暖化が進んでいるとのこと。深刻な問題です。地球規模での対策が望まれます。

地球環境問題では、トイレの持ち帰り運動など、些細なことかも知れませんが素晴らしいことだと思います。このような小さな運動の積み重ねが環境問題では大切なのではないでしょうか?このようなデナリの運動に対し、日本の富士山のトイレをはじめとするゴミや環境問題、海外と比べ大きく見劣りするように思います。改善が望まれます。

 

レンジャーステーションへの報告を終わり、次にやることがあります。洗濯です。宿泊ロッジ隣のコインランドリーに行き、今までに着たもの、今、着ているもの全てを洗濯です。あまりにも多いので2回に分けてやりました。シャワーも浴び、さっぱりしたところで、ブッシュ大統領(パパ)の料理人をやっていたというレストランで夕食です。美味しいビールを沢山飲みたいところですが、疲れの蓄積があるせいか一杯のビールを飲むのがやっとです。しかし、そのビールも食事もとても美味しい。振り返ると本当に充実した旅でした。この日と翌日(630日)はタルキートナのロッジ泊。

 中央は現地ガイドの加藤さん

 

   タルキートナからのデナリ3山 左からフォーレイカ(5304m)、ハンター(4257m)、デナリ(6194m)

 

7月1日:予備日を使わなかった分、早めの帰国です(日本には73日着)。この日タルキートナからアンカレッジに移動しましたが、約20数年前に来た時と同様、道路には花の植え込み、そして、ゴミ一つ落ちていない。綺麗な街並みに感動です。色とりどりの花がまだ疲れの残る身体を癒してくれるようです。

 

     

     

     

           アンカレッジの町は花がイッパイ

             登山界の若きエース飯田さんの撮った画像を中心に使用させて頂きました。

 

さあ~、日本に帰ったら、次なる心にトキメク目標を立てよう!その前に仕事もしっかりやらねば・・・。

 

デナリ登頂記 登頂編

 

北米大陸最高峰、デナリ(旧マッキンリー)は標高6194m。この山の難しさは緯度の高さによる寒い気象条件と空気の薄さと言われています。地球は自転しているので遠心力により赤道付近に大気の層が集まり、高緯度は大気が薄くなる傾向にあるためです。更にデナリにはポーターやシェルパがいない為、約4週間分の行程の食料、燃料、テントや個人装備などを自分で担ぎ、そりに乗せてキャンプ地(C4:4300m)までスキーやスノーシューで引き上げなくてはならないのです。また、デナリは、数多くの日本の一流登山家が消息を絶ち、世界的冒険家の植村直己さんが帰らぬ人となった山としても有名です。そんなことから世界最高峰のエベレストと同等の登頂難易度が高い山と言われます。しかし、7サミッツ(世界7大陸の最高峰)の一つ、ぜひともその頂上に立ってみたい山です。なお、デナリはアラスカ先住民にとって「偉大なもの」を意味します。

   北米大陸最高峰 デナリ 6194m

         

     

       登頂ルート

              

そこで今年に入り、荷物の運搬手段はスキーを使うことにし、スキー合宿を集中してやり、クレパスからの脱出訓練も行いました。また、装備のチェックも重要です。キーワードは1gでも軽いもの。私の装備もザック、ハーネスをはじめ、より軽いものにするようとの指摘です。なおスキーは超軽量で、靴はスキーと登山との兼用靴です。このような形で準備を進める中、一緒に同じ目標を目指していた同僚の大歳卓麻さんが、3月にスキーの特訓中、足の踝を骨折し離脱したことは大変残念でなりません。

             

装備品のチェック(左から倉岡さん、大歳さん、貫田さん、飯田さん、私、豪太さん)、超軽量のスキー板

 

最終的なデナリを目指すチーム構成は、日テレ「イッテQ」の登山部顧問:貫田宗男さん(主な登山歴はエベレスト2 回、デナリ3 回登頂)、元オリンピック・モーグル選手:三浦豪太さん(エベレスト2 回登頂)、若き登山界のエース:飯田祐一郎さん(デナリ1回登頂)、そしてにわかに登山を始めて歴史の浅い私:元井です。皆さんとは、日頃から親交があり、経験や実力は最強で最も信頼できるメンバーです。

 

いよいよ出発、日程は2017610日~76日(先発隊の貫田さん、飯田さんは食料の買い出しで66日出発)です。天候不順を考えた予備日を5日ほど取っています。

 

2017

610日:三浦豪太さんと成田を出発、ロスアンゼルス経由でアンカレッジへ。改めて装備荷物の多さ重さに驚きです。

              

                装備荷物

 

611日:早朝、アンカレッジから乗り合いバスで、2時間30分かけてデナリの玄関口:タルキートナの町へ移動し、バス停で先発隊の貫田さん、飯田さんの出迎えを受けます。タルキートナは、飛行場の裏手をアラスカ鉄道が走り、のどかな雰囲気の小さな田舎町です。早速、空港脇のテントで、最後の重要な作業となる先に買い付けた食料品を含め、共同装備や個人装備の仕分けがあります。4人分で総重量は約500ポンド(227Kg)にもなります。これを分担してザックやダッフルバッグに振り分けて各自が担ぎ、残りをそりに乗せてキャンプ4(4300m)に引き上げるのです。

午後より、タルキートナのレンジャーステーションでデナリ登山のガイダンスを受けます。その内容は、今年は気候が暖かくクレパスが多数空いている等の注意事項とデナリの環境保護のためトイレの始末品を持ち帰る運動に参加して欲しいとのことです。この日はタルキートナのロッジ泊。  

                       

                             左から貫田さん、私、豪太さん、飯田さん(タルキートナで)

 

                          

             アラスカ鉄道

 

                       

                              レンジャーステーションのガイダンス

 

 

                                                                          トイレ容器

 

612日:タクキートナは晴れ、飛行場に朝の7:45到着。間もなくエアータクシー(小型機)に荷を積んで乗り込み、滑走路に出て離陸直前に、目的地のデナリベースキャンプが雲で閉鎖された為、飛行中止。ロッジに帰って昼食。再び飛行場に戻るがなかなか飛びそうにない。待つこと数時間、今日の飛行を諦めかけた1920 ゴーサインで出て、タルキートナ南東、カヒルトナ氷河ベースキャンプ:BC2200m)のランディングポイントに2010 到着。ここは、夜中も明るい白夜と白銀の世界です。この日はBCにテントを設営、テント内夕食、BCテント泊。

                       

                          タルキートナ・エアタクシー

          

           ベースキャンプのランデングポイント

 

613日:830朝食。終日、うす曇り。タルキートナから飛行機は飛んで来ない。ドドーンという爆音が、テント内に響く、そう遠くない所の雪崩の音である。1600夕食。基本的に食事は、飯田さんが日本食メニューをもとに朝食、夕食を作ってくれ、昼はチョコやお菓子が中心の行動食です。夕食後一部荷物を雪の中にデポし(目印の旗を立てる)、BCテント泊。

 

614日:午前2時起床、外は明るい。230朝食。夜中はみぞれだったが、晴れてくる。キャンプ1C1)に向け、ザックを背負い、ダッフルバッグを乗せたそりをスキーで引くスタイルで早朝420出発。前半は緩い下り坂である。高低差200mほど下ったところから、今度は緩やかな登り坂が始まる。スキーの裏側にシールを貼り、ザックを担ぎ、そりを引き上げる力仕事です。いたるところにクレパスが口を開けている。午前950 C1着。標高約2400m C1テント泊。 

                                 

           

           

           ザックを担ぎそりを引く 

            

             C1キャンプのテント

 

615日:早朝5時、C2に向け出発、天候は曇り。すぐそばの山の傾斜は氷河の断層・セラックが牙を剥いている。また、C2キャンプ手前には見事なほど大きなクレパスがあり、覗くとその底は深海のような不気味な青さである。午前1040  C2着。C2泊。標高は約2900m。

 

616日:昨夜から雪である。C2からC3に向け朝755 出発。C3手前の登坂は、傾斜角度約30度の急坂であり、雪の中、荷揚げはかなりきつい重労働である。朝955  C3着。隣の外国隊の会話が聞こえて来る。「BCからC1に移動中にクレパスに落ちた人がいる。昼過ぎになるとクレパスが緩むので下山時は注意をしよう!」という話である。C3泊。標高3350m。 

                              

    

    クレパスが多く空いている  

 C3からの景色

 

617日:前夜の小雪が晴れる。今日は終日休養日。

タルキートナのガイドの加藤さんより、C5付近で遭難中の他パーティーの1人がレスキューされたとの連絡が入る。

 

618日:晴れ。今日の作業は、高所順応を兼ね、C3からC4(標高4300m)へ荷物の一部を荷揚げ。朝630豪太さんと飯田さんはスキーでそのまま荷揚げ。貫田さんと私は靴にアイゼンを付け、スキーと荷物を担ぐ(そりは使わない)。ウインディコナー付近は、その名のとおり風もあり、ガスもかかり超寒い。マイナス20度以上に感じられる。手袋に入れた使い捨てカイロも効かない。アコンカグアで凍傷になった左右の指が痺れる。C4着1300。荷物をデポし、C3への帰着は1705C3泊。

 

619日:晴れ、終日休養日。テントの中は強い陽射しで40℃にもなり、たまらずテントの上に寝袋を掛け、日陰をつくりしのぎます。その後、NHKスペシャルの撮影隊が下山時に立ち寄ります。

                 

                   

     NHKの撮影隊の皆さんと( C4キャンプで)

 620日:夜中、C4上部で雪崩。低気圧通過の雪を避けて、夜中の

115 出発。出発時は風と小雪。途中から無風の晴れ。靴にアイゼンを付け、ザックを担ぎ、そりを引く。大気がかなり薄く、30度ほどの急坂が何か所もあります。今日の高低差約1000mの登りは、登頂を目指すアタック日に並ぶハードは行程です。C4着940C4泊。標高4300m。

 

6月21日:晴れ。C4からリッジキャンプ(4900m)へ、高所順応を兼ね荷揚げ。ここからはそりは使わず、ダッフルバッグの荷物もザックに詰め込み、通常の冬山登山です。1310 出発。リッジキャンプ1700到着。荷物をデポし、下山開始1745C4帰着1845。米国隊より貴重品のトイレットペーパーの差し入れがある。

 

6月22日:晴れ。終日休養日。昼間にテント底面のデコボコを修正。下着を雪で洗濯する。夜、登頂に成功した日本隊の大蔵さん、鈴木さん、今岡さんがメザシの差し入れを持って我々のテントを訪問。大蔵さんはデナリに、ほぼ毎年登頂し今回で26回目とのことである。ただ、ここ10年ほどは地球温暖化のためかクレパスが数多く空いていると言う。

また、我々の登頂日について、日本のヤマテンの猪熊さんの気象情報では、623に気圧の谷が通過、6/24は強風、62526の気象条件は良さそう。」とのことです。また、C4のレンジャーステーションの情報は、62225にかけて高気圧におおわれるとの内容です。この天気や風の気象条件の把握は、登頂の成否にかかわるだけでなく、難易度の高い山では生死にかかわる最重要課題です。そこで日本から情報を貰うだけでなく、こちらの現地からも定期的に風、雲の流れ、天候の変化の情報を日本時間に合わせ、貫田さんが毎日送ります。どうやら我々のアタック日は62526になりそうです。C4泊。 

  デナリ三山の一つ フォーレイカ (5304m)  雲が天使の羽のようです

 

623日:この日も終日休養日。昨夜から気圧が下がるが午後からは上昇傾向で晴れて来る。午後より、C5に行くルートの登坂を皆でスキーを楽しむ。しかし、この高さ(44004500m)で転倒すると、空気が薄く起き上がるのに苦労します。私はここで捻挫をしてはいけないと、早々にテントに引き上げる。しかし、豪太さんはさすが元オリンピック選手である。30度はあると思われる急坂を少しの乱れもなく見事なシュプールを描く。それを見ていた隣のテントの外国隊が「彼はお前のチームメイトか?凄くスキーの上手い奴だな!」と驚いている。・・こちらも嬉しくなる光景です。

                

                

                   豪太さんの滑り

隣のテントのアメリカ青年より大きなソーセージを貰い焼いて食べる

とても美味しく元気が湧く。C4泊。       

  

     アメリカ青年から貰ったソーセージ

 

624日:晴れ。最終キャンプC5に向け、朝1040 出発。途中、アッセンダー(昇降機)を使う。リッジキャンプ1420 到着。デポしてある荷物をザックにプラスして詰め込み、C5に向け1510 出発。肩に荷が食い込む重さである。後半は山の稜線を進む。両サイドとも谷底に繋がる白い急な崖である。1820  C5着。標高5200m。気圧は527ヘクトパスカル。空気は平地の約半分であり酸素の薄さを感じる。ゆっくりした大きな複式呼吸で身体を慣らす。日本からの気象情報では、25日は山頂晴れ、夕方から霧。26日は終日おおむね晴れ。わが隊の登頂日は26日と決定する。C5泊。

 

625日:朝930 起床。晴れ、しかし、気圧は低下中。我々を除く外国隊は、登頂に向け出発済である。頂上に向けた山肌に点々と人が連なり登って行く。その中でわが隊のみは完全休養日です。どちらの判断が正しいのか?それにしてもその後の夕焼けが綺麗です。

 C5からの夕焼け

 

626日:快晴。朝500 山頂を目指して登山開始です。昨日のアタック隊の結果は、途中、風も出たようで一部のパーティーは登頂断念、登頂に成功したパーティーも帰りが相当遅く苦労したようです。今日のアタックは我々日本隊のみです。この判断は正しかったのか?その答えはもうすぐ出ます。快晴で無風の中、ほどなくして、日本の一流登山家をはじめ多くの登山者が消息を絶った険しい急斜面、デナリパスを進みます。そして、次は幅の狭い稜線です。それは両サイドが切り落ちたナイフの刃と言っても良い稜線、もしここで強い横風を受けたら間違いなく一瞬にして谷底までまっしぐらです。

        

                 急斜面の後ろの山は、デナリ3山の一つ フォーレイカ

        

 

         

         急斜面を進みます

         

           稜線を進みます(ここは歩く幅が広い)

 

やがて山の奥に隠れて見えなかった頂上が突然顔を出す。そして、遂に

6194mデナリ山頂に4人全員が到達。時は13:00ちょうど。登頂開始から8時間です。そして、私は7サミッツ5座目です。気圧は456ヘクトパスカル。空気は平地の半分以下です。しかし、眼下にアラスカの山々が壮大なパノラマとなってすべて見渡せます。その最高の景観に空気の薄さやこれまでの苦難もすっかりどこかに吹き飛びます。さっそく、母校から預かった校旗を頂上に掲げ、私的なミッションも見事に達成です。ただ、4人全員の記念写真を撮りたいのですが、他のパーティーの登山者が誰一人いないので自撮りするいがいありません。4人で代わるがわるに写真を撮ったところで1330 、いよいよ恐怖の下山開始です。

左から貫田さん、私、三浦豪太さん(飯田さん撮影)

 

          4人全員がデナリの頂上に立つ

         

          左足の前に小さな頂上のエンブレム

         

         指をさしているのが頂上のエンブレム

         

          頂上のエンブレム   

                                   

                登山界の若きエース飯田さんの撮った画像を中心に使用させて頂きました。

 

下山編に続く

 最近、お客様からこのようなご質問をいただきました。

「ある本を読んだら、サプリメントは飲まない方が良いと書いてあったのですが・・」
「使われている食品添加物に害はないのでしょうか?」


 他にもこのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんので、今回この場を借りてお話をしたいと思います。
 市場では、数多くのサプリメントが売られています。その販売方法も、薬局などの店頭販売から、通販、訪販、海外からの取り寄せなど多種多様です。
 サプリメントの大きな特徴は、薬機法(旧薬事法)の制約のある医薬品と違って、製造する工場も販売方法も許認可の制約がないということです。従って、市場は玉石混淆の状態です。残念ながら、性能・品質の面で低レベルな製品も、健康上効用を感じられない製品も多く販売されています。


 例えば、私はこのような商品を目にしたことがあります。
 有効成分(栄養素)は1%未満、あとの99%は添加物というもの。
 栄養素(アミノ酸)の原料として、中国人の人毛が使われているもの。
 「○○の秘薬」などと謳っているものの、科学的根拠(エビデンス)は希薄なもの。
 有名人を使い大量のTVコマーシャルで販売されているが、飲んでも飲まなくても健康になんら影響はないというもの・・・。

 こういったものは、びっくりするような低価格や、高価格で販売されていたりします。一方、数は少ないものの科学的根拠のしっかりした商品もあります。
 
 そこで大切になって来るのが、騙されずに本物を「見抜く目」を持つことです。

 そのためには、華やかな広告や飛びつきたくなる体験談よりも、商品パッケージの裏面情報をしっかり読み取るようにしましょう。

 ①原材料名欄で原材料を確認する
 ②含まれる栄養素・成分の配合量
 ③栄養素は天然由来か?化学合成か?
 ④どのような添加物がどのくらい使用されているか?

これらを把握することが大切です。
少し難しく感じられるでしょうが、そんなことはありません。

イラスト



 当店の商品を具体例として説明しましょう。
 表は当店のサプリメント「深眠源」と「ヘアドルーチェ」の原材料名表示と詳細な栄養成分表示です。


SG分析


HD分析



 
 まず、①原材料の確認と、②含まれる栄養素・成分の配合量、④添加物の使用量、を見てみましょう。

 原材料表示は、配合量の多い順に記載するルールになっています。
 
 「深眠源」は、「アガリクス末[KA21株使用](原産地ブラジル)」のみの記載となっています。このことから、原材料はブラジルのアガリクス100%で、それ以外には添加物を全く使用していないことが分かります。
 
 「ヘアドルーチェ」には、上から順に、アガリクス(KA21菌)、ノコギリヤシエキスパウダー、発酵カルシウム、大豆胚芽抽出物(イソフラボン含有)、唐辛子、抹茶、加工デンプン、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムとあります。原材料として一番多いのがアガリクス(ちなみに62.5%)で、次がノコギリヤシ、発酵カルシウム・・・と続き、下位に添加物の加工デンプン、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムとありますので、添加物は少量であることが分かります。
 
 私が他社商品を見ていて驚いたのは、ある「葉酸サプリメント」です。
 こちらは、原材料表示が上から順に、乳糖、セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、葉酸、となっています。
 葉酸が一番下に記載されていて、一錠0.3g(脂質0.007g、炭水化物0.265g、葉酸200μg)です。単位をmgに統一すると、一錠300mg中、葉酸は0.2mgとなりますので、主成分の葉酸は0.067%。残りの99.933%は、主成分以外の添加物なのです。
 あなたもこれを見て、驚きませんか?
 
 次に、③合成ものと天然ものの見分け方です。
 原材料名欄へ、「ビタミンC」、「ビタミンB1」など、栄養素の名称そのものが書かれている場合は、合成の原料です。一方、野菜や果物など、食べ物の名称が記載されている場合は、天然原料です。

 「深眠源」、「ヘアドルーチェ」ともに、アガリクス、ノコギリヤシ、大豆、唐辛子、抹茶などと、天然原料であることがお分かりいただけるかと思います。
 
 ここで、「深眠源」の詳細な栄養成分表示欄をご覧下さい。
 原料は「アガリクス」のみですが、これだけ沢山の栄養成分を含んでいます。ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンD、そして、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル。これらは全て、天然素材であるアガリクス由来の栄養素であることが分かります。
 
 次に「ヘアドルーチェ」です。こちらには、「KA21 アガリクス」に加え、髪のエイジングケアを考えた様々な天然原料が配合されています。
 髪以外にも、大豆イソフラボンは、植物性エストロゲンとも言われ、乳がんリスクの軽減や、更年期による不調など女性特有のQOL低下要因(生活の質)を改善する効果も期待されます。
また、抹茶が加えられていることで、ビタミンKも含まれています。ビタミンKは、カルシウム・ビタミンDと一緒に働き、骨の強化にもつながるのです。
 
 ちなみに、科学的裏付けについてご紹介すると、深眠源、ヘアドルーチェの両方へ配合されている「KA21アガリクス(通称キング・アガリクス)」には、以下のような報告がされています。

 ・髪の増加などを含めたQOL改善効果(※1)、
 ・自律神経の調節作用・心臓の保護作用・循環器機能改善効果(※2)、
 ・NK細胞の活性化・抗メタボリック症候群効果(※3)、
 ・肝臓の保護作用(※4)、
 ・糖尿抑制効果(※5)など。

 これらは、国内の大学研究によるもので、論文として世界へ発信されています。
 

 少し話題がそれましたが、このように、サプリメントを選ぶときには、裏面の原材料表示欄や栄養成分一覧を確認し、その商品の持つ特徴を読み取るようにしましょう。

 
 冒頭の「サプリメントは飲まない方が良いと書いてあったのですが・・・」という質問へ回答させていただくと、こうなります。
 
 サプリメントは、栄養素を日常の食事からバランス良く摂れていれば必要ありません。しかし、以前のコラム「食事でかかる新型栄養失調」で紹介しましたように、日本人の多くが、レトルト食品やインスタント食品などの加工食品を多用(農林水産庁の推計では、私たちの口に入る農作物の8割が、加工・調理されたものになっているそうです)しているので、「ビタミンやミネラルの欠落」という新型栄養失調状態にあると言われます。

 このような食事情においては、日常の食生活を補う意味で、サプリメントが必要と考えます。
 
 しかし、市場のサプリメントは玉石混淆。
 確かに、飲まない方が良いものも多々あります。そのため、良いサプリメントを見抜く力を持ち、科学的裏付けのあるものを活用するようにしましょう。
 
 また、これは補足ですが、出来るだけ少ない種類のサプリメントで、幅広く活用できるよう吟味することをオススメします。と言いますのも、多種類のサプリメントを大量に飲むことは好ましくないからです。
 
 サプリメントには、添加物が配合されていることが多いため、大量に飲めは、その分添加物も多くなってしまいます。大量の添加物を解毒することで肝蔵に大きな負担がかかったり、配合禁忌(飲み合せが悪いと害になる)の問題もあります。
 
 私自身、サプリメントを開発する立場として、食品添加物についてはもちろん使わないことを理想と考えていますが、それで製品化できるものは極々僅かです。
 原料を均一にし、流動性を良くしないとタブレットや顆粒などに出来ないことが多いのです。 
 私はその場合、少しでも体にプラスになるもの(体に害のないもの)を選んで最少量を使っています。増量剤、着色料、甘味料、香料、保存料などは、使わなくても製品化できるので使いません。
 
 あちらも気になる、こちらも気になるといって、それぞれサプリメントを購入していては、キリがありません。サプリメントは「One for All」、一つの製品で、全てのこと(できるだけ多くの事)をカバーできるようなものを選びましょう。

参考文献:
『サプリメントの正体』東洋経済/田村忠司著
『「食」で医療費は10兆円減らせる』日本政策研究センター/渡邊昌著
『食事でかかる新型栄養失調』三五館/小若順一・国光美佳著

※1) Motoi M, Motoi A, Yamanaka D, Ohno N. Int J Med Mushrooms., 9, 799-817(2015)
※2)Tsubone T, Makimura Y, Hanafusa M,Yamamoto Y, Tsuru Y,Motoi M,
Amano S. J Med Food., 17, 295-301 (2014)
※3)Liu Y, Fukuwatari Y, Okumura K,Takeda K, Ishibashi K, Furukawa M,Ohno N, Mori K, Ming G, Motoi M. e-CAM., 5, 205-219 (2008)
※4)Yamanaka D, Motoi M, Motoi A, Ohno N.BMC complement Altern Med., 14,454- (2014)
※5)Furukawa M,Miura NN,Adachi Y,Motoi M,Ohno N. Int J Med Mushrooms.,8,115-128 (2006)