第29回鹿ノ谷ゼミナールのテーマは
「どうなる夕張支線」
~過去の歩みから未来を見つめる~
でした。
お話の中で印象的だったのは、参加されていた方々が
「DMV」という言葉に対して反応が大きかったこと。
ではDMVとは?
簡単に言いますと、
道路と鉄路の両方を走ることができる車両。
道鉄両用車とでも言いましょうか。
車体はマイクロバス、それに格納式車輪を取り付けたもの。
詳細はコチラをご覧ください↓
JR北海道が中心となり開発していましたが、
安全対策や新幹線開業に資金を投入する必要があり
開発・導入を中断している状況です。
導入の候補として挙がっていたのが
まさしく夕張支線だったのです。
夕張支線で幾度も試験走行が繰り返され
地元の方々の期待も大きかったようです。
という状況を考えると、反応が大きかったこともうなずけます。
DMVの存在は知っていましたが、
主観的観点でもちょっと調べてみました。
すると、私の中で疑問が・・・
導入メリットの裏付けが薄いように思える。
下記の項目に対して、現状の仕組みに当てはめて考えてみたい。
【利便性】
・乗り換え無しで乗り継ぎの利便性向上
・乗り換え改善による公共交通の利用促進
【経済性】
・鉄道車両に比べて車両価格が安価
・車両のメンテナンス等の維持管理費用は、鉄道車両に比べて安価
・運行経費のうち、車両重量が軽くなるため、燃料費コストが低減
(夕張市 DMV導入可能性検討結果報告書より)
まず【利便性】から。
・乗り換え無しで乗り継ぎの利便性向上
→乗り換え無しになることで乗客が増える根拠は?
・乗り換え改善による公共交通の利用促進
→現状でも可能なことでは?
次に【経済性】
・鉄道車両に比べて車両価格が安価
→鉄道車両:2億円、DMV約3,500万円 ◎
→鉄道中古車両の購入・改造との比較検討は?
・車両のメンテナンス等の維持管理費用は、鉄道車両に比べて安価
→日常の維持管理費用は○
→寿命は?
鉄道も自動車も寿命は決められていませんが、一般的に鉄道は20年以上は使われているケースが多いですね。
自動車は10年(または10万キロ)も乗れば買い替えと考えませんか?
という観点からみると、マイクロバスの改造車であるDMVの寿命は鉄道車両に比べ短いのではないかと思います。
※参考:減価償却期間は、「電車が13年」「電気機関車と蒸気機関車が18年」「ディーゼル機関車やディーゼルカーが11年」
・運行経費のうち、車両重量が軽くなるため、燃料費コストが低減
→△
試算によると
キハ40:0.71
DMV:0.13
単位距離当たりの燃料消費量(L/km)
10km走れば、鉄道:7.1L、DMV:1.3L
重量しかり、効率の良さもあり燃費はよさそうですね。
しかし、軽油価格が道路と鉄路では違うのです。
道路:軽油取引税有
鉄路:無
これだけ見てみますと、新製車両価格が安いことしかメリットが見当たらず。
しかし、鉄道は車両だけでなく信号設備、駅等の施設管理、線路維持点検etc...
様々な面にお金がかかります。
DMVにすれば信号ではなくGPSによる管理ができ、コスト低減可能と言っていますが
それならばBRTが良いのではと思ってしまう。
BRTについては詳細を把握していませんが、
東日本大震災で被災した地域では導入されています。
DMVを導入することで一時期は全国の注目を浴びるのでしょうが、
恒久的な路線継続、活性化には?が残ります。
そもそもDMVを開発・導入する「目的」をしっかりと理解しておく必要があります。
いろいろな情報が流れていますが、
私が見る限り
目的:「コスト削減」
であり、利用者増加ではないように感じます。
目的と希望がズレていては
結果「期待外れ」で終わってしまいます。
そんなことがないように、今後何か事を起こすには
「背景」と「目的」がブレないことが最も重要なことだと思います。
DMVについて否定的な書き方をしてしまったかもしれませんが、夕張に求められているのは恒久的な対策だと思いますので、私なりの意見を述べさせていただきました。
「普通の生活が何不自由なくできる町」
当たり前のことが難しい状況なのが、今の夕張だと感じています。