夢のまた夢
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

よくをかく

終焉を迎えるにはまだ早い気がするが、笑いながら冗談交じりに戒名の心配をしていた。

我が母ながら大したもんだと思う。


死ぬ間際になって欲をかいちゃいけない。

家に帰りたいとか、ああしたかった、こうしたかったと口に出したらいけない。

欲をかいちゃいけないのよ。

後に残された人は切なくて切なくて。悔やまれてならなくなるから。

もう思い残すことはないって言っておかーさんは死にたい。


と。

この期に及んで、まだ、残された人のことを心配して考えるのか。

なんだかんだ、できることじゃないよ。

逞しいかーさんを誰よりも誇りに思います。


頑張って生き延びよう。



スイカ

丁度いい季節が短い。

じりじりと痛めつけられる暑さだ。


世の中がガラリと変わったこの十数年。今まで良しとされていたものが真逆の悪となる。

架空が本物に、はて、ホンモノとは?



太巻きを作るのにまず干瓢を戻して、椎茸を煮て、胡桃を割って、寿司桶を洗って、海苔を焼いて、巻き簾と、えっと、なんてことを当たり前にやってたかーさんが、スーパーへ行ってカレイの煮付け一切れを手に、買おうかどうしようか悩んでる姿が悲しい。

老いが病が蝕んでいく痩せた身体で、つまらないことに「ありがとう」「ありがとう」と頭を下げてくるかーさんが本当に悲しい。


悪阻がひどかった時に、かーさんが届けてくれた焼きそばを泣きながら食べました。

私はおばさんになってもかーさんの娘である。かーさんもそのまたかーさんの娘のであったとは夢にも思わなかった。

逞しく生きねばならん。


せっせとカレイを煮る。

スイカを届ける。




初詣

善光寺

大吉

破魔矢

太巻き

筑前煮

ひたしまめ

黒豆

白菜漬

大根甘酢漬け

鮭の粕汁

年賀状


バトミントン

石油ストーブ

エプロン


どうすればいいんだろう。


カルパッチョ

甘栗

南京豆



お礼も云えぬまま

遠くへ旅立たれてしまわれた。

ご無沙汰して随分と時間が経ってしまった。

菩薩様のようにいつもいついつもいつも優しく接してくださった。

今思えば、毎週毎週の木曜日が、どれくらい汚くひねた私を正して慰めてくれただろう。唯一の救いだったと思う。

襖を開けた向こうの松風、温かい眼差し、穏やかな話し方と可愛らしさと。たくさんの愛情をいただきました。

一期一会とはよく言ったもので、本当にいろんなことに感謝せねばならない。

とてもかなしいです。

きちんとお礼も言えずお別れになってしまったこと、寂しい限りです。

ありがとうございました。

ありがとうございました。





たわごと

私の解放日誌をみた。
とてもよかった。

かーさんと出掛けた。
倒れるかと思う暑さのなか沢山歩いた。
いつか振り返るときが来たときのために、しっかり憶えておかなければと、また、いつものように強く思った。

隣のテーブルのカーディガンを羽織った有閑マダムが嫌だった。
これも劣等感だ。

「これも食べていいよ」と寝言を言った。
口を空けて寝ている息子。
幸せであれ。
幸せであれ。


バレンタイン

今日憶えておくこと。
駅までの散歩。
コートの端を掴む手。
アイスクリームを食べたいと怒る。
百貨店の化粧品売場で美容部員に「イケメンですね」と言われ、思わず悲鳴をあげてしまった。
まんざらでない息子。「あんなこと言われたの初めて」と恥ずかしがる。相当嬉しかった模様。もちろん、私はその100倍嬉しかった。が、ウケる。この造形でイケメンはない。
雪に埋もれたブランコ。
短い黄色のスノトレ。
掻き出し漕ぐ無邪気な息子。
重たくなった身体を支えきれず遊具に上れなくなり歌う。
あの頃みたいに動きたいんだ~
パッタイ頬張りたんまりするー
寝ぼけて話す。
「またあとでねっ」
どんな夢をみているのやら。
小さいときの話をしてくれとせがむ。
健やかにあれ。
健やかに。
とにかく健やかに。


デンデンムシ

晴天。
日陰はつるつるに凍った雪が残る。

毎日日記をつけようと思ってすでに出来ず。
フィフティーピープルからハンガン。
おみくじは小吉。
一秒前より良くなるように努力せよ、と。
努めよ、と。
どこで誰が見ていたんだろう。

かーさんの補聴器メンテナンスに付き添い。
三代で。
カタツムリを耳に装着。
脳に指令を。
世の中知らないことばかりだ。

近い将来ママも聴こえなくなるから、その時は付いてきてね。頼むね。

三人でいると今日が今日しかないと、ひしと感じる。今この瞬間はすぐに過去になってしまう。過去になる今を記憶として憶えていられるだろうか。

焦げた達磨やマシュマロの刺さった枝、みかん、泥だらけの長靴、後ろ姿。スルメ。書初め。どんど焼きの風景。

いい人間になれますように。



平穏な暮らし

2年ぶりに甥っ子姪っ子に会う。
にょきにょきと真っ直ぐ伸びた背、声変わりした聞き慣れない声、表情に、こちらがはにかみ、何故だか涙がじわじわ止まらなかった。
涙腺も老いるのだ。

目に見える成長。まだまだ無限に伸び代のある成長の光。
若さって素晴らしい。
素晴らしい。


2022

あけました。
あけました。
ふかふかの雪。積もる雪。

全て隠して寒さに耐えて春を待つ。

今年はマメに生きよう。
過ごさぬよう生き抜こう。
強い意志をもって。
頑張ろう。


コマオ

コロナ禍。
もれなくNetflixのお世話になり、どっぷり韓流に浸かり、ほぼ駄目人間。
応答せよから賢い医師生活、刑務所のルールブック。二十歳からエクストリームジョブ、恋愛体質。ここは深い沼だー

まだ手を繋いでくれる我が子のパーカーが着られるようになってしまった。
なんということだ。

ママー
カレーは金曜日にしてー

なんで

カレーは金曜日があうんだよー



なるほど
いやまったくなるほどではないんだが

ふーん。

ああ、この子が健やかに健やかに飛び立っていかれますように。
暗闇も迷いも後悔も絶望も乗り越えて立ち上がれますように。
がんばれがんばれと思うばかり。
がんばれー
がんばれー




1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>