いつも・・・。 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
いつも・・・


 10月6日、小川哲也氏が社長を努める、小川建設工業の40周年記念式典があった。小川哲也氏は私の道場の北海道支部長である。

 彼の会社は彼の父(現会長)が創立したものである。彼の父親は、彼の母親(現取締役)と二人三脚で会社を切り盛りしてきたという。

 さて、小川哲也氏というと、私のような頼りない男を、いつも師匠(空手の)として立ててくれる。彼はとても真直ぐな人間だ。これまで、彼の性格は、北海道、十勝の自然が育んだものだと思ってきた。同時に、彼の両親の愛情が育んだものだと思ってきた。

 彼の父親は、中卒で現在の地位を築き上げたらしい。また、そのルーツはアイヌだという。そのように、小川哲也氏が昔、自分の父の境涯をさりげなく語ってくれたのを憶えている。私は、彼の話を聞き、彼の父親に敬意を持った。そして、その敬意は、自分が会社や家族の長となり、かつ、人生の辛酸を味わうことで、以前にも増している。

 今回、審査会と重なり、お祝いには参加できなかったが、私にはあるイメージが湧き上がった。小川建設工業の会長と取締役である小川哲也氏のご両親に対する尊敬の念からである。私は、それを一編の詩で書き表した。

 その詩を会長と取締役にお送りしようと思った。ただ、普通の人には奇異に思われると思い、先ずは自分の家族にその詩を読み聞かせてみた。

 家内には、「寒気がする」「詩なんて送らなくて良い」「止めておきなさい」と一渇された。ゆえに私は送るのを止めた(賢明だったと思う)。

 脱線するが、最近、我が娘が学校で詩を書き、それがみんなの前で朗読されたらしい。それを聞いて私は喜び、「どんな詩か教えて」と娘に尋ねると、「お楽しみ」と言って教えてくれない。傍で聞いていた家内が「頼んでもいないのに聞かせる人とは違うよね・・・」とすかさず突っ込む。娘がケラケラと笑った。

 私は家では、漫才のぼけ役よろしく、いつもみんなから突っ込まれる。正直、私は腹が立つが我慢している。ただ、変人の増田章と一緒に生活するには「突っ込み」を入れないと、やってられないだろうな、とも思っている。

 私の家でのイメージは、漫才師の「やすきよ」のやっさん。或は、「あしたひろし&順子」のひろし師匠だ。
 
 逆に言えば、私の家内がきよし師匠や順子師匠のようにきつい突っ込みタイプだということでもある(笑い)。正直、普通の夫婦なら、とっくに離婚するような関係だ(笑い)。

 話を戻せば、私はこれまで、小川氏のみならず、彼のお父様お世話になった。私はいつも、小川哲也氏への感謝のみならず、そのお父様とお母様への感謝と敬意を表したいと思っている。中々、ご恩返しはできないが、今回、私の心の中に涌き上った思いを素直に書き記しておきたい。

 蛇足ながら、私は小学校の頃から、本の好きな少年だった。遠くに山が見える小学校の図書館が学校の中で一番好きな場所だった。また、いつも、寝る前に「良い夢を見られますように」と祈りながら眠りについた。同時に、朝起きたら夢が実現しているのではないかと思っていた。今思えば、軟弱な少年であった。軟弱ゆえか、私が武道を続けているのは、身体的な才能が私にあったからだと思う。 

 更に言えば、幼少の頃、私は人間が有する矛盾や葛藤、また世の中の理不尽や不条理に対し、悶々としていた。
 当然、考えても良い答えを見つけられなかった(私の悪い頭では・・)。ただ、兎に角、「行動しなければ」と考えていた。そのような考えが、仇になったこともあるかもしれない。失敗だらけだったから。
 だが、私の心の奥底で煮えたぎっていたマグマの爆発を抑え、かつ、それを昇華するためには、武道やスポーツが必要であった。また、あらゆるものに答えを出せるような優秀な頭脳が、もし、私に備わっていたら、武道は続けていなかったに違いない(笑い)。




最後に、小川建設工業創立40周年記念にあたり、小川信男会長と小川睦子取締役へ拙詩を送りたい。

「いつも…」  
   
いつも、負けてたまるかと懸命に働いた。
時々、厳しい寒さが私の心を凍らせようとした。
そんな心を暖めたのは、あなたのぬくもりだった。
いつも、そのぬくもりが、私の心に勇気を涌き上らせた。
振り返れば、私の人生は、あなたと共にあった。

いつも、負けてたまるかと懸命に働いた。
時々、人生は私に辛さや厳しさ、そして寂しさを感じさせた。
そんな心を癒してくれたのは、あなたのやさしさだった。
いつも、そのやさしさが私の心に信じる力を与えてくれた。
振り返れば、私の人生は、あなたと共にあった。

いつも、負けてたまるかと懸命に働いた。
時々、人生は私に恵みを与えてくれた。
その恵みは、私に喜びを与えてくれた。
いつも、その喜びが倍になったのは、あなたがいたから。
振り返れば、いつも私の人生は、あなたと共にあった。

今、私の心の中に言葉がある。
その言葉をあなたに伝えたい。

愛をありがとう。


$増田章の『身体で考える』