駅の改札を出て、すぐの横断歩道を渡り、赤レンガが積み上げられたアーチを下る階段を進む。
何段か進むと吹き抜けのテラスを囲うようにファーストフードが立ち並び、真ん中に白い円卓とチェアが用意されている。
出勤前の会社員じっと資料を眺めながらコーヒーをすすっている。
ぼくの前で注文の品が出てくるのをもつ、クリアケースが透けてみえる受験生はひとときの楽しみをつくるために受付のお姉さんの見ながらにやけている。
空は青く、わたあめのようにおいしそうに膨らんだ雲が漂うが太陽の光を浴びている。
いつも、朝の風景だな・・・
そんなことを思いながら、昨日の夜にふと思い浮かんだ、あの顔の歌手の名前を調べるためにレコード屋さんに行くことを決めた。
今日、このあとのスケジュールはゆっくりだと思いながら、氷のシャカシャカとぶつかる音がまだ残るコーラを片手にどの階からせめようかなんて考えている。
でも、その人何を歌っていたんだっけ?
まあ、いいか、とりあえず行ってみようかな。暇だし。
確か、ジャケットに刻まれた繊細なカリグラフィが水彩画で描かれたこれ以上にないくらいの青を際立たせ、バイオリンの旋律がやさしく伝わってくるようなイメージだった気がする。
いつ聞いたっけ?
そういえば、あのときはコーヒーを片手に、チェアの奥深く腰掛け、天井を眺めながら自分に酔っていた。
今は、そんなことできないもんな。
と、つぶやきながら、降り止んだ雨に濡れたアスファルトの匂いをかぎながら、店のドアをくぐって行った。