なんか…不思議な気分だ。


モニターが光り輝いた瞬間に、俺は分解されてパソコンのモニターに吸い込まれた。


つまり、俺は今分解されて粒子のままな訳だ。


粒子になっているのに、意識がある事が不思議だ…。


炎狼牙の声が聞こえてくる。


「主よ、元の姿に戻らないのか?」


どうやって?


「自分の姿をイメージしてみてくれ」


俺は言われたとおり、自分の恰好をイメージしてみた。


すると、粒子が集まり、ここに転送される前の俺の姿に再構築された。


流石はデータの世界。


地球じゃできない事が出来る。


つーか…地球上じゃ粒子になんかなれないしな…。


俺は気にしていなかった周辺の景色を改めて観察してみた。


多数の文字列が右往左往している。


俺が想像する「ケーブル」の中みたいだな…。


青白い光に包まれた空間を、データがあちこちに行き交っている。


今は俺もデータの一部なんだっけ。


データになっている俺だけど、特に身体に違和感は無い。


地球にいる時と殆ど変わらない感覚だな。


…空飛んでるけど。


「狼牙、俺たちは何処に向かっているんだ?」


「契約者の所だ」


契約者? ああ、そういえば…。


契約して地球に意識を飛ばしていたんだっけ。


不思議だよなぁ。


俺の知らない所でこんなにも電子機器が発達しているなんてな。


何? そういう問題じゃないって?


まぁ、そうかもな。


ここは地球とは違う世界。


地球にあるけど地球とは違う世界なんだよな。


今の俺にはそれくらいしか解らん。


炎狼牙は、他より光の強い場所を見ていた。


俺もそっちの方向を見た。


「契約者はどんな人なんだ?」


「研究者だ。プレートと世界の断片の研究をしている」


へぇ…。


「プレート」と「世界の断片」らへんがよく解らなかったが、一応頷いておいた。


俺と炎狼牙が話しているうちに、どうやらその場所に辿り着いたようだ。


炎狼牙が言う。


「従者、炎狼牙。研究所に接続指令を発令」


お堅いねぇ…。


「これは掟だから仕方ない事だ」


掟か…俺は言いたくねぇな。


「主よ、足をつけてくれ」


足?


炎狼牙は既に地面に足をつけている。


要するに、普通に立っているって事さ。


俺も床に足をつけた。


…床無いけど。


でも地面の感触はある。


「接続開始」


今までいたケーブルの中から、段々と景色が変わっていく。



あっという間に世界が変わってしまった…。


「接続完了」


そこは、研究所みたいな所だった。


ビーカーやらフラスコやら試験管やらが見渡す限りに置いてあって、フラスコの中の液体がコポコポと音を立てている。


俺は、さっきまでいたはずの炎狼牙が居ない事に気づいた。


「あれ? 炎狼牙?」


頭に直接、重く響く声が聞こえる。


「我は今の主の力では狼の姿を保っていられない。まずはリティアに会って話を聞いてくれ」


…了解。


一瞬寂しいような気がしたが、頭の中に居てくれるならいいや。


まぁ、その後に炎狼牙の声はしなくなった訳だが。


俺は取り敢えず今居る部屋から出ることにした。


まずはリティアさんって人に会うんだっけ…?


俺が扉の前に立つと、ご丁寧に自動で開いてくれた。


流石はパソコンの中。


何でも最先端ってか?


俺の見解では、レトロな物は一つもなさそうだ。


あくまでも推測だけどね。



何処に行くか解らんな…。


とりあえずは歩いてみよう。


研究所の中を歩いていると、床以外全部が硝子張りになっている通路に出た。


上から下の様子が伺える。


…何やってんだありゃ…?


下では白衣を着た研究者が金属製らしき札と向き合って何かをしている。


理解不能だ。


何の為にやっているのかは解らないが、


理解不能だ。


俺は下の部屋の様子は気にしない方向で、先へと急いだ。



硝子張りの通路の突き当たりに部屋があった。


俺は自動扉が開くのを待ち、中に入った。


その部屋は大掛かりなコンピューターがある部屋だった。


見上げるほど大きなサーバーがある。


巨大なディスプレイには夥しい量の文字が行き交っている。


ディスプレイの下を見ると、そのデータを一人で捌いている人がいた。


「すげぇ」の一言しか出ない。


その人の周囲を囲むようにキーボードがあって、あろうことか手元を見ないでデータを捌いている。


もしかして…あの人がリティアさんか?


俺は話しかけてみることにした。


近くで見るとまたすげぇ。


っていうか女の人じゃん!


気になる事は多々あるが、取り敢えず話しかけてみるとするか。



「すいません…」


俺はかなり恐縮した感じで話し掛けてみた。


リティアさんらしき女性は顔だけを俺の方へ向けた。


手はキーボードを打ちっぱなしだ。


「……」


俺のことを四半秒見た。


そしてまたディスプレイの方に顔を向けた。


「もう少し待ってもらえるかな? 今手が放せないの」


まぁ見て分かりますが。


俺は壁にもたれ掛け、リティアさんの作業の終了を待つことにした。


それにしても…凄いな。


ブラインドタッチしているだけで十分凄いのに…あのスピード、そしてあの量。


俺は暫くの間、リティアさんの事を見ていた。


けれども、キーボードの「カタカタ」という音を聞いている所為か、なんだか眠くなってきた…。


うとうとしていた俺だったが、いつの間にかマジ寝に変わっていたようだ。


その時も夢を見ていたような気がする。


けど知らない間に寝ていたから、リティアさんに頬を軽く叩かれて起きるまで夢か現かは

よくわからなかった。



また、閃と龍だ。


それに…リティアさんもいた気がする。あと、テトラも。


知らない人もいたな。 あれは…誰だろう。



俺が完全に目を覚ますまで、少し時間が掛かったらしい。


リティアさんは俺が起きるまで、ずっと俺の頬を叩き続けていたそうだ。