よう。俺は真崎漸。ごくフツーの高校二年生さ。
俺ん家は「真光宗」っていう宗教の総本山なんだ。
今の家元が死んだら次の家元は俺なんだって。まぁ蹴るけどな。今時宗教なんてどうでもいいっての。そう思うだろ?
今の家元は俺の親父の代わりに家元をやってるんだってさ。
え?
じゃあ親父は何処に行ったのかって?
それは…俺にも分からない。俺がまだ大分小さい時から行方不明なんだ。
だから親父の顔すら覚えていない。
一応警察にも通報したらしいけど…もう時効になっているらしい。
しっかりしてくれよ…ほんとにさ。
そういや、最近変な夢を見るんだよ。
なんか…うーん…うまく説明できねぇや。今更だけど、親父となんか関係あるのかな?
ないか。親父にそんな力ないし。
……。
多分ね……。
「おい閃!一旦退こう!このままじゃやられてしまうぞ!」
「そんな暇ねぇぞ!今退いたらいつテトラを止めるんだよ!」
「しかし…。」
「お前らしくねぇぞ龍!俺らがやらなきゃ誰がやるってんだよ!」
目の前には夥しい量の闇を纏った「テトラ」と呼ばれている人物がいる。
今にも閃と龍という人物に襲い掛かりそうだ。
「そうだな…閃。やるしか…ないか。」
「おうよ!」
閃は武器を構えなおした。
「行くぞテトラ!」
閃と龍が飛び掛ると同時に、テトラが身に纏っていた闇を放った。
「うわあああ! ……あれ?」
俺は自分の叫びと同時に目が覚めた。今のは…夢か。
…やけにリアルな夢だな…。
顔や背中は汗でびっしょりになっている。
俺はタオルケットでその汗を拭った。
そうしていると、誰かが階段を上がってくる音がした。
ドアを二回コンコンとノックすると、
「お兄ちゃん、起きてる?」
と声がした。今の声は…冴か。
ああ、冴っていうのは俺の妹。母さんに似て、しっかりしてる。
「起きてるぞ。」と俺は返事をする。
「ご飯食べ終わったら、倉の掃除をしてってお母さんが言ってたよ。」
「倉?」
「うん。今月の当番、お兄ちゃんでしょ?」
ああ…そうだった。
俺ん家は寺で宗教の総本山。かなり広い。しかも信仰してる人たちがかなりいるわけだ。
一人で寺全体を掃除するのはかなり骨が折れる。
俺ん家女が多いからな…。
つーことで、月替わりで掃除する地区をローテーションしてる。
で、俺は今月境内にある倉の掃除当番な訳だ。
俺は生返事すると、冴は少し膨れた様子で下に降りていった。
俺はボサボサの髪をボリボリと掻いて、軽く伸びた。
「さて…動きますか。」
私服に着替えた俺は、下に降りた。
居間に行くと、テーブルの上に少し冷めた状態の朝飯が配膳されていた。
台所の方を見ると、冴の分の食器を洗っている俺の母さん、真崎玲が立っていた。
「漸、降りてくるのが遅い。」
…ごめんなさい。
「ご飯冷めちゃったわよ?」
…ごめんなさい。
「それ食べ終わったら、倉の掃除してね。頼んだわよ。」
…はーい…。
俺は手早く朝飯を済ませると、早速境内にある倉へと向かった。
あ、言い忘れてた。
「ご馳走様でした!」
振り向き際に見た母さん。…少し、笑顔だったような。
俺は倉の前にいる。エプロンとマスクを着けて。
モップやら何やらは、確か倉の中にあるはずだ。
俺は倉の扉を開けにかかった。錆びている上に、鉄の引き戸だからなかなかスムーズには開いてくれない。
やっとの思いで倉の扉が開いた。その瞬間、多量の埃が舞い上がる。
俺はマスクをしているにも関わらず、顔の前で手を扇ぐ。
…月一とはいえ、ちゃんと掃除してるんだろうな…?
俄かには信じ難いが、そんな事言っても仕方ないので、
俺は入り口付近に立て掛けてあったモップを持ち、掃除を開始した。