今年の3月21日、13期生の卒団の日、新たなキャプテンとなったHが、就任挨拶で「目標はまず市大会に優勝して福岡市の一位を奪回することです。そして先輩たちが行けなかった県大会で優勝し、全国制覇を目指します」と力強く語った。
何度も話しているが、これは子供たちが決めた目標。
だから、ここに至るまで何度も「お前らの目標は口だけか!」と僕に怒鳴られ、泣きながら走って来た。
今年のチームは決して弱くはないが、身体が小さく強いとは言えない。
たくさんの浮き沈みを経て、やっと自ら口にした第一目標まであと二つと迫る準決勝まで辿り着いた。
だが、相手は今大会最大の壁、福岡市最強のチーム。
過去二度の対戦はどちらも16点差の完敗、圧倒された相手だ。
もちろん、組み合わせが決まってからずっと対策を練って来た。
高さ対策のディフェンスとスクリーンアウト、オフェンスのコンビネーションとミドルシュートを強化し、イメージトレーニングを繰り返した。
そんな中、僕とコーチが子供たちに話していた勝利に向けた一つの「イメージ」があった。
それは前半を終えた時点でのスコアのラインだ。
そのラインは、前半相手を10点前後に抑え、逆に10点以上の差をつけて後半を迎えるというもの。
もしそうなった時はディフェンスが効いてプレッシャーが掛かっているはず、後半も凌げるかもしれないと話していたのだ。
過去二試合は前半までは競ったものの後半で突き放された。
相手はベストになると相当強い。
やはり前半がカギ、ディフェンスに勝機を見出そうと考えたのだ。
だが、それはうちにとっても本当に厳しいラインだ。
過去の二試合は当たっても引いても結果は同じだった。
そのラインをクリアするためのディフェンスには最後の最後まで迷った。
前夜、一人風呂に浸かりながらずっとイメージしたがどうしても決められない。
夜な夜なコーチに電話して相談しようかと考えたが、朝起きた時の直感で決めることにした。
決戦の日の朝、目覚めた時、その迷いが消えていた。
これしかないと決断できたのだ。
そして、その決断を胸に会場へと向かった。
会場ではコーチが前の試合の審判で、ゆっくり話せない。
彼にその決断を伝えたのは試合開始5分前、審判控室からコートに戻った直後のことだ。
それを聞くと、彼の顔が一瞬曇った。
なぜなら最もリスクが大きい策だからだ。
理論派の彼にとって、不確実な策はあまり好みではないはずだ。
でも、僕がどうしてもそれで行くと伝えると「後悔はしませんか?」と一言。
「しない!それに賭ける」
僕がそう言うと、うんと頷いた。
試合開始直前、子供たちを集合させ僕はこう話した。
「パワーでは相手にならない。だが、お前たちの強みはスピードとスタミナだ。うちは日本一走って来たチームだ。そうだろ?」
「だから相手が疲れるまで全力で走り合って来い!ボールをゴール下に入れさせるな!」
「はい!!!」
大きな返事と共に1Qの5人がコートに入った。
そこから信じられない展開が始まる。
つづく