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プレイボール



小学生の頃。



親父を向こう側に座らせ僕はプロ野球のピッチャー気分。



好きだったライオンズの青キャップを被り、左手には誕生日に買ってもらった揃いの青グローブ。



雰囲気を察してか親父が球種サインを出す真似事を。


僕はそれをジッと見つめては首を横に振る。



二度、三度。



ストレートしか投げられないのに。




ようやく互いの意思が一致したところで振りかぶる。


ヘロヘロの球は親父の手には小すぎるグローブへ吸い込まれた。



『ボール!』


『今の入ったよ!』


『ボール!』



ホームベースはマンホール。


マウンドはアスファルト。



それでも僕にはそんな近所の路地が最高のスタジアムだった。





もう20年も前の話。




実家の物置で静かに眠っていたグローブが思い出させてくれた遠い遠い昔の話。








記憶の欠片を一つずつ紡いでいくと次第に輪郭がはっきりしてくる。


その度にきっとまた甦る。




誰のことだって同じ。


感傷に浸りたい訳じゃないんだけど、ただ心はオートマティックに反応してしまうんだろう。




忘れたくないし、忘れられないから、宝箱に鍵をかけてしまっておこう。




そんな風にしてまた明日がやってくる。