その声が聞こえた瞬間 カラスはフッ…と意識を失った。

目が覚めるとそこは温かいベットの中だった。そして目が覚めた瞬間頭痛が起こった。

 

(いでッ!…ここは…どこだ?)

 

そう思いつつ辺りを見回すと そこには手作りであろう木製のテーブルと椅子、長年使っているであろうタンスや棚、奥には一部レンガ造りの床があり、その中央には暖炉が置いてあった。

 

辺りの物を見てカラスは瞬時にここが人間の住処だという事が分かり飛び起きた。

その瞬間  「おやぁ、やっと気が付いたのけぇ?」と 声が聞こえた。

すぐさま声の聞こえた方向を見ると そこには 見た目25~30歳ほどの丸いメガネをかけたショートヘア―女性が立っていた。

しかしよく見てみると、髪の毛は全て鳥の羽で 頭の左右には獣の耳のような羽が生えていた。

 

人間が集団で暮らす都会で生活してきたカラスにとって 人語に近い女性の放っている言葉を理解することは容易だったが、今までに見たことのない女性の姿を見たカラスは理解が追い付かず、無意識に「お前はニンゲンか? 鳥か?」と女性に尋ねた。

すると女性は「あんれぇ?おんなじ姿ばしてっから てっきり同じ種族と思ったんが…」と目を細め首をかしげながら相手を見た。その後「あたしは ズク。種族はハーピーゆうんよぉ、簡単に言うと君の言ってる人間と鳥のハーフと考えれば納得ねぇ」と微笑みながら話した。

 

(…鳥と人間のハーフ?そんな生き物がこの世にいるはずがない)とカラスは思った。

それと同時にカラスは ズクの会話の中に何か違和感を感じた。

「あれ?お前…俺の言葉がわかるのか?」カラスはズクを警戒しつつ不思議そうに問いかけた。

「何言ってんだぇ?言葉わかるから話しとるべ おかしなこと言う子ねぇ」とズクはクスクス笑いながら台所へ向かった。

今まで人間には通じなかった鳥語がズクには通じている。そして頭に鳥にしかない羽が生えている。この事実を目の当たりにしたカラスは彼女の言っていることは嘘偽りのない事実だという事を理解した。(それにしても まだ何か違和感が残る…なんだろう…)そう思ったカラスは再びズクと話した会話を振り返った。

 

そしてあることに気づき サァッ…と冷や汗を流し、顔を真っ青にしながらズクに恐る恐る

「…ズク…さん?あの…同じ姿してるって…まさか俺今ズクさんのような姿に?嘘でしょ?」と問いかけた。

するとズクは台所から「嘘なんかいっとらんよぉ?そこのタンスの隣に姿鏡あるからみてみぃ」と大声で話した。

 

(まさか、そんな…そんなことあるはずが…)そうカラスは思いつつ古びたタンスの隣にある姿鏡を見るとそこには 以前カラスであった姿はなく 人のような姿の自分が目の前にいた。

髪の毛に見える部分は全ての羽で、目つきは鋭く、 以前翼が生えていた部分には腕が生えていた。それを見た瞬間カラスは「うぁあああああッ!!」と断末魔を上げた。

 

それを聞いたズクは「なになに どうしたん!!毒蛇でも出たん?」と慌てて台所からお玉を片手にエプロン姿ですっ飛んできた。

すると混乱したカラスはズクの両肩を掴み、「俺の体がッ!!翼はどこにッ!!」とズクに向かって必死な形相で問いかけた。

 

するとズクはきょとんとした表情で「なにいっとるん?君倒れてた時からその姿だったよぉ?翼ならほれ、背中についとるし」と言い背中に生えているカラスの右翼を指でつついた。

カラスが姿鏡を通し自分の背中を見ると そこにはコンパクトにまとまった大きく黒い翼が生えていた。左翼は包帯を巻かれており治療されていた。ひとまず翼があることに安心したのかカラスは姿鏡の前で腰を抜かしてしまった。

 

「ビックリしたわぁ。いきなり叫び出すから毒蛇でも出たんかと思ったよぉ」とズクがホッと一息つくと再び台所へと戻っていった。

カラスは我に戻ったのかその場で正座し、「治療までしてくれたんだな…それなのに俺取り乱してしまって…申し訳ない。」と顔を伏せながらズクに謝った。

 

そうしている間に台所から食欲をそそる匂いが漂ってきた。