作りかけの記事から | 団塊Jrのプロレスファン列伝

作りかけの記事から

『さて、こんな世の中というのが拍車をかけてか・・・昨今の100円ショップには「この値段で!?」というくらい性能の良いものやアイデア豊富な生活品や便利品が多く置かれています。他にもアニメなどのキャラクターの店限定商品や「diy(do-it-yourself)」という言葉で浸透した日曜大工の用品や、コロナ禍で急増したアウトドアの用品。果ては釣具まで、実に様々な品物が取り揃えてあることから幅広い年齢層が訪れるといいます。

 

そんな某100円ショップでパートをしているウチの嫁。嫁の店も然りで、多種多様な商品を扱うことから店には若い親子連れから年配の方まで多くのお客さんが見られるといいます。そしてその個性も様々・・・なかなかの人間模様があるようなのです。

 

"しゃべるブローニングM2重機関銃"の異名をとる速射砲トークにして、その声域はステカセキングの地獄のシンフォニー、100万ホーンをも上回るといわれるウチの嫁。クレイマー客撃退など朝飯前。それこそ店内で普通に話していても、どこにいても店中に声が伝わってしまうことから

 

「私語は慎むように」

 

と誤解されることもしばしばなんだそうです。

 

こんな調子ゆえ、店舗でのお客さんからの問い合わせはもちろんレジでの支払い時にもお客さんに対し何か一言MCを入れずにはいられないようで・・・結果、いろんなお客さんから覚えられてしまい

 

「おばちゃん、来たよ~」

 

という小さなお子さんから

 

「よぉ~。ねぇちゃんの声を聞きに来たぞ」

 

という年配者まで、通常の100円ショップではあり得ない"常連客"が存在するに至っているほどなんだそうです。

 

さて、そんなある日のこと。いつものようにレジをしていると、ある女性が並んでいることに気づきました。


その女性は同じ世代か、ちょっと若いくらいか・・・見た目は真面目そうでおとなしめな感じの人だったといいます。しかしある一点だけ、他の客とはちがう点がその女性にはあったそうなのです。


その"ある点"に気づくと、嫁はどうしてもそれを聞かずにはいられなくなってしまったそうなんです。

 

それはその女性客が持っていたトートバッグでした。手に持っておりカウンターに隠れてもいたのですべては見えませんでしたが、それは白地に飯伏と誰かがプリントされていたものだったそうです。

 

「(あらプロレスのだわ。でもこんなの、しまむらに売ってたかしら?)」

 

と、トートバッグにロックオンしながら、やがてレジはその女性の番になりました。嫁はレジを通すと、おつりを渡すタイミングで

 

「プロレス、お好きなんですか?」

 

と、その女性に話しかけました。

 

それがプロレスという点以外では、嫁にしてみればいつものことでした。しかしその言葉に女性の表情は、まるで「ねるねるねるね」を練り上げて鮮やかに色が変わっていったかのように、みるみるうちににこやかな表情になっていきました。そしてその笑みがマックスを迎えたかと思うと

 

「お好きなんですかーぁぁぁ!!」

 

と、トートバッグをバッと上げ、見せたそうなんです。

 

「(ななっ!?)」

 

まだおつりを持った状態で目前にあらわれたトートバッグ。両手を塞がれた形でのそれは、まさに飯伏の必殺「カミゴエ」のごとくカウンターで嫁に炸裂する形となったのです。

 

この予想外の反応にはさすがの嫁も一瞬たじろいでしまったそうですが、おかげでそれが棚橋と飯伏がプリントされているトートバッグだったということがわかりました。

 

聞けばこの女性は新日本プロレス大好きで飯伏の大ファンなんだそうな。テレビはもちろん、観戦もよく行くといい、それから、それから・・・

 

女性はもっと話をしていたかった様子でしたが、しかしこの日は混んでいたためレジ前を牛歩戦術こそすれど、押される客波に泣く泣く退散。「ではまた~」ということになり、この日はお店をあとにしたそうです。

 

二世「うむぅ~思わぬところにプロレスファンが潜んでいたもんだな。しかしそのカミゴエさん(この女性のこと)が持ってた棚橋と飯伏のトートバッグだけど、そんなの販売されてたことあるのかな?」

 

三世「わからないなぁ。自分で作ったのかな?」

 

嫁「棚橋が赤で飯伏が青のプリントだったのよ」

 

調べてみると、どうやら過去に新日本がASOKOというメーカーとコラボして出していたものということが判明しました。


これかぁ・・・(Instagram 「ASOKO ZAKKA STOREより)


二世「メイド・イン・しまむらじゃないのを普段から使っているのと、声かけたときのその反応だよなぁ。こりゃ、かなりのプロレス好きだろうなぁ」

 

嫁「もっと話したかった感じだし、相当プロレス好きだと思うよ。まぁでも、コスチュームや会場を見ただけでいつどの試合までわかるウチのノボセらほどじゃないだろうけどね」

 

二世、三世「の、ノボセ・・・」

 

とにかく・・・瓢箪から駒、灰吹きから蛇とは言ったものですが、やはり現代の新日本。そのファン層、人口密度はあなどれないなと思えた日となりました。

 

それから何日か過ぎた頃。いつものように嫁がレジに立っていると、見覚えのある女性が並んでいることに気づきました。

 

「(あ、こないだ来た飯伏が好きな人)」

 

やがてレジへと並びますが、前回とちがい今は店はちょうど空いている時間帯。カミゴエさんのあとにレジに並ぶ他のお客さんはいません。今日は少し話せそうと会計のあと

 

「どうも~こないだは~」

 

と嫁がカミゴエさんを見た瞬間、上着の隙間から覗くそのTシャツに目がいかないわけがありませんでした。

 

「あらこれ!!飯伏のTシャツですか?いいですね~」

 

「そうなんですよ~。これ○○のとき○○で買った○○で、それで~」

 

Tシャツというワードをキッカケに話が弾みだします。聞けばカミゴエさん、元々プロレスにはまったく興味がない人間だったのですが、息子さんが新日ファンだったため一緒に見ているうち自分もハマってしまい、最初の頃は一緒に行動などをしていたのですが現在では親子それぞれ別々にファンクラブに入っては各々行動するほど夢中になってしまったんだというのです。

 

当然、県内に新日本が来るときは欠かさず観戦に行っているんだそうです。然様、我が家のプロレス観戦日と当然被っていたことも多々あったことがわかりました。つまり、これまでこの女性と同じ会場にいたことが結構な頻度であった、ということです。

 

そんな中でも驚いたのは2018年11月28日に行われた「WORLD TAG LEAGUE 2018」でした。

 

この日、もちろんボクと三世は出陣していました。そう、忘れもしません三世の衝撃の日。あの運命が扉をノックする音から始まるというベートーベン交響曲第5番、シンフォニーNo.5が水戸市民体育館に鳴り弾いたオカダとの初対面の日です(73億人の中のふたり)

 

あの日、カミゴエさんが観戦に来ていたのはもちろん、祖母がオカダファンということで来場できない祖母のためオカダのサイン会に並んでいたというのです。う~ん、あの列に早くから並んでいたのか。何か因果めいたものを感じるなぁ・・・

 

こうして話が終わるとカミゴエさんはうれしそうに店を出、駐車場へと戻っていきました。

 

その後ろ姿を眺めながら、世の中、好きな人はいるんだな~と嫁が思い返していると、どうしたのでしょうか?なんと先ほど買い物を終えたはずのカミゴエさんが荷物を車に置きUターン。小走りにこちらに向かってきたかと思うと、また店内に入ってきて嫁のところに来たというのです。

 

何か買い忘れたのかしら・・・そう思っていた嫁の前に再び現れたカミゴエさん。一体どうしたのかと思うと

 

「そうそう、背中は、こうなっているんですよ~!!」

 

と後ろを向き、上着を肩から下ろし飯伏Tシャツのバックプリントを見せたのです。


まさに毒を喰わらば皿まで・・・この徹底したプロレスファンぶりのなんと素晴らしい!!そして、かわいらしい・・・!!

 

嫁「というわけなのよ。すごく楽しそうだったよ。あたしも楽しかったし」

 

三世「多分その人、Tシャツわざわざ着てきたんだよ」

 

嫁「え~?そんなに?あたしのシフトも知らないんだよ~?」

 

二世「いや、あり得るねぇ。気持ちの共有。同じプロレスファンがいたからうれしかったんだよ。それで見せたくて着てきたんだよ。わかるなぁ~」

 

その後もカミゴエさんは店に来て時間を見ては家庭のことやプロレスのことを嫁と話しているといいます。今はコロナ禍ですが、世の中が戻れば連絡取り合って、一緒に観戦に・・・なんて日が来るのも、そう遠くないかもしれません。


どこの誰かもわからない。でもフタを開けたら、まるで昔から知っているかのように解け合える・・・やっぱりプロレスって、いいですなぁ~』

 

というお話を昨年から作っていて、今年中には出そうかと思っていた5月初め頃。飯伏のTwitterで、あの騒動がありました。


事態は現在も続いており、もはや当人らが出るところに出、法の下で話し合いするしかないのではないか?そういう状況まできていると思われます。


何がどうなっているのか?双方のやり方はどうだったのか?残念ながらボクらにはわかりません。なのでこの件に関して何かを言うつもりはありません。

 

ただ、プロレスが日本で始まって約70年。これまでに日本のプロレスは、それはそれはいろいろなことがありました。もうこれでプロレスは終わり。このまま消滅して、語ることすらできなくなってしまうんだろうな・・・そんなことを思わざるを得ない尋常でない出来事は、たくさん、たっくさんありました。

 

でもプロレスは今でも続いています。終わりそうになっても、消滅しそうになっても。また復活し、逆に繁栄すらしてきました。


そう、それは創造の神ブラフマー、維持の神ビシュヌ、破壊の神シヴァ。この神々によりこの世のすべてのことは創られ、維持され、破壊され、そしてまた創られ維持され破壊されていくという、この繰り返しなんだというヒンズー教の三大神の教えのように、プロレスもまた創造、維持、破壊、そしてまた創造を繰り返してきたんです。なので今後、この騒動が大きく発展していったとしてもプロレスがこの世からなくなるということはないと思います。

 

しかし・・・かつてビューティー・ペアが解散したときにはハチマキ姿のファンが消え、テリー・ファンクが引退したときにはボンボンを持った女の子たちが消えました。初代タイガーマスクが突然いなくなるとちびっ子ファンが姿を消し、クラッシュギャルズがリングから去ったときは若い女の子のファンがたくさん姿を消しました。そして、引退というわけではありませんでしたが中邑やKUSHIDAが新日本マットから移籍したときですら、同じように姿を消していってしまったファンは、それは多くいました。

 

プロレスは続いていく。でも、変わっていく。それはわかってはいるのですが、何かがキッカケとなりファンが離れていってしまうことは、やはり寂しい気がします。


カミゴエさんは今回の出来事に何を見、何を思っているんだろう。最近は姿を見せなくなったというカミゴエさん。今はどういう気持ちなんだろう。楽しく新日本を見れているのかな?それとも・・・


それを思うと、なんともやるせない気持ちに・・・なってしまうのです。